第125回 リスキリングとリカレント教育との違いから「当事者性」を考える

「学び直し」が企業においてトレンドになっている傾向が見られます。今回は「リスキリング」と「リカレント教育」との違いを考え、本当の意味での「新しい資本主義を担う“人”の在り方」を考えてみたいと思います。

リスキリングとリカレント教育との違いから「当事者性」を考える

皆さん、こんにちは!

ようやく国内はコロナ一色だった状況ではなくなってきましたが、ロシアのウクライナ侵攻・上海ロックダウンなどのもろもろの動きをはじめ、スウェーデン/フィンランドのNATO加盟申請、バイデン大統領来日によるIPEF・QUADといった新たな枠組みへの展開を含め本当にめまぐるしく、「北京でチョウが羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」が、現実に形になっている感じですね……。

そんな中、岸田政権で掲げている「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)」が5月末に発表されました。

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)~人・技術・スタートアップへの投資の実現~(内閣官房・PDF)

その実効性に対しては、疑問や批判も多いようですが、

これまで、ともすれば安価な労働力供給に依存してコストカットで生産性を高めてきた我が国も、労働力不足時代に入り、人への投資を通じた付加価値の向上が極めて重要となっている。

  • * 新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)~人・技術・スタートアップへの投資の実現~(内閣官房・PDF)p.4 「1.人への投資と分配」から抜粋

という論点から「学び直し」の重要性がうたわれている点は、企業においても大きなトレンドになってきているように思います。

今回は、その意味で「リスキリング」と「リカレント教育」との違いを考えつつ、本当の意味での「新しい資本主義を担う“人”の在り方」を考えてみたいと思います。

「人的資本」の考え方に対するトレンド

アメリカでは既に上場企業に義務化されている「人的資本に関する情報開示」として、世界初の国際規格「ISO30414」が定められています。

国内でも、下記のように経済産業省主導で「人的資本経営」に関する調査・研究が進められています。

人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~(経済産業省サイト)

そんな動きを受ける形で、国内でもこの3月には、リンクアンドモチベーションがアジア初の「ISO30414」認証取得のニュースもありました。

日本・アジア初!人的資本に関する情報開示のガイドラインである「ISO30414」の認証を取得!(リンクアンドモチベーション社サイト)

こうした動きの表れとして、「全社を挙げた“リスキリング教育”」への取り組みが数多く紹介をされています。

リスキリング国内導入事例22件を紹介!(ブラッシュアップ学びサイト)

こうした「リスキリング教育」は、VUCA時代の環境激変、DXに代表されるデジタル人材育成などを含め、企業における「人的資本」を強化していく意味で、大きなトレンドとして定着していくものだと思います。

「リスキリング」と「リカレント教育」との違い

このように「リスキリング」という表現は、随分と一般化し定着してきているように思います。と同時に、もう一つ「リカレント教育」という表現があります。いずれも「社会人の学び直し」という視点では共通している側面がありますが、この二つの違いは何で、その本質はどこにあるのでしょうか。

「リスキリング」は「企業」が今後、必要となる仕事上の「新しいスキル・技術」を「従業員に対して」身につけてもらうという意味合いが強く、企業が社員に対して施すニュアンスが含まれています。

一方、「リカレント教育」は、広義には社会人が人生の途上でさまざまな形で学ぶことを意味し、必ずしも離職が前提になるわけではありませんが、大学に入り直すなど、「働く→学ぶ→働く→学ぶ→働く……」といったサイクルを回し続けるように「自らの意志」でスキルを身につけることとされています。

新しいスキルを身につけるという意味では同じですが、「リスキリング」は、企業側の意思で、「リカレント教育」は自らの意思でという点が決定的に異なるように思います。

つまり、「自分の人生を自ら切り拓く」という意味での「当事者性」という視点では「リカレント教育」の方が「当事者性が高い」といえるかもしれません。

意識変革と行動変革

少し切り口が変わりますが、私たちビジネスパーソンにとって、大切なことはいうまでもなく「知識を高める」ことではありません。「結果を出す」ことにあります。

そして、「結果を出す」には行動・実践があってこそであり、行動・実践が変わらない限り、今までの結果が変わることはあり得ません。

アインシュタインの名言とされている「同じ行動を繰り返しておきながら、違う結果を期待すること。これをすなわち、狂気と言う」の指摘のとおりです。

ところが、現実には多くの方が、今までのやり方に対する限界や行き詰まりを感じ、「『何とかせな……何とかしたい……』という意識は変わってきているんですが」という話で留まってしまい、行動レベル、つまり実践にはつながらない話がいかに多いことか……。

つまり、極端にいえば、どれだけ「意識変革」が進んでも「結果」は何一つ変わらず、「行動変革」に伴った「結果」を変えていく必要があるということになります。

そういう意味で「行動・実践の変革」を促す原動力は、「こうなりたい・こうしたい・これを実現したい」ということに対する「当事者性」が肝になってくるといえるように思います。

もちろん「リスキリング」という企業側の支援・思いが不要だと言うつもりは全くありませんが、同時に、またはそれ以上に、従業員側の姿勢に対して、「与えてもらって喜んでいる」状況ではなく、自らが学び直す必要を感じ、主体的にアクションする「リカレント教育」に向けた当事者性の有無を、企業としても常に問いかける必要があるのかもしれません。

今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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