第159回 それ「コロナ」のせいにしていませんか その9

今回のシリーズ名として「それ『コロナ』のせいにしていませんか」としましたが、あらためてコロナの及ぼした患者数の変化を確認します。

それ「コロナ」のせいにしていませんか その9

今回のシリーズ名として「それ『コロナ』のせいにしていませんか」としましたが、あらためてコロナの及ぼした患者数の変化を確認します。

コロナ以前の患者数には戻っていない

延患者数の対前年比 同月比較

出典:「2024年度 病院経営定期調査 概要版(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会)」(一般社団法人 日本病院会・PDF)

上記グラフでも分かるように、2019年6月の100%ラインをほぼ全ての状況で下回っていますので、コロナ以前の患者数は戻っていないことは明らかです。コロナが終息すれば、患者は戻ってくるという意見もありましたが、そのような予測は正しくはなかったということになります。以下は同報告書のコメントです。

「延患者数についてコロナ前の2019年6月期を100%とした6年連続の同月比較では、全体の入院患者数は2020年は対前年比87.7%に落ち込んだが、2024年に93.0%へと年々わずかに増加していた。DPC対象別では、DPC対象病院は全入院とほぼ同様の傾向であった。DPC対象外は、95%前後で推移し、2024年は95.7%であった。入院(上記グラフ)延患者数の前年比(平均値)外来患者数は2020年6月期の92.6%から2022年101.5%へと増加したが、2024年には93.7%に減少していた」

徐々に患者は戻りつつあるようには見えますが、今後コロナ以前の状況に必ず戻るとは言い切れません。このような外部経営環境の中、医療機関は患者の単価を上げる努力をして何とか収益を上げようとしています。本コラムでも少しでもそのヒントになるような事柄を取り上げてきたつもりです。

「短期滞在手術等基本料」の見直しを提案

一人一日あたりの診療収入(単価)の対前年比 同月比較

出典:「2024年度 病院経営定期調査 概要版(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会)」(一般社団法人 日本病院会・PDF)

患者数が減少した。その減収分は単価を上げて何とかカバーしようとしているという状況です。しかし、医療機関の全体の収支を見てみると、さまざまな調査報告で赤字病院が黒字病院を上回っている状況です。コロナ以外の要因としては材料費の高騰、診療報酬改定による人件費の上昇なども考えられます。

このことは、急性期一般入院料1を算定している医療機関(同入院料で最も診療点数が高い入院料)でも黒字にならない。むしろ2番目、3番目に高い入院料(急性期一般入院料2や3)の方が黒字になる可能性が高いといわれています。これは、看護師などの人員配置数の違いによる給与費の高低の影響だといわれています。このように重症度の高い患者だけを集めても収支が改善するとはいえない、以前では考えられない状況となっています。

そこで今回は「短期滞在手術等基本料」の戦略的展開をあらためて見直してくださいという提案です。いわゆる日帰り手術のことですが、毎回の診療報酬改定でもその該当手術(術式)が増えています。収支、費用対効果を考えると、日帰り手術の対象術式を増やし、件数を増やすことは、収支改善の効果があります。

日帰り手術の件数を増やすためには、日帰り手術を行う手術室の確保、その手術室の増、対応可能な医師の確保など実施体制の準備があります。しかし、比較的多額な設備投資がなく「日帰り手術センター」など、センター化することも可能です。もちろん日帰り手術は、患者にとっても(基本的に)入院しなくて済みますので、メリットは大きいものがあります。

今回のコラムで、このシリーズは終了とし、次回コラムから新しいテーマとする予定です。

皆さんはどう思いますか?

次回は4月9日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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