第122回 中医協資料から2022年度診療報酬改定を予測(外来編)

2022年度診療報酬改定が成立・公布されたのを中心に中央社会保険医療協議会(中医協)で議論が行われています。今回は中医協の資料に基づき、今後の改定項目の予測から、自院の理念などに沿っているかを改めて考えるお話をさせていただきます。

中医協資料から2022年度診療報酬改定を予測(外来編)

現在、2022年度診療報酬改定の議論が中央社会保険医療協議会(中医協)で行われていますが、その中医協の資料から外来(病院の外来はもちろんのこと、診療所なども対象になる内容が含まれます)の改定項目を予測してみたいと思います。なお、中医協の情報は2021年12月現在の資料に基づいています。

中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)

外来医療の方向性

中医協資料 外来に関する項目

  1. 外来医療を取り巻く環境について
  2. 診療内容と医療費について
  3. 外来診療に係る診療報酬上の評価について

中医協の議論の最初の方の資料の三つのキーワードです。まずは(外来の)現状を示す資料が展開されます。ここで注意することは、現状の説明内容でも、どのような部分が説明されているか、またその説明された現状について課題が同時に説明されているかどうかに気を付けます。その理由は、その説明部分や課題が改定で(厚生労働省が)何らかの変更を考えている部分だからです。

外来を取り巻く環境の記述内容から、「かかりつけ医機能に係る評価」「生活習慣病に係る評価」「外来機能の分化の推進」「医療機関間の連携に係る評価」「オンライン診療に係る評価」が注意すべきキーワードとしました。中でも外来機能の分化の推進は、別途「紹介受診重点医療機関」(注)という外来の新しい形態の医療機関の発足議論が改定と同時並行で進められていますので、この新しい医療機関のことを想定していると考えられます。

  • (注)紹介受診重点医療機関については、下記の資料でご確認ください

外来機能報告等に関する報告書(厚生労働省・PDF)

「外来医療の今後の方向性」というイメージ資料が展開されていますが、今回の改定を含めて、将来このような形にするという厚労省の意思表示と捉えることができます。このイメージ図からは、フリーアクセス、緩やかなゲートキーパー機能、大病院外来は紹介中心、一般的な外来はかかりつけ医という厚労省の明確な方向性が確認できます。

「外来診療に係る診療報酬上の評価について」からは、地域包括診療料・加算の状況については、近年は届出医療機関数・算定回数ともに横ばいであり、地域包括診療加算の方が届出医療機関数・算定回数ともに多かったと報告されています。地域包括診療料・加算を届け出ていない理由としては、「施設基準を満たすことが困難」との回答が最も多かったためとアンケート調査を行った結果も併せて記されています。
さらに認知症地域包括診療料の算定回数は増加傾向であり、生活習慣病管理料については算定回数が想定より少なく、その算定が最も困難なことを尋ねたところ「生活習慣病管理料を算定することで自己負担額が上がることについて患者の理解が得にくいこと」が最も多かったとこれも調査結果が記されています。特に新しい診療点数については、その後どうなったかを調査することが多く、予想外の結果になったときは、次回改定で修正されることが多くなってきています。
今回の調査結果の記述から、

  • 地域包括診療料・加算
  • 認知症地域包括診療料
  • 生活習慣病管理料

は、算定基準が緩和される、あるいは、診療点数がアップされる可能性があります。

また、

生活習慣病の管理における多職種連携については、高血圧症や糖尿病等においては、多職種による療養指導の重要性についてガイドライン等で示されており、関係学会による研修・認定制度が設けられている。

と別途記述があることから、生活習慣病管理料の算定基準に、ガイドラインの内容を実施していることが算定条件になる可能性があります。

かかりつけ医機能の強化

大病院への患者集中を防ぎ、かかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡充策の見直しについては、前述した紹介受診重点医療機関とも関係することが多く、まだ不確定要素が多くあります。

かかりつけ医機能を担う地域の医療機関を受診せず、あえて紹介状なしで大病院を受診する患者の初・再診については、一定額を保険給付範囲から控除し、同額以上に定額負担の額を増額する(例外的・限定的な取扱)。

