第160回 医療DXと医療AI その1~課題と問題点~

本コラムの第132回で、DXについて取り上げました。この回から時間がたち、医療機関においてもDXやAIを取り入れた改革などが進み始めましたので、あらためて医療DXと具体的な医療AIについて、複数回にわたってコラムで取り上げていきます。

医療DXと医療AI その1~課題と問題点~

本コラムの第132回で、DXについて取り上げました。医療界にDXを導入する目的として、情報の共有化やプラットフォームの整備がされ、具体的な将来像として、データヘルス改革を例に解説しました。この回から時間がたち、医療機関においてもDXやAIを取り入れた改革などが進み始めましたので、あらためて医療DXと具体的な医療AIについて、複数回にわたってコラムで取り上げていきます。

第132回 医療業界のDX

はじめに

医療DXを語るうえでその導入の背景の理解として、第132回のコラムでも取り上げた「データヘルス改革」は重要です。データヘルス改革は、医療に限らず介護を含めて予防推進、国民の健康維持や増進を図ること、がんゲノム情報の解析によって革新的な医薬品の開発、AIの具体的な活用を目的にした計画です。この計画の基礎構築部分にマイナンバー化とオンライン資格確認が据えられています。この基礎構築部分の2点については、皆さんもご存じのとおり着々と進められています。

このようなDXやAIが導入される外部環境が「少子高齢化」です。高齢化により、患者や介護が必要になる人口が増えるのに対し、医療従事者や介護者は少子化などによって人手不足となり、非常にアンバランスな状況になります。このアンバランスな状況の解消(医療者の負担軽減)をDXやAIを活用して実現しようと考えています。

出典:「AIホスピタルとは」(日本医師会AIホスピタル推進センター)

さらに医療の都市部と地方部など、住んでいる場所によって受けられる医療内容が異なるといった医療の地域格差の解消もAIホスピタルの実現の目的です。

AIホスピタルを含めDXの基本は「情報の集中管理」「分析」「情報提供」などの情報管理全般です。突然ですが、世界で一番売れている時計をご存じですか。皆さんの中にも持っている方は多いと思いますが、「アップルウォッチ」です。このアップルウォッチは単に時計としての役割だけではなく、血圧なども測定、記録するような機能もあります。時計というよりもバイオセンサーです。大げさに言うと、このような個人の検査データなどの情報を収集、分析などを国民全員で行うのです。

このようなバイオセンサーをIoTにつないでネットワーク化すると遠隔医療、在宅医療、非接触型生体検査などに応用可能です。既にフィリップス社が開発した使い捨てウェアラブルパッチにより、コロナ病棟での遠隔モニタリング診療が可能になったと報告もされていますので、実現されはじめているのです。

DXやAIの導入の課題

医療界にDXやAIが導入され、効率化されることに問題が全くないわけではありません。課題や問題点を幾つか指摘しておきます。まず情報漏洩(ろうえい)の問題です。医療の情報は、究極の個人情報(疾患や治療内容など)です。このような個人情報の漏洩を防ぐ万全の体制を整えなければなりません。しかもいったん整えたら対応終了ではなく、常に見直しが必要です。その資金も必要です。資金についてはソフトもハードも必要ですが、資金や環境が十分にある医療機関は非常に少ないのが現状です。

法的な整備としては、次世代医療基盤法などが新設され整いつつあります。法的な整備は、情報管理の部分だけではなく、例えばAIによる診断が誤っていた場合の責任の所在が(誰に)どこにあるのかなども整理も必要です。

そして何より、現場の医療スタッフが、新しいデジタルテクノロジーの導入をどのように感じているのかという問題です。これはスタッフだけの問題ではなく、使いやすい、受け入れやすいユーザーインターフェイスの問題もあります。医療機器などは目覚ましい進歩を遂げています。医療機関内にさまざまな(部門)システムがありますが、それらを十分に活用できているかといわれたら疑問です。相変わらず長い待ち時間に短い診察時間、予約しても予約時間どおりに始まらない予約時間、低い普及率の電子カルテ、いまだに現金のみの会計手段の医療機関も珍しくありません。
これらの問題や課題はありますが、医師の働き方改革も始まり、待ったなしの状況になりつつあります。

医療機関は新しい取り組みなどに対し、周りの取り組み状況など様子を見ながら、自院の進み具合を調整するところがあります。しかし、DXやAIに関しては他院より早めに取り組んでいた方が得をします。その理由はこれから本コラムで解説していきます。

皆さんはどう思いますか?

次回は5月14日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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