第140回 診療報酬(レセプト)を使ったファクタリング(資金緊急融資)

医療機関を経営していると資金の融資が必要になるケースがあります。そのような場合に、「診療報酬(レセプト)を用いたファクタリング」という手法を利用できます。この手法のメリット・デメリットなどを説明します。

診療報酬(レセプト)を使ったファクタリング(資金緊急融資)

(医療機関を)経営していると資金の融資が必要になるケースがあります。例えば、医療機器の入れ替えや新規購入などの際です。定期的に医療機器などを設備投資しないと患者が離れていってしまったり、受診先として選択してもらえなかったりします。さらに建物の老朽化の改築などは非常に高額な資金が必要となります。通常は建物の改築や建て替えは中長期計画を立て、自己資金を蓄えて不足分を金融機関などからの資金融資で賄います。

このような計画的な支出に関しては、あらかじめ準備をすることも可能ですが、長年経営を続けていると、思わぬ支出を強いられることもよくあります。急な医療機器の故障、自然災害などによる建物の被害などです。これらに加えてコロナ関連の融資の返済も始まります。しかし、コロナ前のような状況に戻ってきているわけではなく、医療機関の経営状況は厳しさを増すばかりです。

新たな資金融資が必要になる状況もあります。通常、金融機関に資金融資を申し込んだ際には、財務諸表などによる経営状況の確認や、事業計画書などによる資金の使用用途などが金融機関によって審査されます。提出書類の準備はもちろんですが、審査にも相当時間がかかるケースもあります。しかも審査の結果、融資申請額の満額が認められなかったり、融資そのものが断られたりすることもあります。時間的な猶予があれば次の融資先へ相談に行くなどすることもできますが、時間的な猶予がない場合はどうすればよいでしょうか。

そのような場合に、「診療報酬(レセプト)を用いたファクタリング」という手法があります。資金融資の第一選択肢ではありませんし、安易に手を出す手法ではありませんが、医療機関の経営者は、緊急的、避難的な資金融資の手法としては知っておいたよい手法です。

診療報酬(レセプト)を利用したファクタリング(緊急資金融資)

医療機関は診療報酬という収入を得ますが、患者を診察した時点から、医療機関が実際に収入を得るのは(レセプトの内容の審査などがあるため)2カ月後になります。この2カ月後に入ってくる診療報酬(レセプト)を担保にして、2カ月より前に資金を融資してもらうのが、診療報酬(レセプト)を利用したファクタリング(緊急資金融資)です。例えば、2カ月後に入金される金額を1カ月早く入金されるというイメージです。

ファクタリング会社による事前審査はありますが、スピーディーに融資することが最大のメリットです。事前審査は今までの診療報酬(レセプト)を審査しますので、審査書類の準備に時間がかかることもありません。

医療機関がファクタリングを利用しない方が良いケース

  1. 医療機関に十分な現金がある場合、資金繰りに余裕がある場合はファクタリングを利用する必要はありません。ファクタリング以外の資金調達方法を検討すべきです。
  2. 医療機関への支払い遅延や滞納のリスクが小さく、診療報酬の回収がスムーズであればファクタリングの利用は必要ありません。無駄なコストや手間がかかるだけです。
  3. ファクタリングにはコストがかかります。事前の契約内容を確認し、そのコストが高い場合、ファクタリング以外の資金調達の手法を検討すべきです。

ファクタリング利用の注意

  1. ファクタリング会社の信頼性を確認する
    特に医療機関との取引実績があるかどうかを確認します。場合によってはファクタリング会社の関係会社も確認します。
  2. 契約条件を十分に理解する
    契約書など契約条件を十分に理解し、手数料、金利、回収業務の範囲、リスクなどを詳細な点まで理解しておくことが必要です。理解できるまで何度でもファクタリング会社に質問しましょう。相手が面倒くさがるような態度や言動が見られたら、そのファクタリング会社とは契約しない方が賢明だと考えます。
  3. ファクタリング自体を十分に理解する
    特に診療報酬(レセプト)の受け取り権利が移動することを十分に理解しましょう。その影響や考えられる制約などを理解し、経営に支障が出ないようにします。
  4. メリットとデメリットとのバランスに注意する
    ファクタリングに限らず、資金調達の多くに手数料や金利が発生します。このようなコストは利益を減少させる要素でもあります。ファクタリングを利用する前にメリットとデメリットとのバランスをよく考えましょう。

ファクタリングは緊急的な資金融資の手法です。メリットもデメリットもあります。信頼できるファクタリング会社と契約することがもっとも重要です。

皆さんはどう思いますか?

  • * 医療機関のファクタリングに関してのご相談、お問い合わせ先
    【株式会社FMCA】fujiimca@gmail.com

次回は9月13日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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