第123回 2022年度診療報酬改定(入院編)

前回のコラムでは不明だった2022年度の診療報酬改定の内容が明らかになりました。今回は入院部門に関連する内容をご紹介します。

2022年度診療報酬改定(入院編)

前回のコラム執筆中には、まだ診療報酬改定内容の詳細が明らかになっていませんでしたが、2月9日に答申があり、2022年度の診療報酬改定の内容が判明しました。今回のコラムでは、入院部門に関連する主な内容をご紹介します。今回、ご紹介する内容は、2月9日時点の情報です。また詳細内容については、公式資料をご確認ください。

改定の内容に入る前に、答申内容資料の読み方のコツをご紹介します。今回の答申も500ページ以上のボリュームがあり、かつ硬い文章表現で読みづらく感じる人も多いと思います。
「見直し」「評価・充実」「推進・拡充」「適正・適正化」の文言に注意するだけで、答申の内容の理解が大きく違ってきます。
まず「見直し」ですが、この文言が入っていたら、医療機関としては収入が減る内容が書かれてあると思ってください。
逆に「評価・充実」という文言が入っていたら、収入は上がる内容が入っています。「推進・拡充」という文言が入っていたら、一定期間は増収になりますが、後にはしごを外される可能性が高い内容が入っています。
最後に「適正・適正化」ですが、この文言が入っていたら、その分野の中で、個別の点数が上がったり、下がったりしています。

代表的な分野は検体検査の分野です。読み慣れるということも大事ですから、普段から機会があれば、厚生労働省の発信する文章(情報)に触れておくこともよいと思います。

急性期充実体制加算

入院の中でも急性期機能を担っている病院の入院部門を評価した新しい点数です。
対象は最も数が多い一般病棟に入院している患者で、「急変の兆候を捉えて対応する体制」が必要になります。
この体制とは、「院内迅速対応システム(RRS)」と呼ばれる体制のことで、起動要素、対応要素、システム改善要素、指揮調整要素の4要素が必要です。
急性期に入院している患者は、容体が急変することが多いため、その兆候をいち早くキャッチして救命する体制を評価した点数です。算定できる病院には条件があり、日本医療機能評価機構の第三者評価を受審していることが求められています。
今回は、「体制がある」ことが算定条件ですが、将来的には、「急性期医療機関にはあって当たり前の体制」となることが予想されます。

重症度、医療・看護必要度の評価項目および施設基準の見直し

病院ではどのような状態の患者がどのくらい入院しているのかを評価、点数化しています。
急性期機能の病棟には急性期の疾患、状態の患者が入院し、ポストアキュート、サブアキュートなどの状態の患者は、その状態にふさわしい病棟で入院をしてもらいたいということ(機能分化)を目的に作られた点数です。

今回の改定では、求められる割合は大きく変わりませんでしたが、「心電図モニターの管理」という項目が評価項目から削除されました。削除されたということは、今まで心電図モニターを装着していた患者の評価点数が低くなるということであり、求められる割合に影響します。現場では心電図モニターの評価によって、評価点数を稼いでいる部分もありましたので、評価項目から外されたことによる影響は大きいものがあります。
ここ数回の改定でも求められる割合の数字が高くなったり、今回のように評価項目が厳しくなったりしています。急性期や慢性期などの機能分化へのふるい分けといってもよいと思います。 

重症患者初期支援充実加算

算定の対象は、ICUなどの集中治療室に入院している患者です。
医師、看護師ともに「メディエーター」と呼ばれる新しい職種の評価点数です。(医療あるいはメディカル)メディエーターとは、患者側と医療側の対話の橋渡し役です。集中治療室に入院している患者が対象ですので、不幸な結果になることも珍しくありません。そして、ご遺族などから説明を強く求められたり、疑いを持たれたりすることもあります。この延長線上の最悪なケースが医療訴訟です。メディエーターは訴訟に至らないように双方の間に立って、対話を促進する役目です。時には示談交渉の窓口にもなります。

このメディエーターのように新しい職種が登場し、診療報酬点数で評価されるに至った背景には、「(医師の)働き方改革」があります。
病院内で起きる出来事を全て医師が対応していたら大変だということは誰でも理解できます。タスクシェア、タスクシフトという技法を用いて、医師の働き方改革を現在進めていますが、診療報酬改定においても後押しする形となっています。

ちなみに点数の名称に「充実」という文言が入っていますが、メディエーターが一定数現場に配属される状況になったら、この点数は下がったり、削除されたり、いなかったら減算されたりする可能性が含まれていると思われます。

紹介受診重点医療機関入院診療加算

日本人は、大病院が大好きです。国民皆保険制度で、安い医療費自己負担という理由もありますが、なんとなく大きい病院が安心というイメージが強く、大きな病院に受診したがるようです。
厚生労働省は、いきなり大病院に受診するのではなく、まずはかかりつけ医に受診し、必要であれば、紹介状をもって適切な医療機関に受診するような流れにしたいと思っています。そこで、紹介状を持っていない患者がいきなり大病院を受診するのをけん制するために、紹介状を持参しなかった患者に対して個別に自己負担を求めています。その自己負担額が今回の改定で上がりました。
自己負担を徴収する対象病院ですが、大学病院などの特定機能病院と200床以上の地域医療支援病院でした。今改定で「紹介受診重点医療機関」も加わります。この紹介受診重点医療機関は、かかりつけ医からの紹介先医療機関と位置付けられています。容体が落ち着いたらこの紹介受診重点医療機関からかかりつけ医に逆紹介も行います。地域医療支援病院との違いや役割分担がまだ不明ですが、4月以降に具体的にどの病院が紹介重点医療機関なのか都道府県が公表する予定です。
診療報酬改定では、この紹介受診重点医療機関に入院した患者を対象に新たに加算点が算定できることになりました。

病院は外来収入よりも入院収入のほうが一般的には大きいため、診療報酬改定でも入院に関する部分の改定内容に関心が高いです。今改定では外来、入院に限らず、働き方改革(他職種連携)、ICT活用(ビデオ電話の活用)、機能分化などを進めようとすることがうかがえる改定内容が多かったです。改定の目指す方向、流れがありますから、この流れに乗れば収入が大きく下がることは無く、流れに逆らえば収入は下がる可能性が非常に高くなります。方向性を見極める目、能力が求められます。

皆さんは、どう思いますか?

次回は4月13日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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