第29回 プレゼンテーションスキル

コンサルティングという仕事柄、プレゼンテーションの場面を非常に多く経験しています。
コンサルティングは、現状調査、内容分析、提案などの一連の流れの中で、説明し、納得、共感して頂き、クライアントの方々と一緒に良い方向に向かっていくことを目的、目標にしていますので、コンサルティングとして、プレゼンテーションは非常に重要なスキルの一つです。
医療機関の中でも職員によるプレゼンテーションの場面は多くあります。
大げさなプレゼンテーションでなくても、決裁権限者である院長に説明、理解、納得をして頂き、承認をして頂くということは日々の業務の中でも当たり前かもしれません。
しかし、必要性や問題点の説明など上手でない方々も多く見受けられます。
せっかく良いアイデアや解決策を持っていても決裁権限者にうまく説明できないために理解が得られないケースも数多く見てきましたし、相談を受けることも多くあります。
そこで、今回はプレゼンテーションの基本的なスキルをご紹介したいと思います。
特に管理職の方々は中間管理職として必要なスキルの一つであると認識してください。

最初に、誰に対してプレゼンテーションを実施するかを考えます。
プレゼンテーションとは聞き手(プレゼンの相手)のニーズや立場、性格や人格、またプレゼンテーションのテーマに関してどの程度の知識を持っているのかなどを考慮に入れ、説明内容や資料、プレゼンテーションに行くタイミングなどが変わるためです。
さらにトップからの指示に対する返答的なプレゼンテーションなのか、ボトムアップ的なプレゼンテーションなのかということも考えなければいけません。
すなわち指示に対する回答的な内容であれば、時間的な猶予はそれほど無いはずです。
むしろ速やかに実行しなければなりません。
ボトムアップ的な内容であれば時間的な制限はそれほどありませんが、プレゼンの相手の興味がどこにあるのかが重要になります。
収益アップにあるのか?コスト削減にあるのか?などが想定されますが、興味があるテーマに関しては事前知識も豊富だと思います。
また質問も多岐に及ぶ可能性も高い筈です。
そのようなことを考えに入れ資料などを作成しないといけません。
何より聞き手が、どのようなことに興味を持っているか、関心を持っているかを日ごろから知っておく必要があります。

次にプレゼンテーションの目的を予め決めておきます。プレゼンテーションの一般的な構成は、「目的」、「メッセージ」、「メッセージの裏付け」の三つに大別されます。
よって最初にプレゼンの目的を定義づけします。
通常、聞き手が少人数であれば、聞き手の目的とプレゼンの目的が一致することも多いのですが、聞き手が不特定多数(多職種課長以上の会議体等)の場合は聞き手の目的もバラバラです。
そのような場合は、聞き手の中でもコアなメンバーに焦点を絞ったり、最大公約数的な目的を把握するなどをして、プレゼンテーションの目的を決定します。
さらに同時に今回のプレゼンテーションでどこまでを成功させるかの「獲得目標」を決めておくことも重要です。
この獲得目標を決めておかないとプレゼンテーションを実施すること自体が目的になってしまうこともあります。
内容を理解してもらう。承認をもらうなどの具体的な獲得目標を決めておくことを必ずしましょう。

プレゼンテーションの目的や獲得目標が決定したら、今度はその目的を満たすキーになるメッセージを考えます。
一般的にメッセージは簡潔明瞭なものが好まれ、早く、正しく理解してもらうことにつながります。
プレゼンテーションの内容によっては、キーになるメッセージが結論や結果であることもあるでしょう。
プレゼンテーションの本質はこのメッセージを聞き手に効果的に伝えるということです。
これが不明瞭だとプレゼン自体行う意味自体無くなります。逆にメッセージが効果的に伝わった場合、聞き手の記憶に残りやすく、当初の目的を達成しやすくなります。
なお、プレゼンテーションは限られた時間の中で行うことが多く、聞き手も非常に多忙な方が多いので、キーになるメッセージを効果的に伝えるためにテクニックを駆使することになります。
初歩的なテクニックとしてはメッセージや結論などをプレゼンの最初に持ってくることです。最も伝えたいことを最初に持ってくることで聞き手の理解を促進させる効果があり、多忙な人ほどプレゼンの最初の部分で、聞く価値があるかどうかを判断しています。
しかし逆に結論を最後に持っていくことが効果的な場合もあります。
教育目的などがテーマの場合が該当します。
プレゼンの途中でまとめたり、一番最後に復習のような形でまとめたりする形式を用いることが効果的と言われています。
いずれにしても聞き手の立場になって考えることが重要です。

