第89回 経営課題の具体的な戦術 その1

特に急性期医療機関では、「平均在院日数を下げろ」。でも、「病床稼働率は落とすな」とか、「紹介率を上げろ」「経費を削減しろ」と言われるが、どうすればよいでしょうか。今回はできるだけ具体的に、「戦術」を中心にご紹介したいと思います。

経営課題の具体的な戦術 その1

特に急性期医療機関では、「平均在院日数を下げろ」。でも、「病床稼働率は落とすな」とか、「紹介率を上げろ」「経費を削減しろ」と言われるが、どうすればよいか具体的な指示はなく、苦労されている方がたも多くいるのではないでしょうか。そこで、今回は、できるだけ具体的に「戦術」を中心にご紹介したいと思います。戦術ですから、採用の可否の判断も必要ですし、地域によっては使えない戦術もあると思いますが、少しでも参考になる部分があれば幸いです。

平均在院日数短縮についての戦術

前段にも記しましたが、在院日数を下げると同時に病床稼働率も下がってしまうことがあります。また在院日数は短縮できたが、次の入院患者が少なくて空床が多くなり、結果的に減収になってしまったなども良く聞かれます。在院日数だけを下げて病床稼働率は上げる(キープ)といった一見矛盾しているようなことを同時に行わなければなりませんので注意してください。今回は平均在院日数短縮に焦点をあてます。

平均在院日数を短縮するには、在院日数を短縮する工夫をすることと、在院日数が短い患者を多く入退院させること、そして在院日数を長くさせないという3方向の戦術があります。在院日数を短縮する工夫については主に医師の役割が重要になります。

Tactics 1:在院日数を短縮する工夫(入退院管理の強化)

在院日数が長くなりそうな項目をピックアップし、入院についての説明を入退院センターなどで行う時に情報収集しておきます。チェック項目は、高齢者、独居、末期がんなど退院や転院の際に障害となりうる項目です。また診療科については、整形外科、脳神経外科、神経内科、血管外科などの患者は在院日数が長くなる傾向がありますので、これらの診療科の入院患者も要チェックです。

チェック項目の状況についてはMSWに即情報を提供して、入院初日に患者との面談を実施します。(患者情報を共有するためにIT化も重要です)在院日数が長くなる原因となる障害を早めに認識し、早く解決してもらうためです。退院後の不安や転院先が決まらないなどによる在院日数の延長については、日ごろから後方連携病院との関係を強化しておくことが重要です。場合によっては自グループ内に後方連携病院を持っていることも強みとなります。

部署としては、地域医療連携室が主幹となりますが営業力、交渉力や折衝力、そして何よりコミュニケーション力の高い人材を配置しておくことをお勧めします。また紹介患者のデータベース(いつ、どこから、どんな疾患患者が、何人紹介されたかなど)を作っておくことも重要です。

現在は「地域医療構想」も進んでおり、地域での自院の役割、病床機能を明確にしておく必要性が強くなっています。以前よりも他医療機関との医療連携を密接にしておくことが重要です。

Tactics 2:短期入院患者を増やす

日帰り手術や1泊など短期入院手術の患者を増やしたり、教育入院など比較的短い入院期間で入院期間が延長しないような疾患、治療内容の患者を増やします。患者を増やすためには、まずこのような内容の事を実施しているということを患者等に知ってもらうことが重要ですので、医学講演会や広報紙、ホームページなどで情報提供を積極的に行います。その際に知ってもらいたい人はどのような人なのかを考えて、PR先の人をイメージしておくと効果があります。日帰り手術などを希望する人の多くは、仕事が休めないなどのサラリーマンであることが多いと思います。従って、サラリーマンにターゲットを絞って情報発信するなども考えても良いのではないでしょうか。また受け入れる側の医師や看護師などにもマネジメントと動機づけを行っておく必要があります。

さらに在院期間を短くできる唯一の職種は医師ですが、そこに技術の問題も関係してきます。あまり医師を「入院期間を短くしてほしい」などと刺激するよりも、入院期間を短くすることができる分野、診療科は自院のメイン診療科ですので、その診療科の紹介患者を多く集めた方が得策です。その診療科のなかでもどの疾患が最も得意なのかを調べ、その疾患患者を多く紹介してもらうことを考えます。(前述したデータベースを活用します)この結果、自院の最も得意分野の疾患患者が多く集まれば、その部分に設備投資も集中させやすく、在院日数の短縮も可能になります。

Tactics 3:在院日数を長くさせない

入退院の管理強化のパートと似ていますが、入退院の管理強化は入院時の患者アセスメントを行い、在院日数が長くなりそうな患者を早めに対処しましょうというものでした。このパートでは、もう少し広い範囲の事を記述します。

在院日数のコントロールに必要なツールは何でしょうか。それは「クリニカルパス」です。クリニカルパスの各疾患の入院期間は何日で設定していますか。DPC/PDPSでも使用されているICDの「入院期間II日」を参考にしてください。この入院期間II日は、全DPC対象病院の平均在院日数です。可能であればこの「入院期間II日マイナス1日」でクリニカルパスの日程を設定してください。ICDの入院期間II日は、2年に一度の診療報酬改定と同じタイミングで見直されていますので、クリニカルパスの設定日数も2年に一度は見直しを行います。クリニカルパスの見直しは医師と看護師が中心に見直しが行われますので、是非協力し合って見直しを行ってください。クリニカルパスの見直しは在院日数のコントロールにも役立ちますが、医療事故の発生防止にも役立ちますので、是非頻回な見直しをお勧めします。

さらに平均在院日数の計算に入れない種類(回復期リハビリ病棟など)の病棟を院内に何床か持っておくことも手段のひとつです。しかし、病棟の種類によって1ベッド当たりの平均収入も異なりますから、どの種類の病棟を何床持つのかは、戦略的に考える必要があります。もちろん試算も必ず行います。

皆さんは、どう思いますか?

次回は紹介率向上の具体的な戦術についてです。

次回は6月11日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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