第16回 人はロボットの進化に負けてしまわないか

皆さん、こんにちは!
三寒四温と言うものの、今年の3月は寒暖の差が半端ではありませんでしたし、花粉だけではなく「PM2.5」や「風じん」といった耳慣れない事象に悩まされてしまいますが、いかがお過ごしでしょうか。

ここ2回は「共有~共感」といったテーマを題材にさせていただきましたが、今回は、その前提として「経営者として、人間を信用しているのか?」という価値観に関して、組織風土への影響を考えてみたいと思います。

■ロボット革命の世紀
皆さんは、先日3月17日のNHK特集「ロボット革命 ~人間を超えられるか~」をご覧になりましたでしょうか。

私は、この番組を見て、色々なことを感じましたが、ご覧になっていない方のために少しご紹介をさせていただきます。

この番組で登場した「ロボット」は、いわゆる「産業ロボット」の域を超えた「ヒューマノイド」と呼ばれる「人型ロボット」です。

人間に細かく操作されなくても自分の判断で行動して、階段を上ったり道具を扱ったりするわけですが、皮肉にも、ちょうど2年前に起こった福島原発事故で「人間のように判断し、さまざまな作業ができるヒューマノイドでなければ、人間に代わって活動するのは難しい」事が明らかになってしまい、一気に開発が進んだようです。

個人的に衝撃的だったのは、ある民間企業で、朝のラジオ体操を従業員の方々と一緒にしている姿でした。

それはさておき、こうしたロボットには「目」があり、人がする作業のスピードや内容に呼応して動くというレベルのもので、これまで、熟練従業員が行っていた作業をヒューマノイドロボットに置き換え、人はより付加価値の高い、人間でしかできない仕事に配置転換したというシーンが流れました。

その時に、私が感じたことは2つありました。
急激な進化を遂げるヒューマノイドが、既に人間社会に進出しようとしている。
その時、私たちの社会はどう変わるのだろうか?という思いです。

そして、もう一つは、このヒューマノイドの進出でますます「人間でしかできない仕事」が鮮明になっていくことはよいと思うのですが、私たち人間自身は、このヒューマノイドの進化のスピードに負けない進化を遂げられるのだろうか?という不安でした。

■人間性尊重の経営
経営品質の高さや、従業員満足度の高い会社として有名な会社の一つに「ネッツトヨタ南国」がありますが、この会社は「人間性尊重の経営」を標榜しておられます。

志採用(ネッツトヨタ南国株式会社Webサイト)

それを表すキーワードとして

  1. 自ら考える
  2. 自ら発言する
  3. 自ら行動する
  4. 自ら反省する

ことを重要視していられるのですが、今は相談役になっておられる横田英毅氏は「この4つは、人間固有の能力であり、これらを大切にすることが“人間性”を育んでいく。
逆に言えば、この4つを軽んじてしまうと“人間性”が損なわれ、どんどんロボットのようになってしまう」という趣旨の話をされています。

ヒューマノイドロボットが、どんどん人間がやってきたことを代替できるように進化し、状況に呼応した判断さえもできるようになっている現代、肝心の人間の方は、あるいは従業員は、上記四つの能力を磨き、人間性を磨く機会を数多く得ることができているのでしょうか。
逆に言えば、経営者の立場からは、そのような機会を与えているのでしょうか・・・。

■経営者としての人間観
昔から「企業は、経営者の器以上にならない」と言われてきました。
このことは、企業規模の大小というよりも、その企業の質(≒経営品質)を指しているように思います。つまり、経営者の方の「人間観」が、その組織の「質」を左右してしまう要素になるということだと思います。

このことは、経営者の方の人間に対する見方、いわゆる「人間観」が、そのままその会社の企業風土や組織風土を形成していってしまうと言うことを意味しています。

前述の「ロボット革命」をご覧になって「ヒューマノイドロボットの方が言われたとおりにミスなく仕事するし、文句も言わない。自社の社員よりも優秀じゃないか?」なんて思われる経営者の方はいらっしゃらないと願いたいところですが、「ロボットの方が信じられる」という発想は、その方の「人間観」を表してしまっているのかも知れませんね・・・。

「うちの社員はまだまだそんなレベルにはない」という表現をされる方ともお目に掛かることがありますが、「今のレベル」に着眼するのではなく「人間としての可能性」に着眼することが、「経営者として従業員を信じられるか」という意味での「人間観」に通じるのかも知れません。

そう言えば、先日伺ったビルメンテナンス会社さんは「従業員20名弱・現場スタッフであるパート120名」という所帯でしたが、現場スタッフのいわゆる「パートのおばさん」たちが現場の声として「新サービス開発」を担当しておられ、実際に開発したサービスを展開しておられました。
まさに「パート社員」であっても「自ら考える・自ら発言する・自ら行動する・自ら反省する」事で、人間が人間としての能力を研ぎ澄ませていく成長・進化のあり方を目の当たりにさせていただいた印象でした。

つまり、ヒューマノイドロボットに負けない進化を求めるのであれば、既に「個を活かす組織」ではなく「個が活きる組織」と主語を「個人」に当てないといけない時代に来ているのではないでしょうか。

皆さんの会社でも、ネッツトヨタ南国さんの4項目めに当たる「自ら反省する」を実践出来ないといけないのかも知れませんね。

間もなく4月になります。新入社員を迎える皆さんも多いのではないでしょうか。
このような機会に、少し振り返って(反省して)、本当にどんな組織にしたいのか?を考え実践してみてはいかがでしょうか。

引き続き、よろしくお願いいたします。

次回は4月17日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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