提示したメッセージの妥当性や合理性を聞き手に納得してもらうために、様々な数字、調査結果、事例などをグラフして内容を分析した結果であったり、あるいは引用と言う場合もあると思いますが、どのような形態であれ、それらがキーになるメッセージを倫理的に裏付けるものでなければなりません。
ここでこの裏付けデータが倫理的でなかったりすると全ての内容に疑義が及ぶこともあります。しかし、かといってデータやグラフなどを過度に使用すると聞き手を混乱させ、メッセージが不明確になることもあるので注意が必要です。
どの程度の内容にするかは、聞き手の事前の知識レベルや持ち時間などを勘案して決めると良いでしょう。
どうしても使用したい資料などがあれば添付資料として準備して、プレゼントは切り離して、別の機会に説明するなどにしましょう。

目的が決まり、メッセージが決まり、裏付け資料が準備出来たら、どの順番で説明するかを考えます。
これを一般的にストーリーボードと言います。このストーリーボードが無いとプレゼンは単なるデータや情報の羅列になってしまいます。
またプレゼンする側がチームの場合、事前準備をチーム内でコンセンサスを得ることにストーリーボードが役立つこともあり、さらに作業を分担することにも役立ったりします。

最近のプレゼンはパワーポイントなどを使用することが多いと思いますが、時間的な猶予が無い場合もありますので、どのような形式でプレゼンするかも考えておきましょう。
プレゼンの資料は、できれば時間的に余裕を持って作成し、時間を置いて見直したり、ロールプレイングを実施してから本番に臨む方が良いでしょう。
私自身は、必ず資料を一晩寝かせます。
作成翌日に資料を見直すことで、作成時に気づかなかった点や改善点が見つかることが多いからです。

効果的なプレゼンテーションを行うには、多少テクニックが必要です。具体的には、

1、聞き手へのアイコンタクトを活用する。スクリーンや資料ばかりに話しかけないということです。
  聞き手が多数の場合は、視線をN字型に目配せすると効果的です。最初に会場左手前に視線を送り、5秒間視線を固定します。
  次に会場左奥に視線を移し5秒間固定、右手前に5秒間、右奥に5秒間といった具合です。
  会場にいる聞き手から見るとまるで自分に対してプレゼンをしているように錯覚するようです。

2、聞き手に対して過度なスマイルはしない。真剣な議論やテーマだったり、場合によってはネガティブな問題の場合もありますので、注意しましょう。

3、(無理かもしれませんが)緊張せず、リラックスした体勢でプレゼンをしましょう。とは言ってもルーズな態度は禁物です。

4、内容によって声のトーンに強弱をつけましょう。一連の説明内容の中に特に重要と思われる箇所は声のトーンを強めますが、その箇所の手前を弱いトーンで説明すると重要箇所がより引き立ちます。

5、これは、ある程度経験を積むことが必要ですが、聞き手に合わせてプレゼンをするということです。
  聞き手が今、どのように感じているのかを瞬時に読み取り、臨機応変に聞き手に合わせるという少し高等テクニックです。

プレゼンテーションの最後は質疑応答です。聞き手の理解度を確認することもできます。獲得目標に対するクロージングの時間に充てることもできます。必要があればプレゼンが終わった後もフォローをしましょう。

医療機関の皆さんもプレゼンテーションを上手に活用するとさらに活躍できる場面が広がり、自分自身の評価にもつながります。是非プレゼン上手になってください。

皆さんは、どう思いますか?

次回は5月14日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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