第56回 救急車受入台数を増やすには

今年の診療報酬改定の影響はいかがでしょうか? なかなか、厳しい状況になっている医療機関も多いと思います。特に「入院患者が増えない」、「入院患者が減った」と言われる医療機関が多い気がします。入院患者の患者単価は、外来患者単価に比べて、圧倒的に高いです。この単価が高い患者数が減少するということは、医療機関全体の収支にどれだけの影響を及ぼすか考えてみてください。ぞっとしますね。

そこで、入院患者を増やすことに焦点を当ててお話をしたいと思います。入院患者を増やす手法はいくつかあります。周りの開業医などから患者を多く紹介してもらう。自院の外来患者を増やしてその結果、入院患者を増やす。などがありますが、今回は救急患者を増やして、入院患者を増やすことに繋げるということを考えたいと思います。中でも救急車の受け入れ台数を増やすことを中心にお話しします。救急車搬送以外の救急患者もいますが、救急車受け入れ台数を増やすことの方が、メリットが多いのはご存知のとおりですね。

救急車の受入れ台数を増やし、入院患者を増やしたいと考えた時に、キーパーソンは「救急隊」になります。多くの場合、救急隊の方々が搬送先を探し、決定することになります。したがって救急車を多く受け入れたいと考える医療機関は、救急隊を意識した救急医療体制を構築する必要があるということです。

別の視点から考えてみましょう。救急隊が行きにくい、あるいは行きたくない病院とは、どんな病院だと思いますか? それは、救急患者を受け入れてくれない病院です。病院側にも事情はあります。受け入れたくても受入られない事情があるから救急患者を断っているのだとは思います。しかし、今回はそこを何とかして多くの救急患者を受け入れるためにはどうしたら良いかを考えます。

日本病院会での調査内容によりますと、専門医がいない/対応できる医師がいない、手術や処置で手一杯であるという理由が多いですね。この二つを解決する策は、救急部門の医師を配置することです。もちろん難しいのは重々承知です。しかし、救急医療のスペシャリストを配置すれば、アッと言う間に問題は解決するということは理解しておいてください。では、救急の専門医が見つからない場合はどうすれば良いでしょうか? それは、チームで対応する。総合力で対応することです。救急隊の方が困る事例の一つに夜間の鼻出血症例があります。夜間休日に耳鼻咽喉科の医師が、院内で救急患者のために待機していることは、まずありません。救急隊は近くの救急病院に受け入れ先が見つからない場合は、遠くても対応してくれる大学病院等に搬送します。しかしどうでしょうか? 脳神経外科の医師ならば、鼻出血の初期医療の診断、処置は可能ではないでしょうか? 救急隊もまずは、近くの医療機関で受け入れてくれて、診察、診断してくれたら、どんなに助かるでしょうか。
もちろん医師だけではなく、放射線部、検査部、薬剤部などの支援部門がしっかりと救急部門をサポートする体制を整えることも重要です。

さらにもう一つ救急隊が行きにくい理由があります。それは、搬送先の医療機関のことをよく知らない場合です。どんな医師がいるのか。どんな医療機器があるのか。など搬送先の医療機関のことを知らないと、搬送する医療機関としては、つい優先順位が後回しになってしまいます。そんなときはどうしたら良いのでしょうか? 医療機関のことを知らないのであれば、知らせに行きましょう。救急隊への訪問は必ず行うべきです。できれば院長自らが、医療機関のことを救急隊に話しに行くべきです。また、救急隊との懇話会などを企画して救急隊と意見交換会の場を設けることも重要です。このような救急隊と積極的にコミュニケーションを図ろうとする医療機関側の姿勢を、救急隊は高く評価してくれるはずです。この懇話会などの機会に、院内の医療機器の紹介など院内の案内もすることも良いでしょう。救急隊の方々は救急部門周りにはよくいらっしゃいますが、院内全てのことをよく知っているかというとそんなことを全くありません。このような救急隊とのさまざまなコミュニケーション企画は、医療連携室が中心に実施すると良いでしょう。救急隊の意見交換の中から、医療機関への要望事項なども上がってくることもあり、前述した救急隊を受け入れる体制の構築に反映できる場合もあります。

今回は「救急隊」をキーワードに救急車搬送台数を増やすためには?ということを考えてみました。
皆さんも一度、救急隊の視点から「救急隊がついつい患者を搬送したくなる病院」とは、どんな病院なのかを考えてみてはどうでしょうか?

皆さんは、どう思いますか?

次回は8月17日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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