第15回 収入改善編 患者満足度向上

■はじめに
2013年がスタートしました。皆さんはどのようなスタートを切られたでしょうか?
政治も民主党から自民党に政権与党が変わり、医療経営への影響も必ず起きるでしょう。
2013年がスタートしたばかりで恐縮ですが、2014年度の診療報酬改定は要注意です。
今年のコラムは2014年度診療報酬改定までの約1年間を「2014年度改定までの準備期間」として位置付け、途中トピックスがあれば随時取り入れようとは思いますが、前半を収益改善編、後半を費用削減編としたいと考えています。
今年一年宜しくお願いいたします。

患者満足度はどの時点で決まるか?
患者が病院へ行き、「この病院はよい病院だな」とか「いやな病院だな」と気持ちの中で決まるのはいつだと思いますか?
実は、好き嫌いの感情の決定は非常に早いのです。そしてその感情はちょっとしたことで変化しやすいのです。
では、どのような場面で「好き」、「嫌い」が決まるのでしょうか?それは「人」(主に職員)との関わり合いで決まります。
患者は多くの職員と関わります。
職員にとっては、一患者との接点は数秒、数分かもしれませんが、患者が延べ職員と接する時間は積算すると相当な時間数になります。
患者ひとりが接する病院職員が延べ10人いたとして、9人の職員の患者対応はよくても、たった一人の職員の患者対応がよくなかったら、「あの病院は感じがよくない」となってしまうこともあります。しかし、逆に9人の対応が悪くても(実際はありませんが)一人の職員の対応が非常によければ「あの病院は非常によい病院だ」という感想を持ってもらうことも可能なのです。

■患者との接点
患者の満足度が決定するのは、「人」(職員)によるということは前述したとおりです。
では、具体的にどのような「人」が患者と接するのか時間を追ってみてみます。
患者の多くは何らかの交通手段によって来院されます。
特に地方の病院は車で来院する方が非常に多いのではないでしょうか?
患者が病院を選択する際に、広い駐車場や停めやすい駐車場を挙げる人が多いことからも病院を選ぶ重要な選択肢の一つです。

そこで、駐車場の整理のために交通整理員を配置している病院も多いと思います。患者と「人」(職員)との接点はここから始まっています。
病院関係者は「整理員は委託だから」と言うかもしれませんが、患者か見ると病院職員なのです。
どのような態度、言葉使いで交通整理をしているのかを一度チェックしてみてはいかがでしょうか?
患者満足度調査を多くの病院で実施していると思いますが、駐車場や整理員に関する設問はありますか?
整理員の方たちは最初に接する病院の「人」であり、最後に接する病院の「人」なのです。

次にいよいよ病院内に患者が入ってきます。初診の患者を想定しましょう。
初めて来院された患者がどのような手順で、どこに行って手続きをすればよいのか誰でも、すぐに分かるように配慮されていますか?
最近は医療コンシェルジュなどの職種の方や案内係りの方々が受付フロアに出て細かく気配り、配慮をしている光景を見かけることが多くなりました。
それでも非常に混雑する時間帯には、配慮が行き届かないこともあります。
混雑する時間帯は決まっているでしょうから、その時間帯だけ受付フロアへ増員させてはいかがでしょうか?
管理職の方々も例外ではありません。
むしろ管理職の方々こそ積極的に患者と接することをお勧めします。
その際には一点だけ注意点があります。
時々管理職の方がフロア案内をしていることを見ますが、怖い顔の方がたまにいます。
にこやかに話しかけられやすい雰囲気つくりを意識してください。

そしていよいよ診察、検査、画像撮影などを経て次回診察の予約手続きや、計算、会計と流れていきます。
この多くの場面で最も多く患者と接する職種が看護師です。
外来、入院に関わらず患者と最も多くの時間を接するのが看護師ですので、看護師の患者対応は非常に重要です。
患者は医師にとかく「言いにくい」という感情を持っています。
その受け皿が看護師であることが多いのです。
患者は看護師に聞いてもらいのですが、看護師が忙しそうなそぶりを見せたりするだけで患者は口をつぐみ、「話を聞いてくれない いやな病院だ」という感想を持ってしまうかもしれません。
看護師は本当に忙しいとは思いますが、看護面からも患者の話を聞くことは重要ですし、医療のプロフェッショナルとして、患者に忙しさを悟られない態度や表情を技能として身に着けてもらいたいです。

逆に短い時間しか接しないけれど、患者満足度に大きな影響を及ぼす職種が医師です。
医師の患者への対応、態度が患者の満足するものであれば、患者の多くは高い満足感を感じます。
治療効果、分かりやすい説明、傾聴態度、表情や言葉使いなど患者は敏感に感じ取ります。

患者は病院へ入ったときから、何かをしてもらう立場であることが続きます。
受付をしてもらう。診察をしてもらう。採血をしてもらう。レントゲン写真を撮ってもらう。
しかし最後に患者の立場が唯一逆転する部署があります。
それが会計です。
この会計だけが患者が、何かしてもらう部署から、患者が会計をする。
お金を支払うという立場に逆転する部署です。
また多くの病院では会計は病院を出る最後の方で行われます。
このような心理状態から、患者が病院へクレームを付ける(訴える)部署として会計が一番多いのです。
お金のことも絡みますので、会計への適任者への配置や配慮などが必要な部署です。

このように駐車場の整理員から始まり会計(整理員)までの間、患者の満足度という感情を職員から職員へ受け渡しをしていく作業がうまくいったとき、患者満足度が向上するのです。

最後に患者の満足度を上げるエピソードをご紹介したいと思います。
ある病院は再来受付機による再診受付を行っていましたが、ある決まった男性患者は診察券を毎回持ってきません。
診察券を忘れてきた患者は外来フロアで職員が手作業で受け付けをするのですが、この男性患者は毎回診察券を忘れてくるので、職員もこの患者のIDナンバーを覚えてしまいました。
しまいには、正面玄関からこの患者が入ってくるのを見た職員が、患者から言われる前に手作業で受付し、患者とアイコンタクトで、診察室に促します。
この患者の表情は今でもはっきり覚えています。
にこにこした満面の笑みでした。
ちょっとしたことでも、「特別扱い」されるということは嬉しいことであり満足度を高めるテクニックなのではないでしょうか?

皆さんは、どう思いますか?

次回は2月13日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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