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第10回 地域医療連携室
仕事柄、全国様々な病院へご訪問する機会が多いのですが、どの病院にもあるのが、「地域医療連携室」ですね。
しかしこの地域医療連携室は以前、病院には存在しない部署でした。
また一般の方々にもあまりなじみのない部署だと思います。そこで、病院内でますます重要性を増してきた地域医療連携室の役割や機能をご紹介したいと思います。
そもそも地域医療連携室が普及したきっかけは、今から10年前の2002年に入院料に対する加算点である急性期入院加算、急性期特定入院加算の要件が変更(厳しくなりました)になったことです。
この加算点を算定する条件が紹介率30%、平均在院日数17日というものでした。
この数値は当時の急性期病院のメルクマークとなりました。この条件をクリアするためには、他病院との連携を強化する必要に迫られたわけです。
具体的には急性期医療の治療が終わった患者(次の段階としてリハビリなど必要とする患者など)は、別の病院へ転院してもらいます。
その理由は、機能回復や療養目的で入院を継続すると平均在院日数が長くなり17日という条件を満たせなくなるからです。
そして次にほかの医療機関からの紹介患者が増えなければ紹介率30%以上という条件も満たせません。
このように自院に患者を紹介してくれる医療機関とは前方連携を強化し、自院からの患者を受け入れてくれる医療機関とは、後方連携を強化することが経営的に求められたのです。
この役割を任された部署が「地域医療連携室」ということです。
病院に初めて営業部署が生まれた瞬間です。
連携室が立ち上がった当初は、医事課や看護部、相談室などの部署から異動してきた方々何から手を付けてよいのか暗中模索の状況でした。
当然ですが営業としての基本も能力も低かったところが多かったように記憶しています。
電話口で怒られる。
訪問しても門前払いということも珍しくありませんでした。
さらに話をややこしくしたのが、「患者を紹介してもらう」ということは、紹介元の医療機関にとってもその患者はお客であるということです。
(お客という表現は正確ではありませんがご容赦ください)紹介したら最後と考え、患者を取られると患者を紹介することを敬遠する医療機関も多くありました。
わざわざ遠くの病院を紹介し、患者が通院の不便を感じ自分のところへ戻ってくるように仕向けたなどのうわさ話も数多く聞かれました。
そこで医療機関の機能や規模に合わせた患者を相互に紹介しあうというという考え方に発展し、具体的には規模の大きな病院が比較的症状が安定した患者を開業医などに紹介する(逆紹介)ことから始め、徐々に患者の病状と医療機関の機能に合った患者の紹介(マッチング)が活発になってきました。
この手法は現在でも積極的に行われており、長期に実施されればされるほど、その地域の患者紹介は多くなります。
■地域医療連携室の具体的な業務内容
近隣医師会との関係強化(協定締結)
地域の医師の団体である地域医師会との関係を密接に保つことは、非常に重要な政策です。
医師会を通じて個人開業医との連携協定の契約をする。
その連携協定が済んだ開業医を病院の正面玄関などに掲示するなどの取り組みも有効です。患者への安心感にもつながります。
■データベース構築
どの医療機関から、どのような患者がいつ紹介されたのか(したのか)をデータベース化します。
この蓄積されたデータが営業活動に活かされることもあります。
さらにこのデータを使って紹介元医療機関への様々なお知らせや場合によっては、患者へ直接、ハガキなどを郵送することにも使用します。
最近では、地図機能も取り込んで、紹介元(先)医療機関、患者宅などを地図上にプロットして道順案内などに活用する施設もあります。
患者を紹介した医療機関は、患者のその後が気になります。
そこで、紹介された医療機関側が、転帰の場面で連絡することは信頼関係の醸成に非常に有効です。
その連絡のタイミングなどのチェックなどにもこのデータベースが活用されます。
■医師間のコミュニケーション強化
紹介元、紹介先は医療機関同士ですが、じつは医師同士のコミュニケーションが基本です。
その医師同士のコミュニケーションを親密にする様々な機会を作ることも地域医療連携室の重要な役割です。
具体的には症例検討会の開催、定期連絡会の開催、時には、季節の催事(賀詞交換会や花見など)も地域医療連携室が企画し、医師同士がお互いの顔、名前を知りあう機会を多く作ること大切です。
個人的にはこの仕事が、地域医療連携室の最も重要な仕事であると思っています。
単なる宴会好きではありませんからね。誤解のないように。
紹介という行為は「人が人を人に紹介する」ということです。
この三者に信頼関係が成り立っていなければ成功しません。
皆さんは、どう思いますか?
次回は9月12日の更新予定です。
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