第80回 正直な経営

世間を騒がせているスポーツ界における旧態依然のドロドロした話が、ここへきて一気に露出してきたのはなぜなのでしょうか……。今回は、こうした事象から、今後の「組織運営・経営における正直さ」を考えてみたいと思います。

正直な経営

最近、この冒頭のコメントは天災・気候の類が多くなっている気がしますが、この夏の猛暑には本当に閉口してしまいます。

また、スポーツ界における旧態依然のドロドロした話が、こんなに続くのも初めてのことのように思います。

この古い体質が、ここへきて一気に露出してきたのはなぜなのでしょうか……。これも、時代の成せる業であり、ある意味、必然なのかもしれません。今回は、こうした事象から、今後の「組織運営・経営における正直さ」を考えてみたいと思います。

隠せない時代背景

世間を騒がせている日本大学アメリカンフットボール部の問題をはじめ日本レスリング協会のパワハラ、日本ボクシング連盟の問題は、今、なぜ世に明るみになっているのでしょうか。

これまでにも、事の大小を問わず、多かれ少なかれ、あらゆる業界や組織に似たような状況は、おそらくあった事象なのではないかと思います。

それが、こうして立て続けに明るみに出て、その腐敗した状況が明らかになってきたのは、やはりSNSに代表される「情報のオープン化」が背景にあると思います。

今までは、パワハラに対しても、泣き寝入りするしかなかった立場にいた方であっても、簡単にその実態の是非を世の中に問うことができる時代です。

そして、今までは、そんな動きを察知すれば、もみ消したり、闇に葬ったりすることもできたのかもしれませんが、それもできないほどのスピードで世の中に拡散していく時代です。

これは「他山の石」なのか

今、世の中で騒がれているのは、スポーツ界の不祥事が多いですが、これは、私たちには関係のない「他山の石」なのでしょうか。

もちろん、そんなはずはありません。
確かに、今までは大きな話題になるのは、著名人や大企業などの影響力のある組織が中心だったかもしれません。

でも、今、話題になっているのは、一大学の運動部など、これまで問題になってこなかった業界や組織です。

つまり、ほんの一握りの個人や小さな組織の問題が、最終的にはその組織全体や業界全体の腐敗した組織風土の表れとして、問題の本質に迫られることになってきています。

私たちがいる「企業経営」においても、構造としては全く同じであり、一社員の告発やSNSでの発信が、アッという間に世の中に知れ渡ることになり、逃げ隠れできない状況になってしまうことは容易に想像できます。

今後の経営の在り方

こう考えてみると、今後の経営の在り方としては、市場やお客さんに対してはもちろん、社内に対しても、正直に誠実に向き合っていく以外ありません。

「まぁ、このくらいのことなら……」とか「それは会社にとって不利益だから、少しくらいは目をつぶって……」的なことも、一切通じない時代になってきていると思います。

仮に、社内では立場の違いを利用して強要できたとしても(これはこれでパワハラですが)経営者が正直な、誠実な態度を取らなければ、社員も同様の思考性を持ち、日々、社会にそれをまき散らすことになりますので、顧客からその指摘を受ければ、終わりです。

また、社内に一人でも「真実を社会に問う」という行動を取る社員がいれば、同じ結果になることは火を見るよりも明らかです。

つまり「企業経営」そのものも、日々、丸裸の状態になってきているといえるのではないでしょうか。

だとすると、残されるのは「正直な経営」しかありません。

ドラッカーが言った「真摯さ」がここへきて、急激にその大切さが切実なものになっているのではないでしょうか。

前回も書かせていただいた「個人の時代」だからこそ、「正直な経営」でなければいけないのかもしれません。

経営者の側が、どんなに正当化する理屈を並べても、評価・判断するのは社会であり、個人です。

現代のような高度情報化社会では、もはや嘘や偽りは一切通用しない時代なのではないでしょうか。会社の中に、嘘や偽りはありませんか……。

真摯に、正直に向き合っていくしかありませんね。

今後ともよろしくお願いいたします。

次回は9月19日(水)更新予定です

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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