第116回 補佐役・参謀・ナンバー2 ~その1~

今回のコラムのテーマである補佐役は経営者に正しい判断をさせることが仕事になります。正しい判断をしてもらうためには、偏らない判断材料を準備することが重要です。

補佐役・参謀・ナンバー2 ~その1~

前回のコラムでは、経営者の資質についてお話ししました。今回はその経営者の補佐役を考察したいと思います。補佐役は参謀と呼ばれたり、ナンバー2と呼ばれたりしますが、今回は補佐役で統一します。
医療機関の経営トップは医師です。医療の専門家ではあるのですが、経営の専門家とは必ずしもいえません。従って、他業界よりも院長をサポートする補佐役が重要なのです。

補佐役の仕事とは何か

コロナ禍に関わらず、医療機関の経営には独特の経営環境がありますので、医業経営は皆さんが思っているほど簡単ではありません。経営判断を誤ると大きなダメージになることもあります。

経営者の仕事の一つにその「判断」があります。今回のコラムのテーマである補佐役は経営者に正しい判断をさせることが仕事になります。正しい判断をしてもらうためには、偏らない判断材料を準備することが重要です。医療機関の補佐役は、自分の出身部署の案件には熱心ですが、そのほかの部署の案件にはそれほどでもないという人や、金融機関出身者の補佐役は、財務諸表上の数値で考えるなどの傾向が強い人もいますので、バランスのとれた仕事をできることが重要です。さらにその判断材料から何が重要な課題、判断すべき課題なのかを設定することも必要です。経営者は日々判断することが多いですから、優先順位を決めることも大切です。判断材料をポンと経営者の目の前に差し出し、「さぁ、判断してください」という丸投げではないということです。

補佐役の仕事をまとめると、「経営判断が必要な課題を決め、その課題解決の優先順位、課題の判断に必要な材料を収集して、経営者に正しい判断をしてもらう」ことが主な内容になります。判断の丸投げではありませんと前述しましたが、最終的には経営者に判断してもらうとはいえ、補佐役は同時に自分なりの正しい判断を持つことも重要です。
経営者から直接、課題を与えられ、その課題をうまく解決することが補佐役ではありません。この点を勘違いされている人が多い気がしますので注意してください。

課題設定について

補佐役の仕事の最初が「課題」の設定です。現場から上がってくる場合もありますが、現場から上がってくる課題は、すぐに判断を求める「短期的な課題」が多いです。こちらは事務的に処理すれば良いです。補佐役が関わる課題設定は、中長期的な経営戦略にのっとった課題のほうです。そのような課題を補佐役はどのように自分のアンテナに引っかければ良いのでしょうか。まず視点や考え方、レベルですが、経営者のレベルで考えて医療機関内外から情報をキャッチすることが必要です。厚生労働省発信の情報は、今では毎日発信されています。また、中医協(中央社会保険医療協議会)などはオンタイムで会議に配布されている資料を入手することもできます。しかし、情報を自分一人で収集するには限界がありますので、なるべく多くの人から情報を入手するようにします。さまざまな人の視点を通した情報は、たとえ同じ情報でも手元に届く際には、全く違う解釈がされていることさえあります。

情報の素材が手元に収集できたら、次は素材を課題に変更するプロセスに移ります(このプロセスの段階で、課題に至らないこともあります)。プロセス1は、素材の前提条件の確認です。はじめから「NO」、「できない」の課題設定はナンセンスですが、医療機関は人員基準や施設基準、広告規制などさまざまな規制もあり、大幅な経営戦略の方向性の見直しをしなければならないなどのケースも考えられますので、前提条件の確認は必要です。
次にプロセス2として、課題とした場合、問題・議論となる点を抽出し、場合によっては仮説を立てたり、その仮説に基づいた解決法も考えておいたりします。経営者からの質問、解決方法も考えておく必要があります。
次のプロセス3ではプロセス2で抽出した論点を一つずつさらに深く検証し、解決できるものは解決しておく、解決できずに残った論点は議論の重要度を設定しておく。そして、各論点を経営者に持っていく前に自分たちで検証してみる。最後のプロセス3は、経営者の判断に必要な分かりやすい資料の一つとして、組み直しします。

直観力(観察力)と段取り

補佐役が、経営者に判断を求めにいくまでの準備は以上のとおりですが、実際に経営者に判断を求めにいったときは、何に注意すれば良いのでしょうか。持参した資料の説明をしっかり経営者が理解できるようにすることはもちろんのこと、説明をしながら経営者の反応を観察することも必要です。時には何も変化のない表情からでも、「何かある」と感じる直観力が必要です。全ての説明が終わったときに、何も質問がなく、「分かった。その方向で進めて」と言われたら、補佐役としては失格と思いましょう。たとえ綿密な準備をしたプレゼンテーションやブリーフィングだとしても経営者を刺激することができなかったということは、補佐役としては能力不足といっても良いでしょう。また何か言いたいことがあるにもかかわらず、言わなかったということもありますので、直観力や観察力が重要になります。

さらに、段取り力や根回しといったことも重要です。経営者は医師ですので、診療を担っている場合もあります。民間企業の経営者とは大きく異なっている点です。いきなり重要な課題提示を時間が限られているときに持ち込んでも、良い議論は不可能です。また場合によっては医局会など、他の医師たちの意見を聞く場も設けないといけないでしょう。効率良く正しい方向に導くために段取りや根回しといったことが必要になることもあります。特に根回しですが、医療機関しか知らない職員は、あまり事前の根回しをせずに、苦労していることをたびたび見かけます。対して医療関連民間企業出身の転職者は、根回しが上手な人が多い印象です。

次回コラムでは、補佐役に向いていないケース、補佐役に必要な能力、補佐役になるためには、などを記載したいと思います。

皆さんは、どう思いますか?

次回は9月8日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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