第80回 がん登録について

「がん登録」とは、「がん」について、得られたさまざまな情報を一定のルールに則って標準的な形式で登録し、データ化してそのデータを活用するものです。がん登録自体にまだまだ課題はありますが、がん登録制度が完成した暁には、全国どこに住んでいてもがんの標準的な治療が受けられるようになります。

がん登録について

「がん登録」とは、医療機関に患者が受診した結果、「がん」であるとの診断が下され、その「がん」について、得られたさまざまな情報を一定のルールに則って標準的な形式で登録し、データ化してそのデータを活用するものです。

厚生労働省の「がん登録」定義

がんの罹患(りかん)(病気にかかること)や転帰(最終的にどうなったのか)という状況を登録、把握し分析する仕組みであり、がんの患者数や罹患率、生存率、治療効果の把握など、がん対策の基礎となるデータを把握するために必要なものです。がん対策を推進するためには、正確ながんの実態把握が必要であり、その中心的な役割を果たすのが「がん登録」です。

がん登録の種類

がん登録には三つの種類があります。それぞれの目的、活用方法が異なります。

(1)全国がん登録

国や都道府県による利用、提供の用に供するため、国が国内における、がんの罹患、診療、転帰などに関する情報をデータベースに記録し、保存すること。

(2)院内がん登録

病院において、がん医療の状況を的確に把握するために、がんの罹患、診療、転帰などに関する情報を記録し、保存すること。

(3)臓器がん登録

学会や研究会が中心となり、全国規模でデータを収集し、主体となる(学会などの)団体が、データを活用する仕組み。「症例登録」の総称。

*参考:厚生労働省 がん登録

がんによる死亡者数

平成28 年人口動態統計月報年計(概数)の概況(注1)によると、平成28 年の死亡数は130 万7,765 人で、前年の129 万444 人より1 万7,321 人増加し、死亡率(人口千対)は10.5 で、前年の10.3 より上昇しています。死亡数の年次推移をみると、昭和50 年代後半から増加傾向となり、平成15 年に100 万人を超え、平成28 年は130 万人台となっています。75 歳以上の高齢者の死亡数は、昭和50 年代後半から増加しており、平成24 年からは全死亡数の7割を超えています。

*(注1)厚生労働省 平成28年人口動態統計月報年計(概数)の概況(PDF形式:6,188KB) P.8
3 死亡 (1)死亡数・死亡率

平成28 年の死亡数を死因順位別にみると、第1位は悪性新生物で37 万2,801 人(死亡率<人口10 万対>は298.2)、第2位は心疾患19 万7,807 人(同158.2)、第3位は肺炎11 万9,206 人(同95.3)、第4位は脳血管疾患で、10 万9,233 人(同87.4)となっています。

*出典:厚生労働省

平成28年人口動態統計月報年計(概数)の概況(PDF形式:2,334KB) P.10
図5 主な死因別死亡数の割合(平成28 年)

この表からも我が国の25%以上の方が、がん(悪性新生物)によって亡くなっていることが分かります。この「がん」についての対策を、「がん」のデータを集約して、がん医療へ有効活用することが、がん登録の最大の目的です。2013年12月には「がん登録等の推進に関する法律」が制定され、2016年1月にはその法律が全面的に施行されました。法制化はされましたが、課題も残されています。がん登録の基本となる院内がん登録をさらに推進していかなければならないこと。そもそもがん登録を実施する人数が十分ではなく、その人材の育成にも時間を要することなどが考えられます。

がん登録は、誰でもできるわけではありません。がん登録の研修を受けなければならないのです。この研修を年間通して実施していないことは、研修に参加できる人数が限られるという課題の要因でもあります。

*参考:国立がん研究センターがん情報サービス 「院内がん登録実務者研修」

全国がん登録データベース

(1)がんに罹患した者の姓名、性別、生年月日

(2)届出を行った医療機関名
*病院又は指定された診療所は、原発性のがんについて、初回の診断が行われた時、がんに関する情報を都道府県知事に届け出なければならない(がん登録推進法第6条)

(3)がんと診断された日

(4)がんの発見経緯

(5)がんの種類および進行度(転移性のがんに係る原発性のがんの種類および進行度が明らかではない場合にあっては、その旨)

(6)(2)の医療機関が治療を行っていてれば、その治療内容

(7)(3)の日における居住地

(8)生存確認情報等(現状の地域がん登録項目と同様の項目を想定)

がん情報の流れ

がん情報は究極の個人情報でもありますので、適切な管理のもと、目的以外の利用禁止・秘密漏えい等の罰則も規定され、情報開示請求等にも応じないといった管理体制で保管されています。

院内がん登録の目的

院内がん登録は、自院のがん患者に対してがん診療情報を登録して、がん診療の動向や治療成績、予後などを把握し、医療に資する情報として活用することはもちろんですが、全国がん登録との関連性や自院ががん診療拠点病院であれば、必要な機能の一部として実施されています。

六つの目的

  1. 受療状況の把握
  2. 生存率の把握
  3. がん診療の分析と評価
  4. がん診療の研究と学会稼働
  5. がん診療の連携と継続
  6. 全国がん登録等への対応

事例:院内がん登録年間データ

*出典:株式会社FMCA 調べ

男女比率

診断時年齢(男性)

診断時年齢(女性)

まとめ

がん登録自体にまだまだ課題はありますが、がん登録制度が完成した暁には、全国どこに住んでいても、がんの標準的な治療が受けられるようになります(がん医療の均てん化)。 がんに罹患した患者の心理状態は、少しでも良い病院で受診、治療したいというのが本音です。そのために全国の病院へあちこち受診することも珍しくありません。そのような患者もがん登録では、追跡していきます。
また、がん治療が標準化されれば、がんに罹患して、どの病院が良いのか分からないなどの、がんに関する情報を持っているか否かで治療結果が変わるなどといった、本来はあってはならないようなことも防げます。早い制度の完成が望まれます。

皆さんは、どう思いますか?

次回は8月8日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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