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第110回 自院の「アピールポイント」分かりますか?
自院では分かりにくい、特に多くの患者に来てもらうために自院のアピールポイントとなる「魅力」はどのように発見すればよいのか? 何がアピールポイントになるかは、患者の視点と他院との比較が有効手段です。
自院の「アピールポイント」分かりますか?
意外かもしれませんが、自分のことを自分が一番知っていると思ったら、そうでもないことがよくあります。就活生は自分の長所や短所について、友達同士で確認し合うなどして再確認しています。自分のことを客観的に分析するのは、やはり他人からどう見られているかを直接聞くことが有効な手段です。医療機関も実は、同じようなことがいえます。
自院にとっては、当たり前に対応していたことが、他院では対応していないことであったり、またその逆であったりすることがあります。自院では分かりにくい、特に多くの患者に来てもらうために自院のアピールポイントとなる「魅力」はどのように発見すればよいのか、その方法を記述します。
自院のアピールポイントを考える場合、まず部署ごとに抽出します。次に診断、治療、治療後のフォローと時間的経緯の場面ごとに抽出すると整理しやすいです。診断あるいは、早期発見は、患者にとって大きなインパクトがある出来事です。特に自覚症状がないような状況で、何らかの疾患を発見できれば、患者は大きな恩義を感じます。
さらにその後の治療も同じ医療機関で継続して受診するということも考えられます。早期発見には何らかの手掛かりやきっかけが必要です。健診施設を併設しているのであれば、その健康診断結果の活用、あるいは、病院祭りや健康教室、健康セミナーなどを企画して、医療機関の周辺住民に来院してもらい、指先からの血液などでの血糖測定や、健康お悩みコーナーなどを実施し、その対応結果から疾患が見つかることもあります。
アピールポイント抽出イメージ
部署\タイミング | 診断 | 治療 | フォロー |
---|---|---|---|
医務部 | 健診・医療セミナー | 日帰り手術 | - |
放射線科 | 予約なし | 放射線治療 | - |
検査 | 迅速検査・遺伝子検査 | - | - |
リハビリテーション | 予防体操 | パワーリハビリテーション | 疾患別リハビリテーション |
医務部
医師の技量や取り組み姿勢がポイントです。上記のイメージ図で日帰り手術と記載していますが、日帰り手術の適用疾患を何種類確保できるかも重要です。さらにダヴィンチのようなロボット手術が導入されていれば、最新医療の取り組みに熱心な病院というイメージにもなります。また例えば「がん」に対する治療方法について、手術、抗がん剤治療、放射線治療など幾つも選択肢が用意されていれば、患者への大きなアピールポイントになります。このように多くの選択肢を用意できることはアピールポイントになります。
放射線科
CTやMRIなどの放射線撮影が予約制である医療機関が多いと思いますが、中には当日予約なしでも撮影できる医療機関もあります。多くの患者もCTやMRIは当然予約して後日撮影するものだと考えていますので、もし当日撮影が可能な体制であれば、大きなアピールポイントになります。緊急枠の検討などもしてはいかがでしょうか。
また前述しましたが、抗がん剤治療や放射線治療が可能な医療機関は、どちらも外来で対応可能ですので、患者は働きながらがんの治療を行うことができます。そのようなニーズに対応できるような診療時間になっているかが重要です。もし対応時間が長ければ、この点もアピールポイントになります。
臨床検査科
検査には、生理検査と検体検査があります。生理検査においては放射線科と同様に心電図や脳波などが当日予約なしで対応が可能であれば、アピールポイントになります。検体検査においては、迅速検査体制などで、採血から結果までの時間が非常に短い検査室があります。自分たちは当たり前と考えているかもしれませんが、この点も大きなアピールポイントになります。患者にとっては、採血して後日もう一度受診して、検査結果を聞きに来院しなくてよいのですから助かります。一日で採血、検査結果まで分かり、その当日のフレッシュな検査結果に基づいた治療や処方が行われることになります。
また、産科や泌尿器科、糖尿病外来などでは、診察前に尿検査をして、その検査値で診療を行っている病院もあります。これも他院との差別化に有効なポイントです。この診療前検査は、オーダーリングシステムの未来日検査予約を活用して実施可能です。
リハビリテーション
リハビリテーションは、予防医学の分野から、治療、治療後の改善など、あらゆる場面で活用できるため注目されています。さまざまなシチュエーションを想定して自院のリハビリテーションで対応可能な技術・内容を拡大していけば、アピールポイントはさらに多くなります。特に疾患別リハビリテーション(脳血管疾患、心疾患など)は、あまり一般には広く知られていませんので、対応可能であればアピールポイントになります。
その他
看護部は認定看護師でアピールできますが、この認定看護師も一般には認知度がそれほど高くありません。また、薬剤部は減薬の取り組みやサプリメントを含む飲み合わせの相談窓口などがあればアピールポイントになります。事務系の部署でもアピールポイントを作ることは可能です。例えば、地域医療支援病院の地域医療連携室であれば、救急車を所有していますので、開業医からの紹介患者の搬送に自院の救急車を使用できます。開業医の先生にとっては、患者自身で紹介病院へ行ってもらうのは不安ですが、119番の救急車を要請するには大げさと考えることがあります。また、患者自身が嫌がることも多いです。そんな時に紹介先の救急車が迎えに来てくれたら、安心して大事な患者を紹介することができます。
このようにどの部署でも自院のアピールポイントはありますし、少しの工夫で作ることができます。何がアピールポイントになるかは、患者の視点と他院との比較が有効手段です。一度じっくり見つめ直してみませんか。
皆さんは、どう思いますか?
次回は3月10日(水)更新予定です。
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