第162回 医療DXと医療AI その3~医療クラウド~

今回のコラムは「医療クラウド」の話です。2010年2月に厚生労働省医政局長通知で「医療情報システムの安全性に関するガイドライン」が改正されました。これにより医療情報の外部保存が容認され、医療クラウドが大きく前進することになったわけです。

医療DXと医療AI その3~医療クラウド~

今回のコラムは「医療クラウド」の話です。2010年はクラウド元年と呼ばれ、同年2月に厚生労働省医政局長通知で「医療情報システムの安全性に関するガイドライン」が改正されました。このガイドラインにより医療情報の外部保存が容認され、医療クラウドが大きく前進することになったわけです。

医療クラウドにより、患者は自らの医療内容などを自身の健康管理に役立てたり、適切な医療提供を求めたりすることが容易にできます。また病院は患者の治療の参考、遠隔医療や救急医療への対応など、医療の質の向上に活用できます。健康保険においても被保険者の健康管理や疾病予防などへの活用が期待されます。さらに介護においても医療と同様に介護の質を高めることや、特に在宅介護への活用が考えられています。

どこでもMY病院

医療クラウドの実現のために国が推奨しているのが「どこでもMY病院」です。どこでもMY病院は、病院内で利用されていた医療情報を医療情報の受益者である患者自らが医療データ、健康データとして管理、活用することを目指しています。

どこでもMY病院活用事例

出典:「『どこでもMY病院』構想」(内閣府・PDF)

このような活用例は、欧州では既に先行して取り組まれています。スウェーデンでは上記に示した活用事例のような患者本人が自分の医療・健康情報を閲覧できる仕組みが公的に整備されており、イギリスでは「Health Space」という患者自身が自分の医療・健康情報にアクセスするサービスが開始されています。

出典:「『どこでもMY病院』構想」(内閣府・PDF)

また、電子お薬手帳や電子処方箋は、スウェーデンでは2006年には普及率が42%に達しているとの報告もあります。現在では国内での運用にとどまらず、EU全体で情報共有の在り方が検討されています。

わが国では、ようやく電子処方箋、オンライン診療、オンライン服薬指導の本格的な導入が始まったばかりです。電子処方箋については、2024年度の診療報酬改定で診療報酬点数のインセンティブもつきましたが、まだ普及率は高くありません。電子処方箋への署名に使う資格証カードを持つ医師もまだ少ないのが現状です。

病院内のクラウド分野

既に病院内で多くの領域でクラウド化が進んでいます。診療系の情報共有を他職種間で連携させる手法として(電子カルテを中心に)クラウドが先進的な役割を担っています。具体的には画像診断装置のデジタル化に伴うクラウド化になります。同様に病理検査データのクラウド化も期待されています。特に病理診断医は、全国で2,000人程度しかいませんので、病理医不足の解消のためにもクラウド化が急がれる分野です。

情報共有は医療だけの課題ではなく、介護においても医師、看護師、薬剤師、ヘルパー、ケアマネジャーなど複数の職種間で情報共有する必要があります。この分野でもクラウド化が大いに期待されています。

皆さんはどう思いますか?

次回は7月9日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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