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第131回 医療法人の税務 その注意点
医療法人の税務について、ちょっとした知識の有無が、節税が「できる」「できない」の分かれ道になります。今回は医療法人の税務とその注意点についてお話しします。
医療法人の税務 その注意点
医療法人の税務では何点か注意すべき点があります。そもそも医療法人は、会社法による規定をされた会社ではなく、医療法の規定による法人です。つまり医療法人は法人税法上の同族会社には該当しません。同族会社に該当しないということは、以下の規定は医療法人には該当しないことになります。
- 同族会社等の行為又は計算の否認(ただし、例外あり)
- 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入
- 特定同族会社の特別税率
「同族会社等の行為又は否認」とは、税務署が法人税の負担を不当に減少させる行為と認めるものについては損金として認めないという規定です。一般的な医療法人には適用されませんが、三つ以上の病院や診療所などを運営している医療法人は適用される可能性もありますので、注意が必要です。
次に法人税法第132条では、同法で次の法人について同族会社などの行為、または計算の否認を適用することができると規定されています。
法人税法第132条(同族会社等の行為又は計算の否認)
- 一、内国法人である同族会社
- 二、イからハまでのいずれにも該当する内国法人
- イ、三以上の支店、工場その他の事業所を有すること
- ロ、その事業所の二分の一以上に当たる事業所につきその事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係にある個人(以下この号において「所長等」という)が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること
- ハ、ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く)の総数又は総額の三分の二以上に相当すること
法律の文章なので分かりづらいと思いますが、三つ以上の医療機関を運営する医療法人で半分以上が個人開設から医療法人に組織変更した者である場合には、同族会社などの行為または計算の否認が適用される可能性があるということになります。
ただし、三つ以上の医療機関を運営している医療法人であっても、本院だけが個人開設から医療法人化して、残りの医療機関は医療法人設立後に開設したのであれば、同族会社などの行為または計算の否認が適用されることはまずありません。規模の拡大、拡張を考えている医療法人は拡大のタイミングに注意が必要です。
医療法人に適用される注意すべき代表的な規定
1.役員給与の損金不算入
法人が支払う役員給与のうち、損金になるものは下記のものです。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 利益連動給与
- * 大きな収入が(急に)あったときに給与の支払いを多くして、利益を低くする(税金を低くする)ことを防止するものです。
- * (急な)大きな収入があったときの対策としては、事前確定届出給与を事前に届け出をしておき、(急な)大きな収入があったときは届け出どおりに支払い、なかった場合は支払わないという対策は可能です。
- * 利益連動給与は、利益に関する指標を基礎に客観的な算定方法の要件を満たす必要がありますので、医療法人では採用しているところは、ほとんどありません。
2.過大な役員給与の損金不算入
過大な役員給与であるかの判断は、実質基準と形式基準があります。どちらかの基準を超えた役員給与は、過大役員給与とみなされます。
- 実質基準
- 個々の役員ごとに職務の内容、その法人の収益や使用人に対する給与支給状況、同業類似規模法人の役員給与などに照らし、不相当に高額であるかを税務署が判断します。
- 形式基準
- 定款や社員総会などで役員給与について定めているかどうか、その法人の議事録から判断します。
3.過大な使用人給与の損金不算入
役員の親族や事実上婚姻関係にある者などに対する給与は、役員でなく使用人であっても不相当に高額であると税務署が判断する部分は損金不算入となります。
4.寄付金の損金不算入
国・地方公共団体などに対する寄付金や特定公益増進法人などに対する寄付金であれば、その全額が損金となります。その他の寄付金は一定の計算式で算出された金額のみが損金となります。
脱税はもちろん絶対にしてはいけないことです。しかし、ちょっとした知識の有無が節税が「できる」「できない」の分かれ道にもなってしまいます。賢くスマートに節税したいものです。
皆さんはどう思いますか?
次回は12月14日(水)更新予定です。
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