第67回 メディカルコーチング

ここ数回のコラムでは、「人」に注目してコラムを書いています。病院で働く人たちのコミュニケーション能力を高めることは、患者さんへの対応能力を高めることにも繋がります。そこで、今回は「メディカルコーチング」をご紹介したいと思います。

メディカルコーチング

ここ数回のコラムでは、「人」に注目してコラムを書いています。「人」が二人以上集まると、そこにコミュニケーションが生まれます。コミュニケーションが上手な人もいれば下手な人もいます。チーム医療と言う言葉に代表されるように、病院では、患者さんの治療のために、医師や看護師をはじめ病院の全ての人が「患者さんのために」働いています。

病院で働く人たちのコミュニケーション能力を高めることは、患者さんへの対応能力を高めることにも繋がります。そこで、今回は「メディカルコーチング」をご紹介したいと思います。

コーチングの基本

コーチングは、個人一人ひとりの持つ可能性や能力を最大限に発揮するために誕生したコミュニケーション法です。また部下の意欲を引き出すマネジメントとしても活用されます。カウンセリングやコンサルティングとの違いは、コーチングでは、カウンセリングでよく行われる過去の出来事や事象について洞察、観測、分析することはあまりしません。過去の比重よりも未来への行動に比重を置きます。またコンサルティングとの違いは、アドバイスに重きを置くかどうかになります。コンサルティングでは、コンサルタントの持っているノウハウ、スキル、ナレッジなどの情報を相手に提供しますが、コーチングは、なるべく必要な情報の収集も知識の習得もコーチングを受ける側が自ら行動し、獲得していくことが基本です。人から教えられるということはまず、ありません。

スタッフ間でのコミュニケーションおいては、今まで上司が一方的に部下に対して指示、命令するというトップダウン方式でしたが、近年は通用しません。それぞれの考え方、個性を尊重する人間関係を構築しないと部下は動いてくれません。

医師と看護師、看護師長から現場の看護師といったさまざまな職種、等級、性別、年齢が入り乱れた医療現場で自主性が確保された責任ある行動が求められています。

コラムでは、メディカルコーチングの全てを書くことは難しいので、コーチングの基本的なことについて、いくつかご紹介します。

視線

人とコミュニケーションを取る時には、皆さんはどこを見てしゃべっていますか。そもそも視線のことを気にしたことがありますか。コーチングではアイコンタクトは重要な技術の一つです。視線の先は「相手の上半身全体を穏やかに眺める」ことです。決して、どこか一点を見つめることではありません。そして、アイコンタクトと同時に、視線の高さとポジションについても気を付けましょう。具体的には視線が並行なのか、どちらか一方の視線が高い(低い)のかということです。人は上から見下ろされると威圧的に感じます。上から下へというのは、命令する時に使われますので、相手は心を砕いて、腹を割って話をするということは難しいでしょう。

逆に相手の視線が高い場合はどうでしょうか。多くの場合、コーチングをする側は力関係では上に位置しています。そのような力関係な場合、力が弱い人の視線が上になると、これは「力が弱い人が立たされている」ということになり、相手は委縮してしまいます。では、視線を同じ位置に持って行けばよいかというと、真正面には位置しないでください。正面に相手がいると、これは対峙する位置関係になってしまいますからこれもNGです。コーチングで理想な位置は、斜め45度ぐらいといわれています。

会話開始

ポジショニングが決まったら、いよいよコーチングの開始です。最初はお互いに緊張していることもあると思いますので、その緊張をほぐすことから始めます。具体的にはアイスブレイキング*という技術がよく使われます。
*アイスブレイキング:初対面の時などお互いに緊張している場面で、お互いの緊張が緩和して和むような雰囲気を作ること。

笑顔で挨拶をして、場合によっては自己紹介から始めてもよいでしょう。アイスブレイキングは、「小さな承認」とも言われています。相手の話している内容を「承認」することは、コーチングの基本中の基本です。コーチングでの承認とは、「その人の存在そのものを認める」という意味で使われています。そして、必ず口に出して相手を承認している、存在を認めていることを伝えます。その時の注意としては、ポジティブな内容で伝えてください。ポイントは、上辺だけのお世辞にならないように、本当に感じたことを、自分の言葉で素直に伝えることです。

ペーシング

アイスブレイキングで、心がほぐれたところで、さらに相手の心を開いてもらう技術として、「ペーシング」があります。これは「相手に合わせる」ということです。

人間は、「自分と同じ」ということに安心を感じます。皆さんも同じ出身校だったり、地元が同じだったりする相手と、急速に距離が縮まったという経験がありませんか。

では、コーチングでのペーシング(相手に合わせる)とはどういうことでしょうか。それは、相手の雰囲気、話すスピード、声の大きさやトーン、身振り、手振りなどを相手と同調(シンクロ)させることです。例えば相手が誰かに怒られて、落ち込んでいる時に、明るく「大丈夫、大丈夫」なんて大声で言われ、肩をバンバン叩かれて励まされたらどう思うでしょうか。確かに励まされるかもしれませんが、「この人に話しても分かってもらえないな」と思われて、心の扉がピシャッと閉じられてしまいます。

ペーシングには、一つだけ同調してはいけない感情があります。それは「怒り」です。「怒り」に同調して、同じように怒りで相手に返してはいけません。相手が自分に対して怒りをぶつけてきた場合は、「聴く」ことに徹底してください。

実は、ここまではコーチングの準備といったところです。コーチングには三大スキルというのがあります。「聴く」「質問」「伝える」です。

「聴く」とは、聞くとは違います。相手の話を、先入観をもって聴いてはいけません。聴いた内容を評価や否定してもいけません。きちんと最後まで話を聴き、相手の話が途切れて、沈黙してしまっても、自分からは話し出さず、できるだけ相手がまた話し始めることを待ちます。

話を聴いたら次は「質問」です。何を質問するのでしょうか。話を聴いて分からない点があったから質問するのでしょうか。答えはノーです。コーチングでの「質問」は相手が気付いていないこと、相手の頭の中が混乱、混沌としている状態を整理できるように促すように質問を使います。つまり相手が何かに気付くように仕向けるように「質問」するのです。質問には、すぐに答えられるようなクローズ質問と、すぐには答えが出ず、考えてから答えが出てくるようなオープン質問がありますが、コーチングではオープン質問を多用します。

コーチングでは、相手が自分の中から答えを引き出すことを重要視しています。ですからコーチングでは、できるだけアドバイスやティーチングは行わないようにします。しかし、医療の現場では、アドバイス、教えるということは不可欠です。そのためにメディカルコーチングでは「伝える」という技術が重視されています。

伝えるとはどういうことでしょうか。伝えるには何が最も重要でしょうか。それは、相手のニーズを知るということです。

伝える技術としては、「I」メッセージで伝えるということです。その対象となるのが「You」メッセージです。例えば職場に早く来て頑張っている部下に対して、「You」メッセージでは、「あなたは、最近早く来て、頑張っているね」となりますが、「I」メッセージでは「あなたが早く来て頑張っているので、私は非常に嬉しい」となります。Youメッセージは、断定的に聞こえ、評価するニュアンスが強くなります。「I」メッセージでは、私が○○と感じるとなりますから、相手は否定しようがありません。コーチングではできるだけこの「I」メッセージを使います。

今回はコーチングの初歩的なことしかお話しできませんでしたが、興味を少しでも持っていただけたら嬉しいです。医療現場でもっとコーチングが普及すると、働きやすい職場になると思います。

皆さんは、どう思いますか?

次回は7月12日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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