第31回 人材管理は難しい?その2

人的資源を活用するとは、人材の能力、可能性の把握と有効的活用です。
具体的には人事考課、処遇や報酬体系、有給休暇や福利厚生などの仕組みなどとなります。
注意点としては、公平、公正なシステム、仕組みであるということです。

人的資源の測定や評価の領域は、人物評価、職務評価、組織評価に分類することができます。
このうち人物評価については、知能や気質、性格といった個人の潜在的資質の部分と職務遂行に際して必要となる資格、知能、スキル、経験などの部分になります。
そして、顕在化された結果としての業績といった部分に分類されます。潜在的な部分については、基礎的な特性のために人事考課の対象とはなりにくいものです。
2番目の能力や行動特性については行動観察による評価などで人事考課の対象となる場合が多いです。
最後の業績については、特にあらかじめ設定しておいた目標と連動しながら人事考課の対象として活用されます。
なお、業績評価の妥当性を担保するために、上司、同僚、部下などの複数の評価者による多面的観察評価が行われる場合もあります。

人事考課の定義とは何でしょうか?定義は様々ですが、適切な人事管理を行う上で「従業員のいまの状態を知り、評価し、それに基づいた育成対策を立案し実行する」ための管理機能ではないでしょうか。
つまり、人事考課は「測定」するものではなく、『評定』するということから、科学的に標準化された客観的アプローチというよりは、主観的アプローチであるということです。
実務の現場で実践される人事考課の妥当性は理論的枠組みより、感覚的な枠組みであり、ゆえに納得性、透明性が重要となるのです。

■職能資格制度
職能資格制度は、職務遂行能力のレベルに応じて、職能資格等級を設定する人事制度です。
各従業員に対して、それぞれの職務遂行能力に応じた等級が与えられ、その等級に応じた考課が与えられ、処遇されます。
この能力は修得要件と習熟要件に分けられています。
修得要件は知識やスキルなど勉強することで得られる能力のことです。習熟要件とは、仕事をしながら企画力や指導力を習熟していくことです。
この職能資格制度では、成績、情意、能力の三つの考課要素を中心として人事考課が行われます。
成績考課は一定の期間内(評価する対象期間)に仕事の目標をどこまで達成したか、どれだけ成果物を得たかによって考課されます。
情意効果とは、組織の一員としての自覚、意欲などを考課するもので、仕事の取り組み姿勢などから評価されます。
また能力考課は、修得要件および習熟要件をどれだけ身に付けたかで考課されます。

■目標管理と人事考課の課題
人事考課は、組織としての人材評価の基準を示すことになります。
組織の持っている人材観を明確にする必要があります。
つまり、目に見える業績のみ(結果のみ)を評価するのか、結果に至るプロセスも含んで評価するのかなど従業員をどのように評価し、活用しようとしているのかを示すことになるのです。
成果主義的要素を強めるならば業績中心、結果重視ということになります。
能力主義的要素を強めるならば、能力やプロセスも含めた評価ということになります。
いずれの場合にも考慮する視点として、人材育成の観点を外してはいけません。
人事育成に繋がる人事考課でなければいけないのです。
目標管理制度は、人事考課を実施する前提として、目標設定が重要となりますが、目標は通常、面接を通じて上司と部下が話し合って決定します。
面接では、部下の持つスキルや知識、態度などに対し、全体目標、部門目標、科や課といったチーム単位の目標という観点から、重点的取り組み課題や部下の育成にとって重要な業務を目標として設定し、その達成に向けた動機づけを行います。人事考課の段階では、設定された目標がどこまで達成できたのかという業績評価と、その業績を達成するためにどのような努力や取り組みを行ってきたのかという行動評価の二つの側面から人事考課を行います。

目標管理制度の陥りがちな失敗事例をご紹介します。
一つは目標を達成することを優先しすぎて、目標自体のレベルを下げてしまうということ。
もう一つは業績の向上や目標の遂行とはかけ離れた目標を設定しまうことです。
そして、最も大きな課題は、収益など数値や業績などと直結しないバックアップ部門の目標設定が難しいという点です。
しかし各現場の工夫次第で目標設定は可能です。
業務改善の目標、処理能力の向上、業務の効率化など様々な目標設定は可能です。

■業績評価
人事考課には公平、公正が必要と前述しました。
なるべく不明確さを排除することが重要です。
さらに目標設定の時点で評価基準を明確にすることで人事考課の納得性が高まります。
どこまで達成したらAなのか、どこまでならBなのかといった具合です。
達成度はできるだけ定量化しておくと評価の透明性が高まります。
しかし定量化できない場合もあります。
そのような場合には、明確な状態を示したり、期日を明確にしたりするなど、できるだけ上司、部下で同じ理解のうえで評価基準を設定しておくことが望ましいです。

■行動評価
目標達成の結果を評価する業績評価に対し、そこに至るプロセスにおいてどのように考え、準備、行動したのかといった視点で取り組み度合いを評価するのが行動評価です。
これは、情意面や能力の発揮度といった側面で評価が行われるケースがほとんどです。
例えば指導力、企画力、判断力、折衝力などの評価項目を設定し、評価を行うといった方法が採られます。
この評価項目がアバウトなので評価結果がばらつく可能性が高いです。
また、これらの行動を評価しただけでは、どうすれば能力や行動が身につくのか といった根本的な問題が解決されません。
そこで、行動評価の納得性や透明性を高める手法の一つとして、コンピテンシーを活用することがあります。
コンピテンシーとは「ある特定の職種や職務や状況に対して、卓越した成果、業績を生むことができる個人的な特性」を意味します。
具体的には、特定の職種、職務、ポストで高い業績を生み出している優秀な人材を選び、彼らの行動特性に共通する要素をコンピテンシー項目として抽出します。
面接において、このコンピテンシー項目が実行されていたかどうかを評価し、指導することで、人材育成につなげるといった具合です。

■評価者
人事考課を人的資源活用につなげるためには、評価を行う評価者のスキルや役割が重要です。
人事考課だけではなく、日常の業務を通じて個々の部下に指導したり、育成したりという管理者本来の役割を果たす必要があります。
また評価結果は的確にフィードバックし、フォローする能力も求められます。
評価自体は厳格に実施されるべきですが、従業員個々の納得感が必要です。
そのためにも管理者が管理者としての役割を果たせるだけのマネジメント能力育成が先決かもしれません。

医療機関では、人材育成や人材評価、人事考課などいまだに何となくなく実施、今までの慣例に基づいて実施しているところが非常に多いです。
医療機関に人事考課や人事評価が導入されにくい理由は、医師をはじめとするライセンス取得者の集まりというところです。
しかし、そのようなプロフェッショナルの集団だからこそ、公正、公平な評価が導入されればより大きな力が発揮できるのではないでしょうか?
人材育成を基軸に置いた、人事評価制度などの導入に興味のある医療機関は、ぜひご連絡ください。

皆さんは、どう思いますか?

次回は7月9日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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