第69回 グループ経営のマネジメント

今回は多機能な施設を複数経営している法人のマネジメントについてお話しします。

グループ経営のマネジメント

最近の医療界の話題の一つに「地域医療連携推進法人」の創設があります。これは複数の医療法人等が自分たちの法人の上に、統括するこの地域医療連携推進法人を新たに設立し、より大きな組織として経営していくもので、直近の医療法改正によって、2017年4月から始まったものです。このような法人形態のみならず、相変わらず資金が潤沢な法人はM&Aが活発ですし、医療法人が医療機関の経営のほかに、訪問看護ステーション、サテライトクリニック、老健などさまざまな関連事業を営んでいることが多くなってきました。一種の多角経営ですが、その要因の一つに、医療機関経営の難しさがあります。2年に一度の診療報酬改定もあり、自分たちで自分たちの(医療)サービスに値段を付けられず、診療点数という公定価格で縛られていますので、どのような素晴らしい付加価値を付けても、得られる収入(診療点数)は変わりません。そこで、医療に関連するさまざまな事業を起こすことで、経営のリスクを低減させるわけです。さらにこのような関連事業を同一法人内で経営すれば、患者の囲い込みにも活用できます。

組織が大きくなり、支社や支店が多くなってくると、そのマネジメントが重要になってきます。医療においても同様です。今まで、病院という一つの建物の中でさまざまな出来事が生じ、それを解決していればよかったのですが、例えばサテライトクリニックを一カ所開設したとたん、病院の院長の目の届かない場所ができてしまうことになります。対応が一歩も二歩も遅れてしまいます。今回はそのような多機能な施設を複数経営している法人のマネジメントについてお話しします。

病院のグループ経営は、職員(人)の異動、資金、各種商取引、医業活動分野の分担などを行いながら実施していきます。財務会計上の連結決算会計は、今後の課題としますが、管理会計においては、グループ経営におけるモニタリングを確立する必要があります。モニタリングとは、内部統制が有効に機能しているかどうかを継続的に評価するプロセスです。例えば、診療材料の入出庫は正確に記録しなければなりませんが、たとえシステムを導入していても人為的な入力ミスなどは発生します。このミスは、「月初在庫数量+当月入庫数量=月末在庫数量」という簡単な計算式の関係を応用することでミスを発見できます。つまり入力数値が正しければ、在庫システムから出力された月末在庫数量は、月末に実際に保管してある現物の数量と一致するはずです。この確認作業を毎月実施照合することで、日常の定常業務である入出庫の内部統制が有効に機能しているかどうかをチェックできます。これがモニタリングです。

モニタリング事項例

1. 計画や予算と実績の数値比較

収益計画や、費用予算計画の数値と、実績数値との比較を行います。計画していた利益が達成できたかどうか。計画を達成した場合も、達成しなかった場合も両方要因分析は必要です。特に計画未達成だった場合、要因分析に加え、対応策の立案も行わなければなりません。医療は年間を通して、特徴的なトレンド(インフルエンザの流行や、秋から冬にかけて梗塞関連の発症が多くなるなど)がありますので、過去の実績とも比較することもケースによっては必要になります。

2. グループ内でのポジショニング

医業収益、利益、利益率などを確認しながらグループ内で、その組織での各施設のポジショニングや役割を総合的に評価します。グループ内におけるポジショニングや役割を忘れ、自施設だけの収益や利益などの数値目標だけを追っていくとグループ全体の不利益にも繋がりかねませんので、注意が必要です。各施設のトップの方がたへ意思疎通、コミュニケーションを密にとることが重要です。

3. 組織統制環境や外部環境の調査分析

仮に組織の業績が悪化した場合、その悪化した原因が統制環境によるものなのか、外部環境によるものなのか調査を行いハッキリさせておくことが大事です。原因が統制環境によるものであれば、すみやかに修正、対応します。外部環境によるものであれば、中長期計画にも影響を与える可能性がありますので、慎重に、しかしスピーディーに対応策を練ることになります。

4. 支援体制の準備

グループ内での支援体制として、人事、資金などが考えられます。特に医療においては有資格者の人数が収益に直結することもあるので、グループ内での人事支援体制の構築、準備は不可欠です。資金面の支援については、M&Aを実施した際によく表面化する問題です。この場合は、グループに入ったとしても、無計画に、また事前調査を不十分のまま、言われた金額を融資することは絶対に行ってはなりません。

5. グループ内再編

グループ経営の目的は、グループ全体の価値を高めることにあります。そのなかにおいて、業績が悪く、考えられる改善は実施したものの、回復の見込みがない場合は、閉鎖、譲渡などの厳しい対応策も考えなければいけません。医学と同様に出血は早く止めることが重要です。

決算体制の構築

年次決算は、事業年度ごとに財務諸表を作成し、税務署に申告書と共に提出されます。グループ経営のマネジメントを行うのであれば、決算を月次、日次というタイミングで経営に活用できるようにしたいです。月次決算においては、多くの施設で実施済みだと思われます。月次で確認したいことは、診療科単位であることが多いので、収益はもちろん、医薬品費や診療材料費、人件費などの科目の数値を診療科単位で把握できる仕組みを整えることを推奨します。
月次決算をさらに進化させると日次決算となります。月次決算の場合は、年次決算と同レベルの制度が要求されますが、日次決算の場合、全ての費用を集計することは困難ですので、医業収益に関係ある費用(変動費)だけでも集計できる体制としたいです。医薬品費などは実際原価で計上しようとすると日次決算は行えないので、予定原価を用います。月次決算は既存の財務会計システムで対応可能ですが、日次決算の場合は、予定原価を組み込むことが必要になるため、既存のシステムとは別のシステム開発が必要になります。費用の面などから日次決算が難しい場合、月次決算を月の途中で仮締めすることは可能かどうかを検討してください。月の途中で傾向だけでも捉えられ、即対応を行うことができれば、経営に大いに役立ちます。

なお、決算は金銭的数値が主ですが、医療における決算資料には、非金銭的数値(患者数、平均在院日数、病床稼働率など)も非常に重要な経営指標です。

皆さんは、どう思いますか?

次回は9月13日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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