ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第152回 それ「コロナ」のせいにしていませんか その2
前回のコラムで、コロナ後でも患者が戻ってこず、医療機関の経営は依然厳しい状態が続いていると記述しました。費用には患者数の増減に関わらず一定額の支出がある「固定費」と患者数の増減に影響される「変動費」があります。みなさんの医療機関では医薬品費は減っていますか。
それ「コロナ」のせいにしていませんか その2
前回のコラムで、コロナ後でも患者が戻ってこず、医療機関の経営は依然厳しい状態が続いていると記述しました。費用には患者数の増減に関わらず一定額の支出がある「固定費」と患者数の増減に影響される「変動費」があることは当コラムでも既に記述したとおりです。
医薬品費は減っていますか
コロナ後も患者数が減ったままであるならば、変動費の代表的な科目である医薬品費も減少していると考えられますが、みなさんの医療機関では医薬品費は減っていますか。減っている医療機関ももちろんあるでしょうが、患者数が減少しているにも関わらず医薬品費が逆に増えている医療機関も多くあります。
2023年(令和5年)実施の医療経済実態調査(下表参照)によると、固定費の代表的な科目である給与費金額の伸び率が1.9%に対し、変動費の代表的な科目の医薬品費の金額の伸び率は5.6%となっています。
一般病院 病床規模別の損益状況
出典:「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(令和5年実施)」(厚生労働省・PDF)
患者数が伸びていない中、変動費である医薬品費が伸びている理由は幾つか考えられますが、医薬品自体の単価の高騰があります。すなわち高額な医薬品が多くなったということです。医療機関は外来診療では、院外処方が多いため医薬品費の量や単価についてはあまり経営には影響しません。だいぶ以前は院内処方で、薬価差益がある時代だったら大きな影響があったと考えられますが、今はたとえ院内処方の医療機関であっても大きな薬価差益は見込めません。
入院医療においての医薬品について、DPC / PDPSを採用している医療機関は一般病床の半数を超えています。DPC / PDPSはご案内のとおり、入院においては医薬品費は包括されていますので、極力入院中は医薬品の処方は控えますし、入院時に薬を持参する形式が非常に多く見られます。このように考えると、医薬品の数自体は変わらない、または減少しているにも関わらず金額だけ上昇していることになります。
ジェネリック医薬品への切り替えは十分ですか
前述したDPC / PDPSでは、医薬品が包括されてしまいますので、高い薬価(仕入れ値も高い)より、ジェネリック医薬品(仕入れ値が低い)を採用した方が、一定額の収入である包括点数においては利益は大きくなります。
その結果、ジェネリック医薬品の使用割合が85%を超える医療機関が80%を超えました(DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」:厚生労働省)。高い数値のように見えますが、20%のDPC / PDPS病院ではジェネリック医薬品の採用率は85%未満であるということです。もし、まだジェネリック医薬品への切り替えが不十分な医療機関がありましたら、一層の切り替えの検討をお勧めします。
さらに医薬品ではバイオ医薬品に注目したいと思います。バイオ医薬品は高額なことはよく知られていますが、そのバイオ医薬品と同等性、同質性が担保されているバイオシミラーへの切り替えも検討するに値します。バイオシミラーの例として、先行品に比べてジェネリック医薬品は薬価が約7掛けです。
具体例で挙げるのであれば、アバスチンをベバシズマブへの切り替えを検討するということです。薬価は約65%となります。この他、インスリンなどもバイオシミラーへの切り替えを進めている医療機関も増えてきています。さらに2024年度(令和6年度)の診療報酬改定においても、使用を促す改定内容となっています(下図参照)。
皆さんはどう思いますか?
次回は9月11日(水)更新予定です。
前の記事を読む
次の記事を読む