第120回 基本方針から2022年度診療報酬改定を読み解く

2022年度診療報酬改定を迎える時期となりました。例年よりも少し早いタイミングで基本方針が公になりましたので、2022年度診療報改定基本方針の内容から、診療報酬改定を読み解いてみます。

基本方針から2022年度診療報酬改定を読み解く

2021年は、2020年に引き続き「新型コロナウイルス」に医療業界は振り回されました。そのような状況の中、2022年度診療報酬改定を迎える時期となりました。例年よりも少し早いタイミングで基本方針が公になりましたので、2022年度診療報改定基本方針の内容から、診療報酬改定を読み解いてみます。

まず今までの基本方針と大きく異なる点は、重点課題が二つあることです。「新型コロナウイルス対策」と「勤務環境の改善」という二つの重点課題があります。これは、新型コロナウイルス対策という重点課題がイレギュラー的な重点改題 と認識できます。従って、重点課題が2点になったといって大きな意味は持ちません。

基本方針1

(1)新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療体制の構築【重点課題】

【具体的方向性の例】

  • 当面、継続的な対応が見込まれる新型コロナウイルス感染症への対応
  • 医療計画の見直しも念頭に新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築に向けた取組
  • 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
  • 外来医療の機能分化等
  • かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価
  • 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
  • 地域包括ケアシステムの推進のための取組

新型コロナウイルス対策は、今後も継続的に対応が必要であり、医療計画に「感染症対策」を追加される方向です。5疾病に「感染症」が追加され、具体的な対応医療機関も今後、徐々に明らかにあると考えられます。入院については機能別の評価を行うとあり、自院の機能をより明確にする必要があります。外来は機能分化を「改定」や「法改正」を使って促進するように誘導してくるかと思われます。かかりつけ医の評価については外来機能の評価の一つです。在宅医療と訪問看護について今までは、取り組み自体を評価していましたが、さらに取り組むだけではなく、取り組んだ結果に「高い質」を求めてきました。在宅医療や訪問看護を実施した結果のアウトカム(結果)による診療点数の高低などが導入される可能性があります。

基本方針2

(2)安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進【重点課題】

【具体的方向性の例】

  • 医療従事者が高い専門性を発揮できる勤務環境の改善に向けての取組の評価
  • 地域医療の確保を図る観点から早急に対応が必要な救急医療体制等の確保
  • 令和3年11月に閣議決定された経済対策を踏まえ、看護の現場で働く方々の収入の引上げ等に係る必要な対策について検討するとともに、負担軽減に資する取組を推進
  • 業務の効率化に資するICTの利活用の推進

勤務環境の改善はすなわち、「医師の働き方改革」を意味します。2024年4月から医師の働き方改革について、評価センターでの評価が開始される予定ですので、今から準備をしておきなさいという警告的な意味もあるかと思われます。岸田総理が発言した看護師の収入アップがこの視点に入っています。負担軽減の手法としては、タスクシェア、タスクシフティングがあり、職種でいうと、特定看護師や医師事務作業補助者の点数上の評価が上がる可能性があります。ICTに関しては、今まで「データを提出」することで点数上の評価がついていましたが、今後はデータを提出して当たり前であり、提出できなかったらペナルティーがあるという逆の評価になる可能性があります。

基本方針3

(3)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現

【具体的方向性の例】

  • 患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価や医薬品の安定供給の確保等
  • 医療におけるICTの利活用・デジタル化への対応
  • アウトカムにも着目した評価の推進
  • 重点的な対応が求められる分野について、国民の安心・安全を確保する観点からの適切な評価
  • 口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進
  • 薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価、薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進、病棟薬剤師業務の評価

ICTは前述のとおりです。アウトカム評価も、前述の内容を含めてその範囲を広げる可能性があります。口腔(こうくう)疾患重症化予防が医科領域の重症化予防にもつながるというエビデンスから医科歯科連携を今後も推進していく方向です。何らかの新しい点数が設定されるか従来の点数がアップされるか、いずれにしても医科歯科連携の取り組み自体に評価が付きそうです。また、病棟薬剤師がさらに評価されそうです。点数のアップや算定基準の緩和などが考えられます。調剤薬局に関しては、前回の改定と同様に対物サービスから対人サービスに評価の重点は移ってきています。薬局はこの流れに乗り遅れないことが肝要です。

基本方針4

(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

【具体的方向性の例】

  • 後発医薬品やバイオ後続品の使用促進
  • 費用対効果評価制度の活用
  • 市場実勢価格を踏まえた適正な評価等
  • 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価(再掲)
  • 外来医療の機能分化等(再掲)
  • 重症化予防の取組の推進
  • 医師・病棟薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進
  • 効率性等に応じた薬局の評価の推進

この視点は、いつもどおりです。ジェネリックの推進、市場実勢価格の評価は検査点数のことです。重症化予防とは生活習慣病対策のことです。この役割は開業医などのかかりつけ医の評価になりそうです。医薬品の適正使用は、ポリファーマシーの促進を意味しますので、医療機関での入院時の指導に加え、外来での減薬や調剤薬局での指導などに点数としての評価が付くかもしれません。

皆さんは、どう思いますか?

株式会社FMCAでは、2022年度診療報改定の解説講師を派遣いたします。お気軽にご相談ください。

連絡先メールアドレス:fujiimca@gmail.com

次回は1月12日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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