第65回 人を動かす動機づけ

ここ数回のコラムで、「人」に関することを述べました。「人」は、すなわち「個」です。しかし、医療機関では、「個」の集団で治療などに当たること(チーム医療や多職種連携など)が多くあります。

人を動かす動機づけ

ここ数回のコラムで、「人」に関することを述べました。「人」は、すなわち「個」です。しかし、医療機関では、「個」の集団で治療などに当たること(チーム医療や多職種連携など)が多くあります。

個である人が動くときには、そのきっかけや動いた後の期待などを考えることが多いですね。これらを人が動く動機(モチベーション)と言います。チームが重要な医療では、「個の動機」についても人が同じ方向を目指すような、職種の特性に合わせた動機づけが重要です。

まず初めに、動機づけとは何でしょうか。動機づけは外見的な行動の観点から定義することができます。動機づけのある人は、それが無い人よりも努力をして仕事をしようとしています。さらに説明を加えるとしたら、動機づけとは、何かをする意思であり、その行動ができることが条件となり、何らかの欲求を満たそうとすることです。

動機づけの取り組みとして最も知られているのが、エイブラハム・マズローの欲求5段階論ではないでしょうか。

図1:マズローの欲求5段階論

マズローの仮説によれば、どんな人間の心にも、5つの欲求段階が存在するというのである。

第一階層の「生理的欲求」は、生きていくための基本的・本能的な欲求(食べたい、飲みたい、寝たいなど)。この欲求がある程度満たされると次の階層「安全欲求」を求めるようになります。

第二階層の「安全欲求」には、危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい(雨風をしのぐ家・健康など)という欲求が含まれます。

この「安全欲求」が満たされると、次の階層である「社会的欲求(帰属欲求)」(集団に属したり、仲間が欲しくなったり)を求めるようにます。この欲求が満たされない時、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなると言われます。

ここまでの欲求は、外的に満たされたいという思いから出てくる欲求(低次の欲求)で、これ以降は内的な心を満たしたいという欲求(高次の欲求)に変わります。

「社会的欲求」の次に芽生える欲求は、第四階層である「尊厳欲求(承認欲求)」(他者から認められたい、尊敬されたい)です。

そしてその「尊厳欲求」が満たされると、最後に「自己実現欲求」(自分の能力を引き出し創造的活動がしたいなど)が生まれます。

このように、1つの欲求が満たされると次の段階の欲求が優勢、強くなるというもので、個人の欲求は階層を上昇するとしています。動機づけの観点から考えると、マズローの理論では、どんな欲求も実質的に満たされれば、もはや動機づけにはならないというのです。

マズローの欲求五段階論は理解しやすく広く受け入れられましたが、ある欲求が満たされると次の高い段階の欲求が活性化するということに必ずしも結びつかず、部下の動機づけに利用して労働力の意欲を一層高められたという証拠もほとんどないと最近では言われています。

モチベーションを外からの動機“づけ”でなく、内からのやる気と考えたとき、まっさきに思い浮かぶ人の姿は、成し遂げること、達成すること、とことんやり抜くことに、喜びを感じる人のことではないでしょうか。そこで、「マクレランドの欲求理論」をご紹介したいと思います。マクレランドの欲求理論とは、デイビッド・マクレランドらのグループが、作業の場には3つの主要な動機、あるいは欲求が存在している提唱したものです。

  1. 達成欲求(need for achievement):ある一定の標準に関して、それをしのぎ、あるいはそれを達成し、成功しようと努力すること。
  2. 権力欲求(need for power):ほかの人々に、何らかの働きかけがなければ起きない行動をさせたいという欲求。
  3. 親和欲求(need for affiliation):友好的かつ密接な対人関係を結びたいという欲求。

人によっては、どうしても成功しなければいられないという欲求を持つ人がいます。彼らは成功の報酬よりも自分がそれを成し遂げたいという欲求から努力をするわけです。前回よりも上手に効率的にやりたいというようなことが達成欲求です。この達成欲求の高い人は自分の責任の下でやってみたいという気持ちが強いのも特徴です。

権力欲求は他人にインパクトを与え、影響力を駆使して、コントロールしたいという欲望です。権力欲求が強い人は責任を与えられるのを楽しみ、競争が激しく、地位や身部を重視する状況を好みます。成果、結果というよりも、他人への影響力を行使することに拘る傾向があります。

親和欲求の強い人は、競争的な状況よりも、協力を促す状況を好み、相互の理解が必要な関係を築くことを好みます。

周りを見渡せば、「あの人のあの行動はこの動機から来ているのか」と妙に納得することがあるのではないでしょうか。そして、例えば「親和動機」が強い人に「達成動機」が強い人が喜ぶようなことをさせても、きっとうまくいかないでしょう。3つの欲求程度を図るには、一連の絵を見せてどう答えるかを調べる投影テストを用いるのが一般的です(今回、詳細な内容は省略します)

さらにマクレランドは、達成動機が呼びおこされやすい状況の特徴として、次の点を指摘しています。

  1. 成功として達成できるかどうかは、(運ではなく)努力と能力次第である状況。
  2. 課題の困難度、あるいはリスクが中程度(つまり、成功・失敗の主観的確率が五分五分ぐらい)の状況。
  3. 努力の結果、うまく目標が達成できたかどうかについて、あいまいさがなく明瞭なフィードバックがある状況。
  4. 革新的で、新規の解決が要求されそうな状況。
  5. 未来志向で、将来の可能性を予想して先を見越した計画を立てることが要請されるような状況。

最初の3つは、達成動機に訴える状況の基本特性となります。

患者に直接接する機会の多い職種(医師や看護師など)は、比較的 3つの状況特性を備えた達成動機を呼びおこしやすい職種といえるのではないでしょうか。それに対して、事務職系は、人事制度改革が目標だとしても達成目標がしばしばはっきりせず、目標達成の困難さを推し量るのも難しく、また改革の後にそれがうまくいったのかどうかは、少し期間をおいてしかも院内外の声を聞いてみないと分からない、というように達成動機を呼びにくい職種といえるでしょう。 それぞれの職種の中にもどの傾向が強く、弱いのかを一度調べてみるのも良いかと思います。調べなくても分かるよといった声も聞こえてきそうですが。

皆さんは、どう思いますか?

次回は5月17日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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