第109回 医療機関の営業とは

医療機関を取り巻く外部環境は、新型コロナウイルスは言うまでもなく、激変していると言っても過言ではありません。単純に自分たちの体制ばかりに気を遣って、黙って患者が来るのを待っている時代は終わりました。このような時代こそ新しい営業マインドが必要です。では、このように大きく変わった時代に必要な医療機関の営業像とはどのようなものでしょうか。

医療機関の営業とは

筆者は20数年間、医療関連企業で営業職にあり、その後、現在の会社を起業して現在に至りますが、現在でも営業マンとしての自覚や意識は持ち続けています。営業といいますと、物を作ったり、売ったりする会社でしたら、製品の紹介などをする営業員が必要でしょう。しかし、医療機関に営業部門は必要でしょうか。結論から先に言いますと「必要」です。本コラムでも、市場分析や基本計画立案などの解説を多くしてきましたが、単に分析や計画を立案しただけでは何の役にも立ちません。実際に実行しなくては、結果が出ないのは明白です。その実行の原動力となるのが医療機関の営業です。

このコラムで言う「営業」は、単にモノを紹介したり、売ったりするのではなく、顧客に新しい価値を創造することを指します。「新しい価値を創造する」とは、相手が欲しているものを売る、提示することではなく、相手が考えてもいなかったような事、しかも相手に有益な事を提案・提示する事であったり、相手により多くの選択肢を提示し一緒に考え、最適な答えに到達する手助けをしたりする事だと考えています。

医療機関を取り巻く外部環境は、新型コロナウイルスは言うまでもなく、激変していると言っても過言ではありません。単純に自分たちの体制ばかりに気を遣って、黙って患者が来るのを待っている時代は終わりました。このような時代こそ新しい営業マインドが必要です。では、このように大きく変わった時代に必要な医療機関の営業像とはどのようなものでしょうか。

営業アーキテクチャイメージ

プロセスマネジメント営業活動
戦略ターゲットの明確化患者情報
競合情報
外部環境など
戦術行動マネジメントアプローチ計画根回し
アプローチアプローチチェック資料作成
提案 活動結果
契約など

簡単に営業のアーキテクチャを説明しますと、上記のイメージ図のようになります。縦軸が実施する順序、横軸が具体的な実施内容となります。最初にはっきりさせておくことは、医療機関の営業の「顧客」は誰かということです。「患者」ということにはなるのですが、患者を紹介してくれる人も顧客になりますし、漠然と患者ということではなく、どんな患者が自院に来てほしいのかというところまで落とし込んでおかなければなりません。その具体的なターゲットとなる患者にたくさん来てもらうためのアプローチ方法を考え、計画し、実行に移すのです。営業計画には、マーケティング的な思考から計画を立案することが肝要です。さらに具体的なイメージにまで落とし込んだ患者像がどのようなニーズを持っていて、そのニーズに対し、どのように対応するのか、またはできるのかを考えます。

例えば、働き盛りのサラリーマンががんの放射線治療を受ける際、治療のたびに会社を休まなければなければならない。仕事が終わってから、放射線治療が受けられないかというニーズに応えるのであれば、診療時間や対応可能時間を延長する体制を整えるということが考えられます。しかし、その体制づくりには、院内の各部署に根回しをしなければならないことも出てきます。さらにあれもこれもニーズがあるからといって全てに対応できません。従って「選択と集中」という考え方にのっとって、実施していくことになります

そして計画の実行と結果検証、新たな計画立案というプロセスに至りますが、マンパワーにも限りがありますので、医療機関の営業は組織的な営業部隊が必要であることもお分かりになると思います。

まとめますと、最初にターゲットとなる顧客(具体的な患者像)を明確にします。そのために環境分析が必要です。また当然ですが、自院の理念やビジョンに沿った患者像が大前提となります。次に、戦略ドメインの策定があり、実行、管理となります。

営業の四つの類型化

  1. 行動重視型営業
    • 売り手と買い手の双方のニーズが一致しているので、とにかく早く契約を進めていく。
  2. 奉仕型営業
    • 買い手側は現在、特に何も欲していない状態。とにかく売り手側は買ってもらおうと、至れり尽くせりの活動をする。
  3. ワークショップ型営業
    • 売り手側は、買い手側のニーズが把握しきれていない。買い手側も何を買えばよいのか決定的な意思はない状態。
  4. 提案型営業
    • 買い手側は、自分の問題の解決策について未知の状態。売り手側はその解決方法を知っている、持っている状態。売り手側は、問題解決の方法を提案する営業活動していく。

営業スタイルを四つに分類すると上記のようになります。医療機関の営業に必要な営業スタイルは、上記の中で「提案型営業」です。現代は、医師が一方的に患者に治療方法を押し付ける時代ではありません。患者の事情や価値観などを最大限尊重して治療方針などを決めることが求められています。患者の選択肢を一つでも多く用意しておくことも立派な営業戦略の一つです。

患者を紹介してくれる他医療機関の本当のニーズや困っていることを知っていますか。その問題点を解決できたら、その医療機関との信頼関係は強固なものとなるでしょう。

医療機関の営業は、顧客満足を高めるために、顧客の価値創造を実現することが中心的な活動課題です。医療機関の営業というと地域医療連携室を思い浮かべる人も多いと思いますが、決して、連携室だけが営業ではありません。医療機関の全職員が営業マインドを持つことが求められます。そして顧客との関係は医療従事者と患者などという関係ではなく、「一緒に問題を解決するパートナー」になるべきだと考えます。

皆さんは、どう思いますか?

次回は2月10日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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