第63回 医療機関で働く「人」

医療機関の経営は、「人」に大きく依存しています。医療機関の費用構成割合でも、人件費が50%程度を占めています。患者を治療する臨床の歴史は長いですが、医療機関の経営や運営の仕組みや人材の育成については、いまだに確立しているとは言えません。

医療機関で働く「人」

医療機関の経営は、「人」に大きく依存しています。医療機関の費用構成割合でも、人件費が50%程度を占めています。患者を治療する臨床の歴史は長いですが、医療機関の経営や運営の仕組みや人材の育成については、いまだに確立しているとは言えません。

現状を整理してみると、医療機関の人材育成について、体系的に学べる場やそのようなチャンスが非常に少ない。医療機関の経営責任者は医師である院長であり、臨床の勉強は医学部時代から日々研鑽していますが、経営については全くの素人ということも珍しくありません。また、病院会計等の経営にとって重要な領域を学ぶカリキュラムが確立していなく、さらにそのノウハウを蓄積するようなシステムもありません。通常、経営者である院長も臨床を受け持っているので、その仕事を離れて経営の学習に特化することもなかなか困難です。医療倫理との齟齬、すなわち、医療の目的(倫理)と経営という場合によっては相反する思考が求められる場合もあります。

総じて一般の民間企業の経営手法に比べて考え方も手法もかなり遅れているのが医療機関の経営と言えるでしょう。

これらの課題を解決していきながら、強い経営システムを構築し皆を引っ張っていくようなリーダーシップを持った人材が輩出されなければいけない時代に入りました。
2010年に一般社団法人医療経営実践協会によって設立された医療経営に関する新しい資格制度として「医療経営士」*という資格ができました。このような資格が注目されているのも納得できます。

*医療経営士とは

医療機関をマネジメントするうえで必要な医療および経営に関する知識と、経営課題を解決する能力を有し、実践的な経営能力を備えた人材です。長らく“経営不在”と指摘されてきた医療界において、「医療経営士」は、これからの医療現場を担う重要な人材と位置づけられます。

参考URL(2017年2月15日現在):
医療経営士資格認定試験

医療機関の経営成功のためには、その組織が進むべき方向と運営の指針を(職員全員と)共有し新しいアイデアにも柔軟に対応し、常にコミュニケーションをとり、医療機関経営のビジョンや目的のために力を合わせる組織であることが肝要です。そのためには、トップダウン方式では行き詰まってしまいます。レベルは違っても全ての職員が、意欲を持って自らの能力を高める努力を怠りなく、力を発揮できる組織が求められています。医療機関を取り巻く外部環境は目まぐるしく変化していますので、変化する環境に対応してその環境下で医療機関の高いパフォーマンスを維持させるためには、職員個々人の主体的な学習と成長が必要です。

リーダーシップについて

ドラッカーによると、リーダーとは、「問題なのは、タスク(仕事、務め)でありリーダーはそのタスク達成のための召使に過ぎない」と言っています。リーダーという言葉からカリスマという言葉を連想する方もいらっしゃると思いますが、これもドラッカーによると「リーダーのカリスマ性は問題ではない。問題はリーダーのミッションである」とも言っています。つまり、リーダーもそれぞれの所属する部署のミッションを達成するツール(道具)のひとつにすぎないということです。

リーダーシップとは、リーダーだけで存在するものではありません。リーダーのそばには常にリーダーをフォローする人(フォローワー)が存在しています。フォローワーがいて初めてリーダーが成立します。リーダーはこのフォローワーの行動に影響を及ぼしますが必ずしも「率先模範」である必要はありません。重要なことは、人を動かし、仕事をさせることです。自らが敵陣に切り込む行為ではなく、部下がついてくるかどうかがリーダーの問われる能力です。

ただし、特に小規模な病院等で見ることができるケースとして、院長自らが率先してメスを握り、スタッフを引っ張っていくという姿をよく見かけます。もちろん間違ったスタイルではありません。むしろ小規模の病院ではリーダーの背中を見せてスタッフがついていくケースも多いと思います。スタッフが院長を信頼してついていくことが重要です。しかし、中には「裸の王様」になっている院長にも時々出会います。本人は気づいていないので、気の毒にさえ思うことがあります。

「人が動く」には動機が必要です。ES(Employee Satisfaction)従業員満足度がその動機の大きなヒントになります。このESの満足度が低い組織からは、高いCS(Customer Satisfaction)顧客(患者)満足を獲得することは決してありません。医療に係る人材は医師を代表とする有資格者の集団です。いわばプロフェッショナル集まりです。プロであれば、患者のために多少の自己犠牲は問わず、患者のために質の高い医療を提供することにやりがいや生きがいを感じるはずです。

CSとESの関係性は、相互に矛盾するトレードオフの関係ではなく、ゼロサムゲームの関係でもありません。CSとESが相互に補完する関係です。ESの高い病院はCSも高くなり、逆にESが低い病院ではCSも低くなってしまいます。

さらにESが低い病院には良い人材が集まりません。最近では「マグネットホスピタル」(もともとは看護の世界で使われていました)という言葉が使われますが、医師や看護師、さらには医療専門職を引き付けられる魅力的な病院という意味で使われています。このマグネットホスピタルを目指すという目標を掲げる病院も現れました。

皆さんは、どう思いますか?

次回は3月8日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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