第150回 財務諸表から見た収支改善 その5

前回まで、財務諸表の勘定科目に注目して、科目ごとに収支改善につながるヒントについて記述しました。今回はまとめとして、財務諸表の貸借対照表と損益計算書の読み方について記述します。

財務諸表から見た収支改善 その5

貸借対照表

貸借対照表の構成は、左右に2列数字が並んでいます。左列を資産、右列の上部分を負債、右列下部分を純資産といいます。「資産」は文字どおり、病院(会社)が所有する財産です。その財産を現金や預金など比較的すぐに現金化できるもの(流動資産)と、土地や建物などすぐに現金化をすることが難しい固定資産とに分けて記載されています。

右列上部の「負債」は比較的すぐに返済しなければならない債務で流動負債といい、原則返済期間が1年以上の債務を固定負債といいます。右列下部分の純資産は、資本金など、利子負担や返済義務のない資金のことです。

貸借対照表は「右から左に読む」と理解しやすいです。右列上部分は病院がどのように資金(お金)を入手したのか(銀行から借りたなど)を表します。そしてその資金(お金)を何に使ったのか(買ったのか)が右列の部分に記載されています。貸借対照表は○年○月○日という決まった日にちの財布の中身の内訳です。
次に損益計算書です。

損益計算書

損益計算書は、「収益」「費用」「利益」で構成されています。利益は、収益から費用を差し引いたものです。「収益」は医業によって得られた医業収益と、診断書作成や(保険収入ではない)人間ドックの医業外収益などとに区分されています。

「費用」は、医薬品費などの材料費、給与や賞与などの人件費、その他経費、設備関係費、研究研修費などに区分されますが、この費用の構成割合を見ると材料費と人件費が60~70%程度占めます。赤字病院では、それ以上になることもあります。

材料費は変動費の代表的な科目であり、人件費は固定費の代表的な科目です。収益に対する人件費の割合の目安は50%といわれています。このシリーズでこの二つに注目してコラムを記述した理由もお分かりいただけたと思います。

外科手術が多い外科系の病院では材料費の比率は高くなりがちです。損益計算書は月ごとに計算されていますが、決まった期間(年や年度など)を時系列に確認すると科目ごとの動きが分かります。例えば月曜日が少ない月は、医業収益が低い。寒い時期は、循環器や脳血管外科の患者が多くなるので医業収益が増えるなどです。

1年を通しての収支の流れを確認するには、損益計算書を確認すれば理解できます。注意事項として損益計算書は、あくまでも現金の出し入れの数字です。医療機関の場合、レセプト(診療報酬明細書)による請求ですので、実際の入金は2カ月後になります。従って、○月の(損益計算書上の)医業収益の金額は、○月の2カ月前の診療内容の反映という「ズレ」が生じますので、この点を頭にいれて数字を確認しましょう。

  • * キャッシュフロー計算書に関しては省略しました。

皆さんはどう思いますか?

次回は7月10日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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