第87回 問題に対する二つのアプローチ「人とプロセス―問題対処と問題解決」

今回は、「今後の社会を担っていく人材」の育成という視点で考えてみたいと思います。人材を育成するにあたり、二つの視点があると考えます。一つ目は、「問題対処型」になりがちな「人に対する視点」。二つ目は「問題解決型」に向けたアプローチとしての「プロセスに対する視点」。組織としての熟練度を上げるためには、どのような視点が必要なのでしょうか。

問題に対する二つのアプローチ「人とプロセス―問題対処と問題解決」

皆さん、こんにちは!
あの東日本大震災から丸8年が経過した今月でしたが、いろいろな切り口で特集が組まれていました。阪神・淡路大震災の被災経験のある身としては、この二つの地震が、日本人の「今」の精神性や思考性に少なからず影響を与えていることを実感します。

特に、最近の若い人たちを「ゆとり世代」に続いて「さとり世代」などと、ともすれば揶揄するような言葉で表していますが、それは、こうした社会的経験がそうさせてきている側面も否めないのではないでしょうか……。

今回は、そうした「今後の社会を担っていく人材」の育成という視点で考えてみたいと思います。

「問題対処型」になりがちな「人に対する視点」

私は仕事柄、多くの経営者の方々から「人材育成」に関するご相談を数多く頂きます。

  • もっと自律的に仕事をしてもらいたい
  • モチベーションを高めたい
  • 中間管理職のリーダーシップを高めたい
  • マネジメント能力を高めたい

等々

上記のような取り組みが必要な場合は、組織全体の課題、いわゆる「組織風土」や「組織文化」に起因する部分もあるわけですが、これと同様に個別の企業に関わらせていただき、もう少し踏み込んだ関係性になってくると、組織全体の問題とは別に特定個人の話に行き着くケースが少なくありません。

  • Aさんの部下から退職者が続出している。パワハラめいた言動に要因があるから「パワハラ研修」をして理解を深めさせたい
  • Bさんの発言がメンバーのモチベーションを下げているようなので「リーダーとしてのモチベーション研修」をしたい
  • Cさんのマネジメント能力が低いためなのか、残業が一向に減らないので「マネジメント研修」を

といった感じです。

これらのことは、ヒョットすると事実であり、特定個人の方にも問題があるのかもしれません。

そして、「人材育成研修」となるわけです。もしくは、その特定個人の方の「能力不足」を嘆き、異動や職務の変更などで何とかしのいでいくということが散見されます。

ただ、この取り組みはあくまでも「問題対処型」といわざるを得ません。

いくら異動させても、その方と一緒に仕事をする方はおられるわけで、対象となる人物が変わるにすぎません。

「問題解決型」に向けたアプローチとしての「プロセスに対する視点」

上記のような取り組みや思考性を全面的に否定するつもりはありませんが、やはり「特定個人の問題」として扱ってしまうことだけでは、本来的な意味での「問題解決」にはなっていません。

その「人」の問題と捉えがちな視点と共に、常に意識しておかないといけないのは「プロセスの視点」ではないでしょうか……。

  • Aさんが「パワハラめいた言動」をするようになってしまう「組織としてのプロセス上の課題」はないのか?
  • Bさんがネガティブな発言をしてしまう「組織としてのプロセス上の課題」は何か?
  • Cさんのチームの残業が減らない「組織としてのプロセス上の課題」は何か?

という視点です。

  • Aさんが「パワハラめいた言動」をするのは、「業績ありきの経営」で“業績さえ良ければ”といった上位マネジメントが勘違いを引き起こさせているのではないか?
  • Bさんがネガティブな発言をしがちなのは、施策に対する納得性を高める対話のプロセスが不足しているのではないか?
  • Cさんのチームの残業が減らないのは、前工程の業務との連携が悪く、手戻りが多くなっているのではないか?

真因追求と組織の成熟度

何事にも「因果関係」というのは成り立つものであり、目に見える現象・事象に最も近い原因を「近因」といい、さらにさかのぼった要因を「遠因」といいます。
そして最上流にある本質的な原因を「真因」といいますが、その「真因」までさかのぼって考えていないケースが往々にしてあるのではないでしょうか……。

こうした「真因」を見いだす視点・掘り下げる思考性・洞察力を経営者の方が身に付けないと、その組織はどうしても「問題対処型」経営になってしまい、いつまでたっても、組織としての成熟度は上がりません。

本来、企業とは「社会的課題」から「特定顧客の課題」までの幅の中で多岐にわたる「問題解決」という価値があってこそだと思います。そういう意味でも「問題解決型」思考を通じた「真因」を見いだし、自らのプロセスを見直し、改善・革新し続けなければ、組織の成熟度は上がらないのではないかと思います。

今、「彼が問題だ」「アイツを育てなければ……」と考えておられる経営者の方がいらっしゃるのであれば、あえて、いったん俯瞰的に見て「彼が問題を起こすようなプロセスの視点」も並行してお考えになってみることが必要なのではないでしょうか……。

次回もよろしくお願いいたします。

次回は4月17日(水)の更新予定です

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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