第151回 それ「コロナ」のせいにしていませんか その1

「コロナ」が一応収束して日常生活が戻ってきましたが、医療機関の経営状態はコロナ前の状態には戻っていません。多くの医療機関では医業収益が伸び悩み、利益が減少するどころか赤字の医療機関も増加しています。

それ「コロナ」のせいにしていませんか その1

「コロナ」が一応収束して日常生活が戻ってきましたが、医療機関の経営状態はコロナ前の状態には戻っていません。特に外来患者がコロナ前より減少してしまっています。外来患者が減少すると入院患者も減少するため、多くの医療機関では医業収益が伸び悩み、利益が減少するどころか赤字の医療機関も増加しています。

そこで医療機関では、減少した患者に戻ってもらうために公開医学講座を開催したり、(救急車の搬入台数を増やすために)救急隊へのあいさつ回りや、救急隊との意見交換会を実施したりとあの手この手を講じていますが、いずれも大きな患者増にはつながっていません。

図1 医療機関へのコロナの影響

出典:コロナ禍の影響を大きく受けた医療業;回復の動きにも差あり(経済産業省)

図2 入院、入院外(外来)患者推移

出典:コロナ禍の影響を大きく受けた医療業;回復の動きにも差あり(経済産業省)

「増収減益」となっている医療機関は多い

このような状況を踏まえた2024年度診療報酬改定でしたが、全体はプラス改定であるものの、ベースアップ評価料などの新設により医療機関の職員に対する給与を上げなければならなくなり、「増収減益」となっている医療機関も多いようです。

ただ職員の給与アップは、コロナのパンデミック(世界的大流行)時に既に特別手当などの名目で支給していた医療機関も多く、医業収益に対する給与の支出割合である給与費比率はコロナ時にはもう高くなっていました。給与という支出は固定費であり、患者の増減、医療収益の増減に関係なく支払われる費用です。さらにいったん上げた給与を下げることは、ほぼ不可能です。従って、医療機関の収支状況に非常に大きな影響を及ぼす科目といえます。

それでもコロナパンデミック時は、非常事態ということで、さまざまな補助金や緊急資金融資が医療機関に対して行われました。返済の必要のない補助金などは問題ないのですが、返済する必要がある資金融資(金利も非常に低く、返済までも猶予があるような有利な条件付き)について、返済までに猶予はあったとはいえ、そろそろ返済が開始する時期も迫ってきています(既に始まったものもあります)。
前述したように患者がまだ戻ってきていない状態で返済しなければならないことは、経営をより圧迫することになります。

経営状態の悪化を「コロナのせい」にしていませんか?

コロナによる医療機関の経営状態の悪化は、コロナが収束した現在も続いているということをつらつらと記述しましたが、このような泣き言をぼやきたいのではありません。今の医療機関の経営状態が悪いのを「コロナのせい」にしているのではないかということを、自問してほしいのです。
コロナは確かに経営状況が悪化した要因ではありますが、悪化した経営状況から脱却する努力や工夫を怠っていないか、最初からあきらめていないかということです。

では、あきらめないで、努力、工夫するとはどのようなことでしょうか。私はシンプルに「できることを効率よく積み重ねていく」ことだと考えます。例えば、診療報酬改定で新設点数が設けられたとします。その算定条件をみると、面倒くさそうです。

このようなときに後回しにしていませんか。条件によりますが、新設点数はその点数を算定する条件に新たな設備投資、人員投資がなければ、純利益(いわゆる真水)が得られます。仮に新設点数で100万円のアップにしかならないと試算結果が出たとします。金額がそれほど高くないということで、見送ったり、後回しにしたりしていませんか。

100万円の純利益を得るのに、医業収益をいくら増やせばよいかも計算してみてください。収益が100,000,000円とし、利益率が2%とします。1,000,000円利益を増やすのに5,000,000円収益を増やさないと100万円という純利益は得られない計算になります。
もちろん医業は、さまざまな制限が他業界よりも多く存在しますので、このような単純な計算どおりにいかないかもしれませんが、「収益よりも利益重視」の考え方がより重要であると考えます。

この考え方に沿って、今後いろいろな観点から純利益を上げられる具体的な手法をご紹介していきます。

皆さんはどう思いますか?

次回は8月19日(月)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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