第164回 医療DXと医療AI その5~「RPA」(Robotic Process Automation)~

今回はRPAについて考察したいと思います。RPAとはRobotic Process Automationの略で、総務省によると「ロボットによる業務自動化」と定義しています。

医療DXと医療AI その5~「RPA」(Robotic Process Automation)~

今回はRPAについて考察したいと思います。RPAとはRobotic Process Automationの略で、総務省によると「ロボットによる業務自動化」と定義しています。以下総務省のWebサイトからの引用です。

RPAはこれまで人間が行ってきた定型的なパソコン操作をソフトウエアのロボットにより自動化するものです。具体的には、ユーザー・インターフェース上の操作を認識する技術とワークフロー実行を組み合わせ、表計算ソフトやメールソフト、ERP(基幹業務システム)など複数のアプリケーションを使用する業務プロセスをオートメーション化します。

引用元:「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」(総務省)

さらに分かりやすく言い換えると、人がパソコンで行っている定型業務をソフトウェアロボットに代行させて自動化するツールの導入のこととなります。医療機関でも以前から導入事例はありましたが、やはりコロナ禍以降、さまざまな部署でRPAを導入する医療機関が増えています。人のルーティンワークを代行させて、人は人にしかできない業務を行います。ソフトウェアが自動で業務を行いますので、人に比べてスピードも正確性も高いです。さらに24時間365日稼働することも可能です。しかも残業代もなしに、です。

RPAで可能な業務とは

RPAで可能な業務を整理します。最初はWeb上にある情報を収集できます。事前にキーワードなどを登録しておけば、そのキーワードに関する情報を収集します。さらに収集した情報を集計することも可能です。集計、加工、整理、レポート化まで対応可能です。次にさまざまなチェックをさせることができます。異常値のチェックや抜け・漏れのチェックということです。例えば、東京歯科大学市川病院では、造影剤CT / MRIの検査前eGFR値のチェックをRPA化しています。このチェック業務をRPA化したことにより、年間260時間の削減効果があったと報告されています。

病院内はさまざまな部門システムが稼働していますが、それらの各部門システムを串刺しするシステムはうまく稼働していませんでした。この各システムの横連携がRPAによって可能です。また院内のシステムだけにとどまらず、院外のシステムとも接続することも可能です。

「医師の働き方改革」にRPAは有効な手段

現在、「医師の働き方改革」が進められているものの、なかなか進んでいるようには見えません。厚生労働省は医師の働き方改革を進めるうえで、タスクシフトやタスクシェアを行うべきと推奨していますが、これらの業務をRPAで行うことは非常に有効な手段であると考えます。医師が行っていた診療記録の代筆や代行入力、処方箋の代筆、代行入力、各種診断書などの書類作成、入退院サマリー作成領域の拡大(藤田医科大学病院では、退院サマリー、診療情報提供書はRPAにより自動作成)、DPC病院におけるコーディングなどもRPAで医師の業務から人を増やさなくてもタスクシフト、タスクシェアは可能ですし、既に実施している医療機関もあります。

メディカルRPA協会によると、「病床数×10時間/年」が業務削減可能ということです。具体的には、「翌日入院患者帳票印刷」ロボにより、平均72人分の患者プロファイルを印刷:毎日、電子カルテを1,744回クリック:100分/日の業務をデジタルレイバー化:390時間/年の業務効率化が可能。

「アセスメントシートのチェック」ロボにより、平均50人の退院患者の入院診療計画書があることのチェック:毎日、電子カルテを1,072回クリック:2時間/日の業務をデジタルレイバー:520時間/年の業務効率が可能といった事例があります。

業務時間の削減だけではなく、収入を増やす事例としては、「指導料・管理料取り漏れチェック」があります。これは悪性腫瘍、肺血栓塞栓(そくせん)などの患者や特定薬剤を投与している患者で算定要件どおりの処置を行っているにも関わらず、指導料や管理料が請求できていない患者の抽出を行います。
また、AIレセプト(診療報酬明細書)ソフトウェアを活用したレセプト点検も実証実験が行われており、将来はAIによるレセプト作成、点検といった時代がやってきそうです。

「業務時間削減」にとどまらないRPA活用の重要性

RPAの記述には、「業務時間削減」の内容が強調されます。一方で、その削減効果もさることながら、削減された時間ができたことで、人が新たな業務に取り組む余裕ができることが経営的には大きいと考えます。また人は必ずミスをするものという前提とすれば、RPAにより精度は向上します。すなわち医療の質も同時に向上することになります。医療は生命を取り扱う場面も多いことから、精度・質の向上は非常に重要なポイントです。

少子化で、将来医療業界に進んでくる人数が減ることを考えれば、今から人による作業をRPAに置き換えておく必要があります。現在、医療業界以外の業界の給与が上がりつつあります。「初任給がいくらです!」というニュースも聞きます。しかし、医療業界は残念ながら給与が他業界のように高額になることはまずありません。筆者は医療系の短期大学や専門学校の非常勤講師もしていますが、給与のことが関係しているのか少子化の影響なのかははっきりしていないものの、年々入学者が減少していることを実感しています。

最後に自治体・公立病院においてのRPAの動向に触れます。MM総研の「自治体RPA利用動向調査」によれば、67%の導入率だそうです。デジタル庁の設置に連動して自治体のDXが進んでいると報告されています。自治体ではExcelなどを活用した定型業務が多く、これらの業務をRPA導入で解決し、またLINEなどのSNSの活用も進んでいます。

引用元:「自治体のRPA導入率67%、デジタル庁と連動してDX進む 『自治体RPA利用動向調査 2021』(2021年5月時点)」(株式会社MM総研 プレスリリース)

皆さんはどう思いますか?

次回は9月10日(水)更新予定です。

関連するページ・著者紹介

この記事のテーマと関連するページ

中小規模病院向け医療ソリューション 電子カルテシステムER

電子カルテシステムERは、カルテ入力やオーダリングの機能をはじめ、部門業務を支援する豊富な機能を搭載。医療施設の運用に合わせ部門システムや介護福祉システムとの連携も柔軟に対応でき、業務の効率化と情報共有を支援します。

ワイズマン介護・医療シリーズ 医療・介護連携サービス MeLL+(メルタス)

医療・介護連携サービス「MeLL+」は、地域包括ケアや法人内連携など、医療と介護のシームレスな連携を実現する医療・介護連携サービスです。医療関係の情報と介護関係の情報をクラウドのデータベースに蓄積し、それぞれの施設から「必要な情報を必要な時に」どこからでも共有・閲覧することができます。

この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

公式Facebookにて、ビジネスに役立つさまざまな情報を日々お届けしています!

お仕事効率研究所 - SMILE LAB -

業務効率化のヒントになる情報を幅広く発信しております!

  • 旬な情報をお届けするイベント開催のお知らせ(参加無料)
  • ビジネスお役立ち資料のご紹介
  • 法改正などの注目すべきテーマ
  • 新製品や新機能のリリース情報
  • 大塚商会の取り組み など

お問い合わせ・ご依頼はこちら

詳細についてはこちらからお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

0120-220-449

受付時間
9:00~17:30(土日祝日および当社休業日を除く)
総合受付窓口
インサイドビジネスセンター

ページID:00292970