ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第40回 「正解」を探すことと「最適解」を探ることとの違いとは?
前回は、ハゼ釣りの師匠が気付かせてくれた「最適解を探る」ことについて書きました。今回は問題解決の場面における「正解」と「最適解」という、似て非なるものを少し掘り下げてみます。
「正解」を探すことと「最適解」を探ることとの違いとは?
私たちの仕事や生活は、小さなものから大きなものまで問題解決の連続です。前回は、ハゼ釣りの師匠が気付かせてくれた「最適解」について述べました。今回は「正解」と「最適解」とを比較しながら、両者を少し掘り下げてみます。
「正解」と「最適解」はどう違う?
「正解」とは、問題に対して一般的に正しいと認識される答えです。数学の問題のように、一つの明確な答えが存在する場合に適しています。例えば、「2+2は幾つか?」という問いに対する「4」という答えは、客観的で一般に「正解」と受け入れられるでしょう。
一方で、「最適解」とは、与えられた条件のもとで最も効果的な結果をもたらす答えを指します。最適解は、問題の性質、利用可能なリソース、制約条件、目的によって異なります。例えば、限られた予算内で最も効果的な広告戦略を策定する際、複数の答えが考えられますが、最も効果的なものが「最適解」となります。
問題例と共に、両者の違いを表で整理します。
正解 | 最適解 | |
---|---|---|
定義 | 問題に対して一般的に正しいと認識される答え。 | 与えられた条件のもとで最も良い結果をもたらす答え。 |
特徴 | 明確で客観的な答え。一つの正しい答えが存在する。数学的、論理的な問題でよく見られる。 | 条件や目的によって異なる。複数の答えが存在する。リソースや制約を考慮する必要がある。 |
適用場面例 | 数学の問題。回答が一つに限られるクイズ。はっきりした正誤が存在するテスト。 | ビジネス上の意思決定。日常生活、人生における問題解決。 |
問題例 | 問題(1):「2+2は幾つか?」 正解:「4」 問題(2):「日本の首都は?」 正解:「東京」 | 問題(1)「最も効果的な広告戦略は何か?」 問題(2)「片思いしているあの人へ告白する方法は?」 問題(3)「私の最適なランニングフォームは?」 →仕事、生活で同様の問題を考えてみてはいかがでしょうか? →次回コラムでは「正解例」ではなく、「最適解」を探る考え方を解説する予定です。 |
このように正解と最適解とは似ているようで大きく異なり、対照的な特徴を持っています。
ビジネスでも生活でも答えを求める時、まずは立ち止まって、求めるべきものは正解なのか最適解なのかを考えてみることが大切なのでしょう。どちらかによってアプローチは異なってくるでしょう。最適解を探る必要があるのに、唯一の正解を求めてしまうこともあるかもしれません。
最適解を求めるコツ
最適解を求めるにはコツがあります。幾つか挙げてみましょう。
- 問題の正確な定義:問題を正確に理解し、明確に定義することから始める
- 目的の明確化:何を達成したいのか、目的をはっきりさせる
- 情報収集:問題解決に必要な情報を広範囲にわたり収集し、検討する
- 代替案の生成と評価:複数の解決策を考え、それぞれの長所と短所を慎重に評価する
- 制約とリソースの考慮:利用可能なリソースと制約条件を考慮に入れる
- 意思決定:全ての情報を考慮し、最も効果的な解決策を選択する
おわりに
日本の学校教育、受験制度がすぐに「正解」を求める“傾向”を生み出してきた、という説を聞いたことがあります。一理あるようにも思います。
こういう話を聞くと、「そうそう、最近の新人、いまどきの若手社員は……」と考える方も少なくないかもしれません。しかし、私を含めて多くの管理者、中高年ビジネスパーソンも、その学校教育制度を通過してきた世代です。私自身もすぐに「正解」を求める癖、「正解」を求めすぎる傾向があると感じています。だからこそ、前回記したようにハゼ釣り師匠が「最適解」という言葉を使って釣りの仕掛けを説明してくれた時、驚きと快感を抱いたのでしょう。
管理者や中高年社員が、部下や仕事に「正解」を求め過ぎてしまったら、若手社員がすぐに「正解」を求めてしまうよりもその弊害は大きいでしょう。そのようなことを自戒しつつ、今回のコラムを締めくくります。
次回は、上記の表の中に示した「問題(1)から(3)」の最適解の導き方にも述べたいと思います。どうぞご期待ください。
前回のコラムで、「ハゼ釣りの師匠が気付かせてくれた、『最適解を探る』という考え方」を書いています。ぜひこちらも併せてご覧ください。