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第154回 それ「コロナ」のせいにしていませんか その4
実質マイナス改定が続く中、評価が上がっている診療点数が何点かあります。そのうちの一つが「医師事務作業補助体制加算」です。筆者は医療事務員を目指す学生の教育にも従事していますが、医療機関から医師事務作業補助者での求人が急増しています。
それ「コロナ」のせいにしていませんか その4
実質マイナス改定が続く中、評価が上がっている診療点数が何点かあります。そのうちの一つが「医師事務作業補助体制加算」です。「勤務医の負担の軽減及び処遇の改善を図るための医師事務作業の補助の体制その他の事項につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者」が算定の対象です。筆者は短大や医療系専門学校で医療事務員を目指す学生の教育にも従事していますが、「医師事務作業補助体制加算 届出施設数推移」の図からも分かるように、医療機関から医師事務作業補助者での求人が急増しています。
なぜ医師事務作業補助者の求人が多くなっているのか。その理由は医師事務作業補助者が多ければ診療点数が高いこと(図:医療事務作業補助体制加算〈入院初日〉参照)と、4月から始まった医師の働き方改革のタスクシェアもあって医療機関の現場が医師事務作業補助者の利便性に気付いたことが大きいのではないでしょうか。
医師事務作業補助者の業務内容
コロナ以降、収益が上がらず悩んでいる医療機関も多いと思いますが、まだまだ収益を上げる方法はあります。実際の医師事務作業補助者の業務内容を幾つかご紹介します。
1. 外来診療においての支援
外来診療において、初診、再診、術前検査、手術IC、電子カルテの代行入力、紹介状記載、紹介元への返書記載の場面において医師事務作業補助者が診療補助に介入した結果、医師事務作業補助者が介入した方が、診察時間は多少長くなるが、それ以上に患者が「じっくり診察してもらった」という感想が非常に多かったというデータがあります。これは医師と患者との信頼関係の構築にも良い影響を及ぼします。
2. 急性期医療のおいての支援
患者の状態悪化の兆候を察知して介入することで急変を予防するシステム(Rapid Response System)があります。このシステムは集中治療室などで運用されています。このような急性期医療の現場では、特に急変時などは通常業務以外の緊急対応が発生するため、マンパワーの負荷も大きい現場の一つです。そこで、このような現場に医師事務作業補助者を配置して診療支援を行いました。この病院では、電子カルテはシステム上オーダー入力がないと実施できないものがあり、医師は急変時にも関わらず患者のベッドサイドから離れて入力作業を行う必要がありましたが、この入力作業を医師事務作業補助者が代行入力することにしました。この結果、医師は急変時に患者のそばを離れることなく処置を続けることができるようになりました。
3. 医療安全の取り組み
病院内の安全は非常に重要です。医師事務作業補助者が所属する医師事務作業支援室が医療安全に取り組んだ結果、この病院ではインシデント報告が3倍になりました。ハインリッヒの法則でもあるようにインシデント数を多く集め、日ごろから医療事故を招くかもしれない事案を小さなうちに対処しておくことが、重大な医療事故を防ぐことにつながります。
4. 繁忙診療科への医師事務作業補助者の集中配置効果
繁忙診療科へ医師事務作業補助者を集中的に配置し、検査、処置、指導料などの電子カルテ入力を医師事務作業補助者にシフトしたところ、配置以前に比べ医師による入力回数は激減しました。さらに平均外来患者数は約10人増え、患者単価も約5,000円増えました。また指導料算定漏れの効果も同時にありました。
5. 人間関係構築が不得手医師への専属医師事務作業補助者支援
ごくまれに人間関係の構築が苦手な医師がいます。他医師、他医療従事者、患者や患者家族ともトラブルになることもあります。そのような医師に専属の医師事務作業補助者を配置した例があります。この医師事務作業補助者は人間関係構築に長(た)けている人でしたが、この人を専属医師事務作業補助者にした結果、患者、他職種からのクレーム、トラブルが激減し、医師が医業に集中できるようになりました。さらに患者数も増えました。その後、この人間関係が不得手な先生は、ゴミはゴミ箱に入れ、自分からあいさつをしてくれるようになったそうです。
皆さんはどう思いますか?
次回は11月13日(水)更新予定です。
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