第13回 いざ(医療過誤)と言う時 どうしますか?

医療事故や医療過誤の報道など今では珍しくなくなりましたが、医療関係者自身は明日にも我が身に起こり得ることと認識して準備していることは、あまり聞いたことがありません。
今回はある日突然、医療事故、医療過誤の当事者になってしまった場合の影響やその対応などをお話しします。

初めに医療事故、医療過誤の定義ですが、医療事故は、「医療に関する事故」であり、医療過誤は「医療事故の一類型であり、医療従事者が医療の遂行において、医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為」(厚生労働省リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成委員会 リスクマネージメント作成指針)と定義され、どちらの語句も医療事故ということです。
注意しなければいけないことは、医療ミスが明らかになって初めて医療過誤であるということです。マスコミを含めて混同している場合が多いようです。

次に医療事故が発生した場合の医療機関の影響を考えます。特にマスメディアにより公になった場合の最大の影響は、患者の減少です。特にインターネットなどが普及した現代においては、患者は敏感に反応します。
当然患者減少による減収も避けられないでしょう。証拠保全のため、カルテなどの関係書類も押収されますので、レセプトの提出も困難になる可能性もあります。
影響はこれだけではありません。事務員や看護師は患者や患者家族から説明を求められることになり、説明する時間も労力も要します。

さらに、職員の動揺による影響も考えなければいけません。
マスコミによる報道の翌日から、院内には多くのマスコミ関係者が取材にやってきます。
職員に対して、マスコミへの対応指示を含む適切な説明を行わないと、マスコミの心証も悪くなります。さらに時として事実とは異なるうわさ話として、枝葉も付きかねません。
また、医療事故が公になる際のきっかけの多くは、職員によるリークであることが多く、詮索する職員や犯人捜しをする職員なども現れます。

マスメディア対応
以前、ある大学病院での医療事故の記者会見の様子をテレビで見たことがあります。
大学関係者が4,5名で会見していました。
会見の最後に大学関係者が起立し頭を下げたのに左端の一名だけは、席から立ち上がらずそのままでした。
「おや?」と思いましたが、案の定、翌日の新聞やテレビは事故の内容うんぬんよりも頭を下げなかった先生の態度に疑問を呈する論調に終始しました。
この大学病院では、外来患者が以前の数に戻るのに数か月かかったと記憶しています。

また、別の病院では酸素タンクのトラブルがあり、そのトラブル発生時間帯に人工呼吸装置を使用している患者が亡くなりました。(その時点で)因果関係は不明でしたが、警察への報告、翌日には記者会見による説明を実施しました。(その後、酸素タンクのトラブルと患者死亡は関係ないことが明らかになりました)
この病院では患者の減少は皆無でした。

この二つの事例からマスメディアへの対応が重要であることが分かります。
医療関係者の多くはマスメディアの対応に慣れている方はそれほど多くはないと思います。
相手は医療の素人ですから、分かりやすい言葉で、事実を包み隠さず、真摯な態度で接することがポイントです。
時間があれば記者会見のリハーサルを行い、想定質問に対する回答も準備しておくとよいでしょう。
その際には姿勢(堂々と)、口調(はっきりと)、目線(質問者を見る)、声のトーン(やや低め)などもチェックしておきましょう。

記者会見などのマスメディア対応が明らかになれば、少なくとも前述したようなマスコミ関係者が院内を取材することはなくなります。

医療事故などは起こらないことが一番ですが、絶対とは言い切れません。
病院では様々な医療のリスクに関して、インシデントを含めて対策を考えていますが、いざ発生してしまった後の対処方法まで、考えている病院は少ないようです。
患者に対して、職員に対して、マスコミに対してなど相手を想定した対応策を日ごろから考え、準備しておくこともリスクマネジメントです。

皆さんは、どう思いますか?

次回は12月12日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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