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第161回 医療DXと医療AI その2~次世代医療基盤法~
医療DXとは国民の健康や医療、介護の個人情報を収集してその内容を分析し、分析結果を予防や治療や効果的な手法としてフィードバックすることです。収集する情報は、センシティブな個人情報として、個人情報保護法でも特に注意して取り扱うように規制されています。
医療DXと医療AI その2~次世代医療基盤法~
医療DXを簡潔にいうと、国民の健康や医療、介護の個人情報を収集してその内容を分析し、分析結果を予防や治療や効果的な手法としてフィードバックすることです。
収集する国民の健康などの情報は、センシティブな個人情報として、個人情報保護法でも特に注意して取り扱うように規制されています。このセンシティブな情報の取り扱いのために次世代医療基盤法が2018年に施行されました。
次世代医療基盤法と個人情報保護法
出典:「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会 提言書(概要)」(厚生労働省・PDF)
収集したデータは、役立つデータを生み出します。このデータを利用してヘルスケアマネジメントシステム(仮称)で、効率的で科学的な根拠に基づいた最も効果のある診療内容の提供を支援することになります。そのために分散しているデータを統合する必要があります。しかもそのデータはセンシティブな個人情報であるため、取り扱いには細心の注意が必要です。データの統合のために次世代医療基盤法が必要であり、個人情報の取り扱いに個人情報保護法が必要になるわけです。
認定事業所による医療情報管理
出典:「改正次世代医療基盤法について(令和5年11月、内閣府 健康・医療戦略推進事務局)」(厚生労働省・PDF)
上図の中で、病院、診療所、市町村などから「認定事業所」に医療情報が流れているのが分かると思います。この医療情報こそ患者などの医療情報であり、個人情報です。次世代医療基盤法が施工される以前は、医療機関などが外部に情報を提出する際、個人が分からないように加工する必要がありました。
しかし、例えば1人の患者が複数の医療機関に受診して、その複数の医療機関が匿名化をした情報を提供しても、その情報を提供された機関はこの二つのデータが同一人物のデータとは分かりません。これではせっかく収集したデータを分析しても結果に意味がなくなります。
そこで医療機関などから提出されるときは、まだ個人名などの個人情報は分かるようにしておいて同一人物を統合し、その後匿名化する「認定事業所」ができました。次世代医療基盤法は、主にこの認定事業所の厳格な管理を法律で規定したものとなります。
医療DXの推進には医療情報の活用が大前提
同時にマイナンバー制度がスタートし、健康保険証とひも付けることによりデジタル的に情報収集が容易になりました。しかし、これらは「国民総背番号制」にもつながるものがあります。平成19(2007)年の消えた年金問題などもあり、国民感情としてはマイナンバーなど国民総背番号制にアレルギー的な反応をする人たちもいます。
一方で、医療DXには識別番号を有することは大前提の話になります。いずれは、マイナンバー、保険証番号、基礎年金番号も統一される可能性が高いと考えられます。
マイナンバーの概要
出典:「全国高齢者医療・国民健康保険主管課(部)長及び後期高齢者医療広域連合事務局会議(保険局 医療介護連携政策課 説明資料)」(厚生労働省・PDF)
国民に「やっぱり……」などと言われないように、セキュリティなどに十分に注意して医療DXが進み、患者などへの貢献が飛躍的に進むことを期待します。
皆さんはどう思いますか?
次回は6月11日(水)更新予定です。
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