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第36回 大切なことを大切にする
皆さん、こんにちは!
秋を通り越し、そろそろ寒さも本格化してきましたが、お変わりありませんでしょうか。
アベノミクス効果が思ったほどではなく、景況感も必ずしも順調ではないということで、12月に解散総選挙が行われることになりました。バタバタした年末になりそうな気配ですが、私自身もバタバタと1年が過ぎ去ってしまいそうな状況が続いています。
ということで、こんな時にこそ原点に戻って「大切なことを大切にする」ということを踏まえて考えてみたいと思います。
■ 高倉健さんの美学
先日、俳優の高倉健さんが83歳でこの世を去りました。メディアでは、この大スターの生涯を取り上げていますが、あるテレビ番組で高倉健さんがインタビューに答えるシーンを目にしました。
それは「高倉健さんにとっての美学・ポリシーってなんですか?」という問いでした。
健さんは少し考えた後で「自分を貫くってことですかね・・・」と答えていました。そして、「当たり前のことのようですが、意外と難しいことじゃないかと思うんですよね・・・」と。
■ 大切なことは、大切なことを大切にすること
「7つの習慣」の著者・スティーブン・R・コヴィーの言葉として有名なものに「大切なことは、大切なことを大切にすることである」という言葉があります。
私は、色々な機会でこの言葉を引用させていただいています。
その際には、この言葉の前に「私の人生において」とか「私の会社において」といった枕詞と同時に「一番」という言葉を付け加え、考えてもらっています。
「私の人生において一番大切なことは、私の人生において一番大切なことを、一番大切にすることである」となります。
「自分の人生において、あなたが一番大切にしていることは何ですか?」
という問いに対して
「自分は家族が一番大切だ」「自分にとっては健康が一番大切だ」と色々な回答があるわけです。
では、「この1週間、家族を大切にするために何をしたのか?」「健康を大切にするために何をしましたか?」と聞かれると、意外と何もできていなかったりするのが、世の常ではないでしょうか。
確かに「自分を貫く」というのは、簡単ではなさそうですね。
■ そもそも、「一番大切なこと」は何か?
この言葉の意味することとして、もう一つ重要な視点があります。
それは、そもそも「私の人生において、一番大切なことを、自分が分かっているのか?」という問いです。
「健康・家族・お金…」と色々な候補が挙がってくると思いますが、「一番」を一つに絞るとすると、意外と難しいのではないでしょうか?
「自分の人生において、自分が一番大切にしていることは何か?」
その答えを持ち合わせていなければ、そもそも「一番大切にする」ことはできません。
「自分を貫く」のは、ますます難しくなります・・・。
■ 田坂広志さんの言葉
先日、ソフィアバンク代表・田坂広志さんとお話をさせていただく機会に恵まれました。その時に、田坂さんが下記のような趣旨の話をしてくださいました。
「戦後の日本を支えてきたリーダーや経営者に共通している体験が3つあると言われています。それは“戦争・大病・投獄”です。やはり、人間は“死”と向き合った時に“生”を理解し、“自分の使命”を見出せるのではないでしょうか」
深すぎますね…。
でも、確かにそういえば、稲盛和夫さんや、塚越会長(伊那食品工業)、前回ご紹介した孫正義さん(ソフトバンク)も、そういう経験がターニングポイントになっているように思います。
ただ、現代の日本社会では、「自分の死と向き合う」機会などめったにないわけですから、「自分の使命」すなわち「自分の人生において一番大切なこと」を見出すことは難しい、ということになってしまいます。
時代背景がどうであれ、あるいは、こういう時代背景だからこそ、あえて自分で意識して自己洞察をしなければ、「自分の大切にすること」と向き合えないかもしれません。
経営者はもちろん、従業員一人一人にとっても、そんなことを考えることが、会社を、あるいは自分のいる組織を「自律的にしていく一歩目」になるのではないでしょうか。
以前に、「人生というのは、後ろの扉を閉めないと、前の扉は開かないようにできている」と、ある方に教えていただいたことがあります。
「自分の未来は、自分で決めて、自分で開ける」
経営においても、個人においても、「自律的従業員に溢れた組織」を作りあげる基本のように思います。
そういう意味で、高倉健さんの「美学」であり、難しいことである「自分を貫く」姿に多くの日本人が共感したのではないでしょうか…。
引き続き、よろしくお願いいたします。
次回は12月17日(水)更新予定です。
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