第9回 医療経営におけるマーケティングについて その2

事例紹介:愛知県 西三河北部医療圏
使用データ:西三河北部医療圏保健医療計画

今回は、無料で入手できるデータを駆使して、どこまで医療圏マーケティング(市場調査)ができるかチャレンジしてみます。

事例として、愛知県の西三河北部医療圏を取り上げます。この医療圏は、愛知県豊田市とみよし市の2市から成っています。
インターネットで「西三河北部医療圏保健計画」で検索すると、この計画書がヒットします。

この計画で把握できる情報は、地域の概況(地勢、交通、人口および人口動態、保健・医療施設)とがん、脳卒中、急性心筋梗塞(こうそく)、糖尿病、救急医療、災害医療などの機能別の対策などです。
ここで重要な情報は地域の概況です。本計画から読み取れる情報は以下のとおりです。

  1. 愛知県の北東部に位置しており、面積は950.58m2で、愛知県の18.4%を占める
  2. 気候は愛知県内の平野部に比較して寒冷
  3. 愛知県第一位の内陸工業地帯を形成。山間部は農業、林業などとの兼業が多い
  4. 圏内に七つのIC(インターチェンジ)があり、広域道路網が整備。鉄道もバス路線も充実
  5. 人口は485,084人(平成22年10月)。年少人口(74,864人)、生産年齢人口(328,429人)、老齢人口(78,309人)高齢化は進んでいる状況
  6. 出生率は10.2で、県と比較して0.5ポイント高い
  7. 平成21年の死亡数は2,674名(悪性新生物:867名、心疾患:353名、脳血管疾患:273名ほか)
  8. 病院:18施設、診療所:253施設、歯科診療所:181施設など(地図上のプロット図もあり)

たった一つ情報データからでもこれだけのことが分かります。
この得られた情報を分析、展開すると、有数の工業地帯であることから健診業務に需要がある可能性が高い。
交通網が発達していることから駐車場や駅からの距離などが集客力に比例する。
高齢化は進んでいるもののまだ生産年齢人口の比率が高い(出生率が比較的高いことから若い所帯が多いことが推測され裏付けられる)などのマーケティングに必要な情報がいくつか得られます。

使用データ:受療行動調査
次に患者の受療行動について調査します。
この調査は厚生労働省が3年に一度全国調査を実施しており厚生労働省のホームページにアップされています。
この調査では、患者が病院を選択する際に必要とした情報、実際に入手した情報やその情報源。外来受診であれば、待ち時間や診察時間、重複受診の状況。
入院患者であれば今後の治療や療養の希望などかなり詳細な調査項目が調べられています。

実際にこの調査結果を分析、展開するとリハビリの患者は、年齢階層が上がるほど高く、病院の規模が小さくなるほど割合は高くなります。
通院時間は30分未満が約70%ですが、病院の規模の大きな病院ほど通院時間が長くなります。外来待ち時間は1時間未満が約60%で、病院の規模が大きくなると待ち時間は長くなる傾向があります。
外来の診察時間は3分から10分未満が40%強。患者の満足度は、外来よりも入院のほうがやや高い。特に入院患者の評価が高かった部分は「看護師、医師等への相談のしやすさ」となり、不満の高かった部分は「食事の内容」となります。

このような調査結果から、自院の取り組む課題などが発見できます。
すなわち、規模の大きな病院の外来では、待ち時間対策が重要であり、入院施設を有している病院では食事が重要となります。
今回の事例に取り上げた西三河北部医療圏の特徴とあわせて考えると、外来患者を多く集めるには駐車場整備が重要であることが容易に推測できます。

さらにDPC病院であれば、同じく厚生労働省で調査している「医療施設調査」と自院の患者データを組み合わせて医療圏内の疾患別患者数の推計、自院の疾患別のシェア、自院のSWOT分析なども計算でき、かなり本格的なマーケティング調査内容になります。
参考)DPCデータ活用ブック じほう社

費用を掛けずにここまでできたら、十分だと思うのですが、皆さんはどう思いますか?

次回は8月22日の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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