との記述があります。
そのことから、紹介状なしで大病院に受診する場合、患者自己負担を強いることで受診を抑制していましたが、さらに新たな手法も取り入れる可能性が高くなりました。(紹介状なしの)再診患者についても、

大病院からかかりつけ医機能を担う地域の医療機関への逆紹介を推進するとともに、再診を続ける患者への定額負担を中心に、除外要件の見直し等を行う。

と記述がありますので、これも何らかの方法で大病院以外の医療機関へ患者を促す政策が出てくると考えられます。
前回の改定での「新点数の診療情報提供料IIIの施設基準を満たしている医療機関においても、1カ月以内に患者に対して算定した医療機関は2割程度にとどまっていた」と記述がありました。この点数も何らかの修正が行われると思われます。オンライン診療料の算定医療機関数は、2020年5月が最多であり、その後はおおむね横ばいとなっており、オンライン診療料の算定回数は2020年4月が最多で、以降は減少しています。
オンライン診療料の届け出を行う意向がない理由を尋ねたところ、「対面診療の方が優れているため」との回答が52.5%、「患者のニーズがない・少ないため」が49.2%、「オンライン診療のメリットが手間やコストに見合わないため」が34.7%でした。この点数も厚労省は課題がある点数であるとの認識から修正が加えられると思われます。

外来機能報告(仮称)の対応に備える

既に実施されている病床機能報告を参考に、各医療機関から都道府県に外来機能のうち「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)に関する医療機能の報告(外来機能報告<仮称>)を行うことになりそうです。外来機能報告(仮称)を行う医療機関は、まずは、併せて報告する病床機能報告と同様、

一般病床又は療養病床を有する医療機関を基本とし、無床診療所については、任意で外来機能報告(仮称)を行うことができる。

とされています。診療所は、現在は任意ですが、いずれ報告しないと減算するなどの方向に変わる可能性が高いため、できるだけ早く報告体制を整えることをお勧めします。外来機能報告(仮称)の具体的な報告事項は、今後さらに検討するとされており、今後の情報に注意が必要です。
中長期的に地域の医療提供体制が人口減少や高齢化などに直面する中、外来機能の明確化・連携や、かかりつけ医機能の強化などを推進し、患者にとって安心・安全で質の高い外来医療の提供を実現するための、かかりつけ医機能を有する医療機関の体制に係る評価の在り方について、どのように考えるか。

休日・夜間の小児対応おいて、かかりつけ医に求められている役割を踏まえ、小児かかりつけ診療料に係る評価の在り方について課題がある。

と記述がありますので、小児のかかりつけ医に関して、その機能を評価する新しい点数が考えられているようです。
診療におけるICTの活用については、下記のように記載されています。

  • コロナ禍でのオンライン診療が普及したことを背景に初診からのオンライン診療は、原則として「かかりつけの医師」が行う

ただし、既往歴、服薬歴、アレルギー歴などのほか、症状から勘案して問診および視診を補完するのに必要な医学的情報を過去の診療録、診療情報提供書、健康診断の結果、地域医療情報ネットワークおよびお薬手帳などから把握でき、患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合にも実施できる。

  • オンライン診療の実施の可否の判断については安全にオンライン診療が行えることを確認しておくことが必要で、初診の場合には以下の処方は行わないこと

麻薬および向精神薬の処方・基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品の処方・基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対する8日分以上処方すること。

電子処方箋は、オンライン資格確認等システムを拡張し、現在紙で行われている処方箋の運用を電子で実施する仕組みでのことです。オンライン資格確認等システムで閲覧できる情報を拡充し、患者が直近処方や調剤をされた内容の閲覧、当該データを活用した重複投薬などのチェックの結果確認が可能になります。この部分も何らかの新点数が出てくると思われます。処方箋に関しては、繰り返し使用できる、リフィル処方箋にも注目です。
改定内容は医療機関の収益に直接影響する重要な内容ですが、収入アップばかりに目をやってはいけません。自院の理念や院長先生の思いに沿っているのかが、大事な点です。

皆さんは、どう思いますか?

次回は3月9日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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