第97回 連携のカギは医師!

近年の医療機関の経営を考えると、医療機関同士で患者を紹介し合う「地域医療連携」は、非常に重要な施策の一つだといえます。転院先として、患者を受け入れてくれる医療機関と連携しておくことが求められています。

連携のカギは医師!

医療機関連携の重要性

事務長「本日は、最近貴院からの紹介患者が減っているので、伺いました。何かご不快な点とかありましたでしょうか」
連携担当看護師長「特にそういったことはありません。紹介させていただいた患者様の報告もきちんと頂戴しており、安心して患者様をご紹介させていただいています。ただ……」
事務長「ただ、何でしょうか」
連携担当看護師長「患者様をご紹介する際の照会時のやりとりが、少々煩わしいように感じることがあるようです」
事務長「えっ、具体的にはどのようなことでしょうか」
連携担当看護師長「例えば、患者様をご紹介する際にどのような患者様なのか。調整が必要なので返答までに時間がかかるとか、ご紹介患者を受け入れてくださるのかどうかまでの返答を頂くまでに、何度もやりとりをして時間がかかるといったことです」

この会話は、地域包括ケア病棟を持った小規模病院の事務長と、近隣の大学病院の看護師長の会話です。近年の医療機関の経営を考えると、医療機関同士で患者を紹介し合う「地域医療連携」が非常に重要な施策の一つとなります。以前は開業医の先生方が、急性期病院へ患者を紹介するといった連携関係(前方連携)が中心でしたが、会話での例にもあるように、現在は急性期病院から他医療機関への紹介する(後方連携)といったことも重要になっています。急性期病院は平均在院日数を短縮することが求められていますので、転院先として患者を受け入れてくれる医療機関と連携しておくことがより重要になっているのです。

患者を紹介するということとは

紹介患者を増やすためにはどうすればよいのでしょうか。それは連携先医療機関と密接な人間関係を構築するにほかありません。
患者を紹介するということは、「人(紹介元の医師)が人(患者)を人(紹介先の医師)に紹介すること」です。紹介元の医師にしてみれば、どんな患者も大事な患者です。その大事な患者をほかの医師にお願いするのですから、信頼できる医師にお願いしたいと考えるのは当然です。どんな医師かも、顔も知らない医師に紹介するよりは実際に会って話をしたことがあり、当然顔も知っている医師に紹介したくなるものです。紹介患者を増やすには、紹介元と紹介先の医師同士が会う機会を多くセッティングすることがポイントです。現場では地域医療連携室が中心となって、医師同士を会わせるさまざまな企画を実行しています。以下に具体的な取り組みを幾つかご紹介します。

1.正面玄関などに「当院の連携医療機関」など掲示物を作成する

これは連携先医療機関へのアピールになります。連携先医療機関の医師が患者紹介先の医療機関に訪問する機会も多いので、そのようなときにこのようなボードを目にすると、紹介元の医師は「我々の医療機関をしっかり認識してくれているんだなあ」という気持ちになります。同時にこのようなボードを掲示することで、紹介された患者はもちろん、そのほかの患者に対しても安心感を与える効果が期待できます。

2.連携便りの発行

連携先医療機関へ外来担当表や休診のお知らせ、導入した医療機器の紹介などを定期的にお知らせします。MRIやCTなどの検査のみといった患者紹介の依頼状や、放射線治療の依頼状などの申込用紙類を同封します。最近では紙ベースの媒体から電子メールでのお知らせなどに変化しています。

3.共同症例検討会開催

紹介先の医師と紹介元に医師らによる症例検討会(CPC)の開催を定期的に実施することで、医師同士の距離感は非常に短時間で縮まります。紹介元の医師がCPCの検討症例を持ち込み、カンファレンスを行ったり、最新の医療内容の勉強会を実施したりします。特に開業医は、最新の医療や医学について情報収集するチャンスが少ないため、興味を持ってくれる医師も多くいます。

4.季節ごとの催事企画

賀詞交歓会から始まり、花見の会、暑気払いなど、とにかく医師同士に会っていただく機会を多く作ります。CPCとは逆の性質の企画ですが、硬軟取り混ぜたこのような企画も必要です。

5.その他

多くの医療機関が、医療講演会を実施していると思いますが、その演者に紹介元の医師を招聘(しょうへい)します。招聘された医師は嫌な気分はしないでしょう。場合によっては招聘された医師の医療機関から、新たな患者の獲得にもつながることも考えられますので、大概の医師は一生懸命取り組んでくれます。

さらなる医療機関連携の進め方

医師同士を会わせるきっかけ作りを中心に述べましたが、このほかにも職種間連携(看護師同士や、地域医療連携室事務員同士など)のために定期的な打ち合わせを行うことも効果的です。いずれの場合も、お互いの事情を理解することに役立ちます。また、紹介元医療機関が困っていることを把握することもでき、その解決に役立つことができれば、より一層強固な信頼関係が構築されることにもなります。定期的にアンケート調査を実施して、意識調査を行っても同様の効果があります。アンケートは全職種対象となりますので、職種間での打ち合わせよりも広い範囲の意見を聞くことができます。
紹介患者を増やしたいのであれば、まずはこちらから患者を紹介すべきであるという方もいらっしゃいます。ギブアンドテイクの考え方です。特に規模の小さい医療機関から患者を紹介してもらいたいと考えた場合は、最初にその医療機関へ患者を紹介すると効果が高いと思います。

前述した事務長が最後にポツンとつぶやいていました。

「やっぱり、医者なんだよなあ」

皆さんは、どう思いますか?

次回は2月12日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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