第11回 紹介率を上げるには・・・

前回のコラムに、地域医療連携室の仕事について書きました。
地域医療連携室は、周りの開業医の先生方から患者を紹介してもらうための病院の営業部隊であると。

紹介患者が多くなったり少なくなったりすると、病院の経営指標の一つである紹介率という数字が上がり下がりします。
特に大病院では、この紹介率が一定の数値を超えていないと経済的なペナルティもあり、減収する可能性も出てきます。
そもそもは、医療機関の役割を分担して、それぞれの医療機関の機能を強化して、ひとりの患者をその地域で複数の医療機関で診ましょう。
かつ大病院の外来への患者集中を緩和しましょう。ということが発想の発端でした。

今回は紹介率を上げるためには、どのような対策を実行すればよいか書きたいと思います。

病院にとって紹介してほしい患者増とは、どのような患者でしょうか?開業医で診療することが多いプライマリケアの患者では少なくても違います。
紹介してほしい患者とは、自院の得意分野、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)でStar(花形)やCash Cow(金のなる木)であったり、SWOT分析でStrength(S)強みとOpportunity(O)機会のクロスする部分の疾患や診療科の患者のことを指します。

さらに厳密に収支分析を行うのであれば、疾患別原価計算において、利益率の大きな疾患という条件を加えるのもよいでしょう。
このような自院の得意分野の疾患群は、効率的な医療が提供でき、症例数が多いことから治癒率など医療成績もよい傾向にあります。

◆紹介率を上げるための その1
自院の得意分野の診療科を把握すること。
PPMやSWOT分析、疾患別原価計算などのデータできちんとしたエビデンスを持つこと。
シミュレーションも実施し、目標数値を設定することも重要です。

◆紹介率を上げるための その2
得意分野を自分たちだけ把握していても何にもなりません。
患者を紹介してくれる開業医の先生方にきちんと広報しなければ意味がありません。
連携ニュースなどの広報媒体や、病院見学会などを企画して直接見ていただくなどの活動が重要です。
いずれにしても開業医の先生方に安心してもらうということを念頭にいれるべきです。

◆紹介率を上げるための その3
紹介された患者の状況を紹介元にお知らせする仕組みを構築すること。
具体的には3回のタイミングの返書(1回目:紹介された患者が病院にいらした。という報告。
2回目:診察した結果や手術した結果の報告。
3回目:退院した。または患者を紹介元に戻す旨の連絡)紹介した開業医の先生は、「自分の患者」という認識を持っていることが多いです。
その自分の大事な患者がどうなっているのか?を逐次、適切なタイミング(転帰)で知らせてくれたらこれほど安心なことはないでしょう。
ましてや、最後は患者を自分に戻してくれるのですからいうこと無しです。

◆紹介率を上げるための その4
人は一方的に出すだけだと、損をした気分になってしまいます。
そのために病院が最初に開業医に患者を紹介する(逆紹介)ことから始めると非常によい結果になることが多いです。
逆紹介するには、病院側も開業医の先生について知っていなければ責任ある紹介はできません。
開業医の先生の専門分野、診療時間など一覧表を作ったりデータベース化したりすることが大事です。

◆紹介率を上げるための その5
初めて紹介しようか?というときに紹介相手のことを知っているのか否かが非常に重要です。
日ごろから症例検討会などに来て医師同士が知り合いになっておく機会を多く作ることで、顔を知っている先生が多くなり、紹介しやすくなります。
賀詞交換会や花見、暑気払いの会など宴席を設けると一気に先生同士の距離が近づくこともあります。
たまに宴席が苦手な先生もいますので、注意してください。

◆紹介率を上げるための その6
地域連携パスの活用。
最近は糖尿病パス、大腿骨骨折パス、脳卒中パスなど疾患別のクリニカルパスの作成、活用が活発に行われるようになりました。
このようなクリニカルパスは、病院と診療所だけではなく、リハビリ専門病院なども加わることが多いのでより複雑な患者紹介となります。
病院側の視点からですと自院が中心となり地域連携の形を構築することが重要です。
事務局的な業務もあり診療所で実施することは困難です。
病院以外の視点からは、その地域での自院の役割、立場をはっきりさせるということです。前述したリハビリ専門病院などは、これほどはっきりした役割はありませんよね。

◆紹介率を上げるための その7
紹介してくれる開業医の先生方から、常に意見を伺う謙虚な姿勢が重要です。
特に自院に対して批判的な意見を言ってくれる先生の発言内容には、より真摯(しんし)に耳を傾けることが大事です。
その意見こと自院を改善するきっかけになることが多いからです。
年に一度程度は満足度調査などアンケート意識調査などを実施するとよいでしょう。

◆紹介率を上げるための その8(番外編)
率を単に上げるのであれば、紹介患者以外の外来患者を減らせば紹介率は上がります。
実際紹介率を上げることを意識して、紹介状のない初診患者には自己負担金額を課す病院も非常に多いです。
しかし、これは数値を単に、もて遊んでいるに過ぎず、本来の目的とは違うのではないかと思います。

皆さんは、どう思いますか?

次回は10月10日の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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