第81回 健診事業部の拡大に最も重要なこと

今年度は、診療報酬と介護報酬のW改定でしたが、診療報酬改定は、毎回、改定率はマイナスであり、医療機関の収益は同じ状態であれば減収の一途をたどります。一般的に健診事業を拡大する戦略としては、広報活動、営業活動などを強化して健診受診者数を増やすことを考えがちですが、広報活動や営業活動の前に、実践しなければならないことがあります。それが「マーケティング」です。ぜひ、健診事業の拡大には、マーケティング思考で実践してください。

健診事業部の拡大に最も重要なこと

今年度は、診療報酬と介護報酬のW改定でした。特に診療報酬改定は、毎回改定率はマイナスであり、医療機関の収益は同じ状態であれば減収の一途をたどります。
しかし、医療機関に併設されているような健診事業は、診療報酬改定に左右されず、価格、提供する内容は、医療機関自らが設定することが可能です。特に近年は、マイナスの診療報酬改定にもかかわらず、新しい保険診療内容が次々と登場しています。このような新しい保険診療内容は、設定される保険診療点数(医薬品価格を含む)が高額になる傾向があります。オプジーポなどは、その典型的な例です。診療点数が高くなるということは、同時に患者の自己負担も高額になることにつながります。経済的な理由で医療機関に受診するタイミングが遅くなり、重症化、手遅れなどということにもなりかねません。このような状況になると、病気にならない健康な状態を保つという、予防医学や健診事業ということが注目されます。
医療機関側にとっても、自らで提供する医療サービスの内容や価格が保険診療点数という公定価格で決まってしまうよりは、前述したとおり、自らで提供するサービス内容や価格を決められる健診事業の拡大を検討することは、自然の流れです。

一般的に健診事業を拡大する戦略としては、広報活動、営業活動などを強化して健診受診者数を増やすことを考えがちですが、広報活動や営業活動の前に、実践しなければならないことがあります。それが「マーケティング」です。
マーケティングの目的は、フィリップ・コトラーによると、「需要の管理、すなわち、需要の水準、タイミング、構成を管理するスキルの開発」(注1)とあります。

  • (注1)「コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を創造し、攻略し、支配するか」フィリップ・コトラー 著 ダイヤモンド社 序文ixページより抜粋

マーケティングなくして、広報活動も営業活動も意味がないのです。
まず、マーケティングの原則についてですが、「顧客の考え方は一つではない」ということです。健診にやってくる受診者の申し込み動機は、さまざまであるということです。受診動機が、金額であることもあるだろうし、健診内容であることもあるでしょう。このような積極的な動機だけではなく、会社の指定施設だからなどという消極的な動機のこともあります。当然、その他の理由であることも多々あると思います。さらに健診受診も初めてという方もいらっしゃいますし、毎年受診しているというリピーターの方もいらっしゃいます。このようにさまざまな背景を持つ健診受診者を一律な扱いをしていませんか。コスト効率を考えれば、同じ価格、同じ内容の提供は最も効率の良い手法です。しかし、他施設との競争が激化してきた状況では、他とは違う「差別化」が重要なキーワードとして浮かび上がってきます。そして、顧客は、自分の受けたサービス内容によって、次の行動を決定します。サービス内容に満足すれば、来年も来ようという行動につながり、逆に不満足であれば、来年は別の健診施設にしようかなという考えになります。サービス内容とは、健診についてだけではありません。他産業でもよく使われていますが、ポイントカードやマイレージの導入や受診回数や受診日や時間帯によって割引率が異なるシステムの導入など、いわゆる顧客への見返りサービスも含まれます。保険診療の世界では、法的にこのようなサービスは禁止されていますので、抵抗を感じる現場の方もいらっしゃいますが、保険診療ではない健診事業では、全く抵抗を感じる必要はありません。

このように顧客の行動意思決定思考を考えると、「顧客は何を求めているのか」ということが重要であり、マーケティングの考え方が必要だということに気づきます。
最初にも述べたように、顧客の考えはひとつではありませんので、多様なニーズに応えるように準備をしておくことが必要なのです。しかし、準備をするにあたり注意も必要です。それは健診事業部として「何が目的なのか」ということを前提に考えておかなければいけないということです。単に受診者数を増やしたいのか、受診単価を上げたいのか、収益を上げたいのか、利益を上げたいのかなど健診事業部の目的に沿った準備が重要であるということになります。
たとえば、健診事業部として、リピーター受診者を確実に増やすということを目的とするとします。マーケティングの法則に、「1対5の法則」、「5対25の法則」という考え方があります。1対5の法則とは、新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかるという法則です。5対25の法則とは、顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%改善されるという法則です。これらの法則によれば、リピーターを増やすことは、新規顧客の1/5のコストで、25%以上の利益率が改善できることになります。
健診事業でリピーターを増やすために、最も重要なタイミングは1回目の受診時です。1回目から2回目への受診率、2回目から3回目への受診率などを調査してみると、2回目への受診率が最も低いことが多いのではないでしょうか。そこには2回目の受診に至らなかった何らかの要因があります。さらに性別や年代別に2回目への受診率を調査してみて、2回目への受診率が特に低い項目が明らかになったら、その理由を分析して、対策を講じることが必要です。例えば女性の2回目への受診率が低い場合、女性特有の健診である婦人科健診の内容などに不満を持っていることが原因(注2)であることが多いです。

  • (注2)株式会社FMCAの業務調査/アンケート調査の経験から
  • 婦人科健診の待ち合いスペースが、他の健診受診者待合スペースと隣接していて、婦人科健診の受診者へのプライバシーの配慮に不満を持っていた。
  • 身長、体重などの測定担当者が男性だった。(女性としては見られたくない)

このような受診者の満足度を調べるために、第三者による日ごろの業務をチェックしてもらうこと(業務調査)や健診受診者へのアンケートを実施することも効果的です。

健診などの予防医学の分野は、今後ますます発展していくでしょう。医療業界の中でも成長分野のひとつであり、医学においても重要な役割を占めるでしょう。医療機関の収益事業としても、以前の医療機関のおまけ的な存在から、中心的な存在になることを期待されています。ぜひ、健診事業の拡大には、マーケティング思考で実践してください。

皆さんは、どう思いますか?

株式会社FMCA

  • 健診事業の業務調査
  • 健診受診者のアンケート調査

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E-mail:fujiimca@ck2.so-net.ne.jp

次回は9月12日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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