新リース会計基準とは?~2027年4月までに経営者が知っておくべき対応のポイント~

2027年4月から強制適用される新リース会計基準について、財務への影響と対応ステップを経営者向けに解説します。

  • * 本ページは2026年5月時点の情報に基づいています。詳細な会計処理については、顧問税理士または会計士にご確認ください。

新リース会計基準とは

新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する事業年度から日本企業に強制適用されます。これまで「費用」としての処理が認められていたオペレーティングリースを、原則として全ての貸借対照表(B/S)に「使用権資産」と「リース負債」として計上することが求められます。

今回の改定は、企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年9月に公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」に基づくものです。すでにIFRS(国際財務報告基準)や米国基準で導入されている考え方に、日本基準を国際基準に近づける形で策定されました。なお、2025年4月1日以後に開始する事業年度からの早期適用も認められています。

適用対象となる企業はどこまでか

初めに押さえておきたいのが、この基準が「全ての日本企業に一律で適用されるわけではない」という点です。強制適用の対象は原則として、上場企業や会社法上の大会社を中心とする、会計監査の対象となる企業です。

原則適用(強制適用)の対象

上場企業
および上場準備中の企業も含む
上場企業の連結子会社
連結ベースで影響を受ける
会社法上の大会社
資本金5億円以上、または負債総額200億円以上
会計監査人
監査を受けている会社

原則として適用対象外となる企業

「中小企業の会計に関する指針」または「中小企業の会計に関する基本要領」を採用している中小企業は、原則として新基準の適用対象外です。従来どおりの会計処理を継続することができます。

対象外でも注意が必要なケース

「自社は中小企業だから関係ない」と早合点しないよう注意が必要です。次のような立場にある企業は、原則として対象外であっても新基準を意識した対応を求められる可能性があります。

上場企業の子会社・グループ会社
親会社の連結ベースで取り込まれるため、グループ会計方針への準拠を求められる
金融機関の要請
新基準ベースの開示や試算を要請されている(融資審査やコベナンツ対応)
上場(IPO)
将来、検討している場合
売却・事業承継の検討
M&Aによる売却や事業承継を検討している(デューデリジェンスで新基準ベースの分析を求められるケースが増えている)
監査対応の連動
大手取引先から監査対応として連動を求められている場合
  • * 適用対象の判定には、自社の会計監査体制や会計方針の選択が関わります。判断に迷う場合は、顧問税理士または会計士にご確認ください。

なぜ「費用処理」が問題だったのか

旧基準では、リース契約はファイナンスリースとオペレーティングリースの二つに分類されていました。このうちオペレーティングリースは、毎月の支払いを費用として計上するのみで、貸借対照表には反映されません。

例えば、月額100万円・10年契約のオフィス賃貸を考えてみます。

支払総額は1億2,000万円に上りますが、その支払義務はB/S上に一切記載されません。このため、投資家や金融機関からは「実態より財務状況が良く見える」と受け取られる可能性があり、財務情報の透明性を損なう点が問題視されてきました。

新基準ではこうした課題を是正し、将来の支払義務をB/Sに正しく反映させることを目的としています。借手側ではファイナンスリースとオペレーティングリースとの区分が廃止され、原則全てのリースを単一の会計モデルで処理する方式に変わります。

  • * 貸手側の会計処理については、従来のファイナンスリースとオペレーティングリースとの区分が維持されます。本記事では、借手側の影響を中心に解説します。

オンバランス対象となる契約・ならない契約

新基準への対応を検討するうえで、最初に押さえておきたいのが「どの契約がオンバランス対象となるか」です。

オンバランスの対象となる主な契約

  • 本社・支社・工場・倉庫などの不動産賃借契約
  • 社用車や営業車などの車両リース
  • 製造設備・機器のリース
  • 長期にわたる専用設備の賃借

費用処理のまま対応できる契約

以下は引き続き費用処理が認められます。

  • リース期間12カ月以下の短期リース
  • 重要性が乏しいリース(少額リース)
  • SaaSやクラウドサービス(資産を「支配」していないため対象外)
  • 保守・サービス契約(リースではなくサービスの購入)
  • * 「重要性が乏しいリース」の判定は、原資産の購入価額やリース料総額が一定額以下であるかなどを基準に行われます(実務上は300万円が目安とされるケースが多い)。具体的な判断基準や適用方針については、顧問税理士または会計士にご確認ください。

