第88回 医療機関の経営概論 その3

前回のコラムでは10個の危険信号をご説明しましたが、今回は繁栄する病院、伸びる病院の条件について、記します。

医療機関の経営概論 その3

前回は病院の危険信号をご紹介しました。

第87回 医療機関の経営概論 その2

今回は、繁栄する病院、伸びる病院の条件について、記します。

伸びる条件は、共通していることもあれば、地域性や立地条件などの特殊な事情が加味されることもあります。今回は経営層や医師、一般職員に区分して、さらに経営管理(マネジメント)について記したいと思います。

医療機関の経営者は医師です。医師は医学部進学のために幼い時から多くの時間を受験勉強に費やし、その結果医師になりました。そのためかエリート意識が高く、外部の経営環境の変化などには、強い関心を示さないことが多いような気がします。

繁栄している、あるいは伸びている病院の経営者は、市場の変化に敏感で、常に最新の情報を入手しようとしています。その情報を基に早期対応をします。午前中に齎(もたら)された情報を根拠にその日の午後には新たな行動に移っている。あるいは弊社が行っている原価計算の報告中にその場から、さまざまな指示を次から次へ出す院長もいらっしゃいます。場当たり的に思われるかもしれませんが、けっしてそうではなく、きちんと経営計画を作成しますし、予算管理、目標管理も実施しています。

このような経営者の性格は、何事にも意欲的で、考え方、思考回路が柔軟で時に革新的なアイデアも生まれます。しかしワンマンかというと意外とそうではなく、権限委譲や後継者育成、職員の教育に熱心な方が多いようです。
また、業界活動を積極的に行い地域の医療機関との関係を大事にして、地域医療の会議などにも積極的に参加しています。
非常に忙しくされていますので、診察開始前(7時台、8時台)の会議や、19時以降の打ち合わせなども珍しくありません。

次に一般職員についてですが、病院という職場の職員、職種は、医師、看護師をはじめ、ライセンス取得者の集団です。ある領域のスペシャリストであるわけです。これは、自分の領域については専門性を発揮しますが、他領域、専門外、他部署のこととなると、とたんに無関心になることが多いです。言い換えればこのような状況は「個人商店の集まり」といえます。病院という職場はセクショナリズムが強い職場であるということは、多くの方が周知しています。自分の領域の仕事、自分の仕事については、熱心に取り組みます。しかし、自部署であっても、後輩への指導、教育、同僚らとのコミュニケーション不足、情報共有などはまだまだ課題があります。職員の満足度調査を行うと、上司、管理者への不平不満が噴出することもあり、実際にその職場の管理者、責任者は、部門をマネジメントできていないと思われることもあります。職場内規律も保たれていないので、このような状態は非常に危険です。

では逆に繁栄している、伸びている病院の職員はどうでしょうか。まず職員の教育がしっかりしています。医師や看護師の部門は以前からしっかり教育されている部門でしたが、事務部門については、事務職員の教育を全く実施していない病院も少なくありません。例えば入職して、初再診受付に配属されたとしたら、その部署の先輩から業務内容は教わりますが、他の業務について教わる機会はありません。そしてジョブローテーションで、他部署や部門内の他係への異動がないことも珍しくありません。伸びている病院では、このようなことはなく、入職後の研修、1年目、2年目といった教育カリキュラムがしっかりできており、部門へ配属後も部門内での教育プログラムや教育係などの制度があり、そのプログラムに沿って教育、育成されていきます。このようにきちんと計画的に育成されていると、職員も安心感があり、離職率も低くなります。職場内では、教育係である先輩が後輩の面倒をよくみています。積極的に先輩から後輩へ声かけを行い、OJTを実践しています。部門管理者もリーダーシップを発揮している方が多く、部下はこの管理者を信頼しているなと感じることも多々あります。そして、これは今回改めて気づいたのですが、「挨拶がきちんとできている」職員が多いです。筆者のような部外者に対しても、もちろん患者に対しても挨拶を励行している職員が多い病院は伸びている病院です。

経営者、職員という「人」に関しての内容以外に、組織、マネジメントの観点から考えてみると、経営計画、予算計画、中長期計画などの未作成。あるいは作成していても、作りっぱなしで活用されていない。組織内のコミュニケーション、情報伝達能力が低く、経営者からの伝達事項が下部組織に伝わらない。原価意識が低く、原価計算なども実施していない。経営の指標となる計数など統計、集計能力が低い。当然、経営管理を行うデータが不在という病院は伸びません。

伸びている病院は、明確な経営方針、経営計画がきちんと作成され、活用されおり、意思疎通、業務管理組織も確立され、月次決算、原価計算も実施、活用されています。月次決算などは、月途中で見込み集計を行い、月次計画数値への達成見込みの予測を行い、仮に未達見込みであれば、すぐに対応策を実施するなどのアクションに活かしています。
繁栄する病院、伸びている病院について考察してきましたが、このような経営体質に改善するためには、経営者、医師は、やはり統率力、人間性を向上させ、部門の管理者、責任者は自らのリーダーシップを養い、職員個人の能力をきちんと捉え、その能力を最大限発揮できるように常に考え、職員自身は、部署、部門だけではなく病院全体への貢献も考え行動することが重要です。すぐに実現は難しいですが、時間をかけて真剣に取り組んでいけば、いつかは当たり前の状況になり、「組織風土」として醸成されれば盤石な組織となります。

なお、今回の記述内容は、あくまでも医療業界に30年以上携わっている筆者の個人的な感想にすぎません。

皆さんは、どう思いますか?

次回は5月15日(水)更新予定です。

お知らせ

書籍

病院のマネジメントに関する書籍を建帛社より出版しました。
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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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