第94回 診療報酬改定などの読み解きについて

厚生労働省の文章は、とっつきにくく、最初のうちは読みづらいかもしれませんが、幾つかの言葉に気を付けて読み続けていれば、真意は見えてきます。

診療報酬改定などの読み解きについて

医療関係者にとって最大の関心事である「診療報酬改定」が、半年後に迫っています。改定の内容は通常2月上旬に明らかになるため、実質、後4カ月です。診療報酬改定に限らず厚生労働省作成の資料はお堅い文章が多いので、今回は通知内容の真意を読み解くちょっとしたコツについてお話しします。

診療報酬改定とは

始めに「診療報酬改定」についてですが、診療報酬とは、保健医療機関および保険薬局が保健医療サービスに対する対価として保険者から受け取る報酬です。報酬の内容は技術・サービスの評価と(診療材料などの)物の価格評価に分かれます。医薬品については薬価基準で価格が定まっています。診療報酬点数表(医科・歯科・調剤)では、個々の技術、サービスを点数化(1点10円)して評価しています。どの技術やサービスが何点なのか、算定(請求)するルールなどを議論し決定する場が、中央社会保険医療協議会(中医協)です。医療の価格の見直しを診療報酬改定といい、通常は2年に一度見直しが行われます。

医療機関にとっては、自分たちが提供しているサービスの値段が変わるわけですから、大きな関心事となります。医療機関にとって診療報酬改定の影響はさまざまです。診療点数が変わるのですから、医療機関の収入額が変化します。診療報酬を請求する際のソフトも変更しなければなりません。変更にかかる費用は医療機関持ちです。診療報酬点数の見直し内容によっては、医療機関の職員個人の業務内容が変わることもあります。さらに近年ではある診療報酬点数を算定する条件として、「事前に申請をしておくこと」を条件にしている点数もありますので、申請書類の作成・提出を速やかに実施しなければならなくなりました。そして最後に、診療報酬点数の改定内容に、厚生労働省はメッセージを盛り込むことがあります。例えば「ジェネリック医薬品の使用頻度を高めてもらいたい」というメッセージがある場合は、関係点数をアップさせていることがあります。保険診療は自由診療と違い、医療機関自らが提供する医療技術や医療サービスに定価(値段)を付けることができません。大部分は公的なお金ですので、一定のルールの中で算定をしなければなりません。診療報酬改定の内容に一喜一憂するのではなく、改定内容の行間に込められたメッセージや方向性などを理解することが非常に重要です。

読み解く四つのキーワード

診療報酬改定関連の資料を読み解くためには、四つのキーワードに注目します。

キーワード1:見直し

まず一つ目は「見直し」という言葉です。見直しという言葉が使われている場合、医療機関にとっては減収になる可能性が高い内容が含まれているといえます。見直しの意味は、今までのやり方や考え方を見直すという内容が含まれているので、「点数自身が下がる」「包括範囲が拡大する」といった改定内容になります。

キーワード2:評価・充実

二つ目のキーワードは、「評価・充実」です。このキーワードは見直しとは反対に、医療機関にとっては増収になる内容が含まれている可能性が高くなります。厚生労働省が求める方向性を示す、最も簡単なメッセージともいえます。具体的には「新しい点数が収載される」「点数自身が上がる」「算定基準のハードルが低くなる」などが考えられます。ただし前述のとおりに、新しい点数の算定には事前申請が必須条件になることが多くなっているので注意が必要です。申請が遅れたがために算定できる点数を棒に振ることは絶対に避けましょう(行動経済学でいう<機会喪失>です)。

キーワード3:推進・拡充

三つ目のキーワードは「推進・拡充」です。このキーワードも医療機関にとっては、増収となる可能性があります。加算点など何らかのインセンティブを利用して、厚生労働省が求めている方向へ誘導したいときによく使われます。ただし、このキーワードには注意が必要です。それは、厚生労働省が想定している方向に進み出したら、あるいは想定している姿に近づいたら、インセンティブは外されるからです。いわゆる「はしご外し」です。はしごを外されるだけではなく、実施しなければ減算するといった逆インセンティブを導入してくるケースもあり得ます。私は「囲い込みと追い込み」と呼んでいます。そして「どうせはしごを外されるのなら、最初から算定しない」という医療機関もありますが、その考えは非常に危険だと考えられます。はしごが外されることが分かっていても、その点数を取りにいかなければ、厚生労働省のメッセージを無視したことになってしまいます。厚生労働省の言うことを全て聞けとは言いませんが、無視をして経営的に良いことは一つもないと思います。この場合は少しでも早めに経営判断を行い、はしご外しが将来的にあるということを分かったうえで、その政策に乗ることができれば、利益を蓄積できる期間が長くなります。その間に次の戦略を練ることも可能です。医療機関に多い「様子見」は機会損失です。

キーワード4:適正化・適切な

最後のキーワードは「適正化・適正な」です。このキーワードが出てきたら、その分野の範囲の中で、点数が上がるものもあれば下がるものもあるという意味です。臨床検査の点数が代表的です。一般的に技術が高いものは評価が高くなり、技術が陳腐化、汎用(はんよう)化してきたら、評価は低くなります。

2018年度の診療報酬改定の振り返り

前回の2018年度診療報酬改定基本方針の中に、この四つのキーワードが使われた文章の一部をご紹介します。

1.見直し
2018年度改定では使用されなかった
2.評価・充実
患者の状態に応じた入院医療の評価
かかりつけ医機能の評価
3.推進・拡充
重症化予防の取組の推進
アウトカムに着目した評価の推進
4.適正化・適正な
医薬品、医療機器、検査等の適正な評価
医薬品の適正使用の推進

前回の診療報酬改定を振り返って、このキーワードと基本方針を見比べるだけで納得・合点がいく人も多いのではないでしょうか。厚生労働省の文章は、とっつきにくく、最初のうちは読みづらいかもしれませんが、幾つかの言葉に気を付けて読み続けていれば、真意は見えてきます。

皆さんは、どう思いますか?

医療機関の原価計算のお問い合わせ
株式会社FMCA
http://www004.upp.so-net.ne.jp/medical/

次回は11月13日(水)更新予定です。

お知らせ

書籍

病院のマネジメントに関する書籍を建帛社より出版しました。
ぜひご覧ください。

新 医療秘書実務シリーズ 2「病院のマネジメント」 医療秘書教育全国協議会 編 藤井昌弘・岸田敏彦・丹野清美 共著(建帛社Webサイト)

関連するページ・著者紹介

この記事のテーマと関連するページ

中小規模病院向け医療ソリューション 電子カルテシステムER

電子カルテシステムERは、カルテ入力やオーダリングの機能をはじめ、部門業務を支援する豊富な機能を搭載。医療施設の運用に合わせ部門システムや介護福祉システムとの連携も柔軟に対応でき、業務の効率化と情報共有を支援します。

ワイズマン介護・医療シリーズ 医療・介護連携サービス MeLL+(メルタス)

医療・介護連携サービス「MeLL+」は、地域包括ケアや法人内連携など、医療と介護のシームレスな連携を実現する医療・介護連携サービスです。医療関係の情報と介護関係の情報をクラウドのデータベースに蓄積し、それぞれの施設から「必要な情報を必要な時に」どこからでも共有・閲覧することができます。

この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

お問い合わせ・ご依頼はこちら

詳細についてはこちらからお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

0120-220-449

受付時間
9:00~17:30(土日祝日および当社休業日を除く)
総合受付窓口
インサイドビジネスセンター

卸販売について

ページID:00170863