IT関連のリース契約は1台当たりの単価が低いケースが多く、少額リースに該当しやすい傾向があります。一方で、オフィス・車両・製造設備は金額が大きくなりやすく、影響が生じやすい領域です。

財務諸表への具体的な影響

貸借対照表(B/S)への影響

新基準が適用されると、オンバランス対象となるリース契約は「使用権資産」と「リース負債」として計上されます。資産と負債が同時に増加するため、自己資本の金額自体は変わらないにもかかわらず、財務指標は大きく変動します。

想定リース契約

契約内容月額契約期間支払総額
本社・工場の賃借100万円10年1億2,000万円
社用車(10台)50万円3年1,800万円
製造機器150万円5年9,000万円
合計約2億3,000万円

財務指標の変化(簡易試算)

指標旧基準新基準
自己資本比率30%約21%
負債比率233%約387%
  • * 総資産5億円、自己資本1億5,000万円、その他負債3億5,000万円と仮定し、リース負債を全額計上した場合の概算です。

会計基準が変わっただけで、事業実態は何も変わっていません。それでも財務諸表上の数字は大きく変動します。金融機関との融資契約に財務制限条項(コベナンツ)が設定されている場合、条件を満たせなくなる可能性もあるため注意が必要です。

損益計算書(P/L)への影響

これまで「賃借料」として営業費用に計上していた金額は、「減価償却費」と「支払利息」に振り替えられます。支払利息は営業外費用に分類されるため、営業利益は相対的に増加しやすくなる一方、経常利益や最終利益への影響は限定的です。

なお、支払利息はリース期間の前半に大きく、後半にかけて小さくなる傾向があるため、契約初年度ほど費用が前倒しで発生する点にも留意が必要です。

キャッシュフローへの影響

実際の資金の流れそのものは変わりません。ただし、キャッシュフロー計算書上の区分が変わり、リース料の元本返済部分は「財務活動によるキャッシュフロー」に計上されます。利息部分は「営業活動」または「財務活動」のいずれかに区分されます。

今から始める準備のステップ

強制適用まで一年を切りました。対応の規模は、自社が保有するリース契約の件数や金額の規模によって大きく異なります。まず、自社の状況を把握することが出発点です。

ステップ1:リース契約の棚卸し(今すぐ着手)

社内に存在する全てのリース契約を洗い出し、一覧化します。総務・経理・各事業部門に契約情報が分散しているケースが多いため、全社横断で収集できる体制の整備が欠かせません。

ステップ2:影響額の試算(2026年中を目安に)

対象となる契約を整理したうえで、財務指標への影響を試算します。金融機関との融資契約にコベナンツが設定されている場合は、この段階で必ず確認しておきましょう。

ステップ3:対応方針の決定(2026年内に)

会計処理の方針や業務フローの見直しを進めます。あわせて、既存の会計ソフトが新基準に対応しているかどうかも確認しておくとよいでしょう。

ステップ4:運用開始・期首残高の計上(2027年4月まで)

新基準に基づく会計処理を開始します。適用初年度は期首時点でリース負債および使用権資産の残高を計上する必要があります。前ステップまでの準備を確実に整えておくことが重要です。

まとめ

新リース会計基準への対応は、経理担当者だけで完結するものではありません。財務指標が変化し、金融機関や取引先からの見られ方に影響が及ぶ可能性があるため、経営者として全体像を把握したうえで準備を進めることが重要です。

対応の難易度は、リース契約の件数や金額によって大きく異なります。まずは「自社にどのような契約があるか」を把握することが、全ての準備の第一歩です。