第119回 災害医療の基本 二つの大震災からの学び

いつ起こるか想定ができない自然災害。医療界において、阪神・淡路大震災を教訓に、災害医療体制が構築されていきました。今回のコラムでは、現状の災害医療の基本と二つの大震災から得たものを整理したいと思います。

災害医療の基本 二つの大震災からの学び

2021年も、残り2カ月となりましたが、今年もさまざまな自然災害がありました。特に7月・8月の集中豪雨では、合わせて死者が35人となったほか、地震災害もありました。新型コロナウイルスの流行も一種の自然災害と呼べるかもしれません。さらにさかのぼってみると、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災もまだ記憶に新しいところではないでしょうか。

医療界において、1995年の阪神・淡路大震災を教訓に災害医療体制が構築されていきました。阪神・淡路大震災を教訓に構築された災害医療体制でしたが、東日本大震災の時に活かされたかというと、活かされた部分と活かされず、新たな課題が生まれたのが現実でした。
今回のコラムでは、現状の災害医療の基本と二つの大震災から得たものを整理したいと思います。

阪神・淡路大震災を教訓に生まれた災害医療体制

阪神・淡路大震災では、6,433人が死亡し、そのうち約500人が災害死であったと報告されています。原因は四つに区分されています。

  1. 被災地で中心的な役割を担う災害医療に長(た)けた病院がなかった
  2. 被災現場で急性期に活動する医療チームがなかった
  3. 重症患者の後方搬送、被災地外への搬送が行われなかった
  4. 病院間あるいは、病院と行政を結ぶ情報システムがなかった

この四つの反省点を踏まえて、国は災害時に中心的な役割を担う災害拠点病院を指定・整備し、超急性期から活動する医療チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)を創設しました。後方搬送が行われなかったことについては、広域医療搬送計画を策定し、情報システムとして広域災害救急医療情報システム(EMIS)を作り上げました。

東日本大震災での災害医療

東日本大震災の時は、DMATをはじめ、日本赤十字社、国立病院機構、日本医師会災害医療チーム(JMAT)、大学病院、日本看護協会、全日本病院会、その他非常に多くの医療関係団体から派遣されました。派遣数は、2,589チーム、実に1万人以上の医療関係者が被災地で医療に従事しました。阪神・淡路大震災の時と比べると隔世の感があります。

被災4県(岩手県、宮城県、福島県、茨城県)に、44カ所の災害拠点病院がありましたが、42病院で施設一部が損壊しており、診療制限をせざるを得ない状況でした。しかし、診療機能停止にいたった病院は1件もありませんでした。災害拠点病院にDMATが医療支援に入り、重症患者を受け入れ、後方搬送するという阪神・淡路大震災の時にはできなかった災害急性期対応が可能となりました。

その一方で、地震津波被害が甚大であったため、阪神・淡路大震災の時にはなかった新たな医療ニーズが出現しました。厚生労働省作成の「災害医療等の在り方に関する検討会」での報告書にその内容が記載されています。以下に報告書で指摘された課題を記載します。

DMATについての課題

  • 活動内容、慢性期疾患への対応が必要であった
  • 活動期間、医療救護班への引き継ぎにギャップが生じた
  • 通信機器、インターネット接続が不可能なチームがあった
  • 指揮調整機能、業務量が膨大となったが、総括DMATの交代要員、サポート要員がいなかった
  • 前線のDMATを後方支援するシステムがなかった
  • DMATの移動手段がなく、活動が制限された

災害拠点病院についての課題

  • 耐震性の低い建物を有している病院があった
  • ライフラインの途絶期間が長くなり、備蓄燃料が不足した
  • 震災翌日まで連絡が取れない病院があった
  • 道路の寸断・孤立化により、医薬品だけでなく、食料も枯渇した
  • 敷地外のヘリポートは不便で、非効率的であった
  • DMATや医療救護班を受け入れる準備ができていなかった
  • 地域での体制づくり、訓練が不十分であった

さまざまな災害に備えた医療対応スキル

災害に同じものはないといわれるとおり、災害時の医療ニーズに関しても二つの大震災を比較すれば大きく異なるということも理解できます。
東日本大震災では津波被害が大きかったですが、仮に首都圏直下型地震が起きれば、阪神・淡路大震災に似た状況になる可能性が高いと考えられます。また、南海トラフ地震を想定すると東日本大震災の時のような災害医療ニーズになることが考えられます。

現在、全ての病院で事業継続計画(BCP)を含んだ病院災害対策マニュアルの改訂が進んでいる中で、おのおのの病院でいかに患者を守るかという知識、スキルを向上させておく必要を強く感じます。さらに災害対応マニュアルに関してはあらゆるタイプの災害を想定したマニュアルであるべきだと考えます。

皆さんは、どう思いますか?

次回は12月8日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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