第16回 収入改善編 ライバル病院の研究

■「競い合う」ということ
どのような業態でも競合他社は存在します。
その競合他社に負けないように、よりよいサービスを提供したり、価格改善したり、企業努力を重ね、消費者から支持を得ようと企業は考えるわけです。
その結果消費者は、適正価格で最適のサービスを甘受できることになります。
一方で医療機関はどうでしょうか?
医療もサービス業と言われて久しいですが、診療報酬という公定価格により守られ、多くの自治体病院では少なくなってきたとは言うものの、いまだ赤字病院が多く、そこには多額の税金が投入されているのが現状です。
医療という特殊性が大きく影響しているのは十分承知していますが、産業としての発展性を考えた場合、果たしてこれでよいのか疑問が残ります。

というのも医業は、様々な企業努力によって、サービスが向上し、かつ価格が下がり消費者としては恩恵を受けるという基本的な概念が通用しない社会であるような気がします。
それでも少しずつですが、よりよい患者サービスは?患者から選ばれる医療機関になるためには?という視点で多くの取り組みが始まってきていることもまた事実です。
今回は、その第一歩ともいえる、隣の気になるあいつ(競合医療機関)を調べることについて書きます。

■競合医療機関を決める
まず初めに実施するのは、自院に来院している患者がどのような地域から来院しているのか?ということです。
競合医療機関を決めるのに自院に来院している患者を調べる?とお考えの方もいらっしゃると思います。
ポイントは自院を中心に考えるのではなく、患者を中心に考えるということです。すなわち、自院を中心にして半径5キロとか10キロの中に競合医療機関があるとかないとかではなく、患者居住地を中心に半径5キロ、10キロの中に医療機関があるのか?ということに視点を置くことが重要です。
病床規模が大きくなれば、設定する範囲も広げることになります。
自院を中心に診療圏調査を実施することもあると思いますが、これは市場調査(マーケティング調査)ですので、混同しないように注意してください。

■比較の視点
競合医療機関が決まったら、その医療機関と自院を比較する項目を決めます。
外来部門、入院部門、救急機能、紹介状況、医療機器、アメニティなど比較する区分を最初に決めておきます。
次にその区分内で小区分を決めて、比較する具体的な項目を決めます。
この項目を決めるときのポイントは、冷静に比較判断できるような項目を作成することです。
この点を意識しないと、知らず知らずに自院に有利な点ばかりを項目と挙げてしまい、その結果冷静な比較判断ができないことにもなります。

今回は外来機能を例に挙げてみます。
外来という区分内の小区分として、「医療技術」、「接遇」。「施設」という三つの視点から比較します。
医療技術の側面は、診療自体の良し悪し、医療機器や医療設備の充実度、診療時間などが具体的な比較調査項目になると考えられます。
接遇の側面からは、医師や看護師などの職員による患者との対話、患者への平等性、プライバシーへの配慮、そして待ち時間が考えられます。
患者満足度調査を実施しているのであれば、その結果を参考にすることもよいでしょう。
施設の側面からは、施設の立地条件(距離や通いやすさなど)、施設の充実度、施設内の快適性などが挙げられます。
好き嫌いなどの感情は個々人によって異なりますが、あくまでも「患者の視点」で比較することが大事です。
さらにこの調査項目は抽象的な項目ではなく、具体的な調査項目にすることもポイントです。
このような比較調査を実施することが目的ではありません。よりよい患者サービスを提供することが目的ですので、調査項目を具体的にしておけば、その対策も具体的なものになります。

また、調査は一度実施すれば終わりではありません。
このような調査の結果に基づいて対策を立て実行し、その結果がどのようになったかを振り返るために、再び調査することが必要になります。
気になるあいつ(競合病院)も以前よりサービスがよい状態になっていることも十分考えられますので、是非継続的な調査をお勧めします。

皆さんは、どう思いますか?

次回は3月13日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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