第55回 日本の高齢者医療のいま

日本の出生率は、1.42(2014年)です。この数値が2.0(夫婦2名からこどもが2人生まれるという意味)であれば人口は維持されると言われていますので、日本の人口は減少していると言われている根拠でもある数値です。しかし、65歳以上の高齢者人口は総人口の減少とは異なり、上昇しています。しかも日本は世界中のどの国もかつて経験したことがないスピードで、高齢化を迎えています。

高齢者が多いということが今の日本の医療にどのような影響を及ぼしているのかを、今回は整理し、考えていきたいと思います。

2014年度の国民医療費は、約41兆円です。このうち75歳以上の後期高齢者の医療費は、14兆5千億円です。65歳以上75歳未満の医療費が約7兆円ですので、65歳以上で約21兆5千億円となり、国民医療費の52.4%を占める計算になります。

なぜ高齢者の医療費は高いのでしょうか? それは高齢者の心身機能の特徴に原因があります。人間は皆、加齢と共に心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響を受けることが多くなります。したがって、医療機関に受診する機会が多くなり、複数の疾病治療を受けるので、治療内容も複雑になり、さらに治療期間も長くなる傾向があります。もちろん、健康状態や生活機能、生活背景等の個人差が非常に大きいことも事実です。さらに複数の医療機関への受診、多剤処方、残薬が生じやすいとも指摘もあります。
国は、このような状態になる時期をなるべく遅くすることで、国民医療費の50%以上を占める高齢者にかかる医療費を削減できないかとさまざまな政策が検討され実行に移されている訳です。


出典:厚生労働省資料

◇高齢者が罹患しやすい疾患
高血圧・心疾患・脳血管疾患・糖尿病・呼吸器疾患・悪性腫瘍等

◇老年症候群(症状等)
認知機能障害・めまい・摂食/嚥下機能障害・視力障害・うつ・貧血・難聴・せん妄・易感染症・体重減少・筋力低下

高齢者医療のいま その1

高齢者の低栄養防止と重症化予防

前述した高齢者の心身的な特徴に対する対策のひとつです。高齢者が低栄養状態や筋量が低下すると心身機能がさらに低下しますので、その予防策です。

地域の実情に応じて、地域包括支援センター、保健センター、訪問看護ステーション、薬局等を活用して、管理栄養士、歯科衛生士、薬剤師、保健師等の専門職の方々が、相談や訪問指導等を実施します。具体的には、管理栄養士が低栄養状態の在宅高齢者に、訪問指導を行う。歯科衛生士が摂食障害につながる口腔機能低下に関する相談や指導を行う。薬剤師が複数受診により、服用薬剤が多い高齢者に服薬相談や指導を行う等です。


出典:厚生労働省資料

高齢者医療のいま その2

費用負担

現在日本では、国保と被用者保険の二本立てで国民皆保険を実現しています。所得が高く、医療費の低い現役世代は被用者保険に多く加入している一方で、退職し所得が下がり、医療費が高い高齢者になると国保に加入するといった構造的な課題が指摘されています。このため、現役世代からの支援金と公費で約9割を賄っている状況です。その支援金は現在、段階的に全面総報酬割に移行している最中です。(平成26年度:1/3総報酬割⇒平成27年度:1/2総報酬割⇒平成28年度:2/3総報酬割⇒平成29年度:全面総報酬割)


出典:厚生労働省 保険局資料

負担の公平化については、入院患者の食事代が段階的に引き上げられています。さらに今年4月から紹介状なしの患者の大病院受診について、初診も再診も定額負担が導入されました。また、健康保険の保険料も算定の基礎となる標準報酬月額の上限額を121万円から139万円に引き上げました。

負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化のスケジュール

出典:厚生労働省資料

今回は、高齢者の心身特徴からの取組みと費用や高齢者保健制度の面から考察しました。医療機関では患者が病気に罹り、そこから診療が始まりますが、高齢者医療では、その随分前で対策が始まります。しかもその対応者は専門職の方々です。医療機関の患者確保の視点からは、病院に来る前の段階から関与していることが重要です。
また費用負担や高齢者保健制度も見直される可能性が高いです。高齢者患者自身への負担増などの政策も今後ますます導入されるでしょう。その対策としては、患者から選ばれる病院にならなくてはなりません。選ばれる医療機関になるための特徴作り、強み作りなどが重要な経営課題になるでしょう。いずれにしても、このような外部環境の変化に関する最新の情報をキャッチし、PDCAサイクルを回すなどが必要です。

皆さんは、どう思いますか?

次回は7月20日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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