2023年までに改正されている労働基準法とは? とるべき対応と違反による罰則を解説

長時間労働の是正と、労働者のワークライフバランスを図ることを目的とした改正労働基準法が順次適用されています。2023年4月1日から、中小企業においても改正法が施行され、時間外労働の割増賃金率が引き上げられています。

本記事では、改正労働基準法の変更点と企業が取るべき対策、違反してしまった場合に課せられるペナルティについて詳しく解説します。人事部門の業務効率化に貢献する勤怠システムの導入も視野に含め、改正労働基準法に適切に対応できる体制を整備しましょう。

2023年4月に改正された労働基準法の内容

日本では少子高齢化が深刻な社会問題となっています。この状況を改善すべく、2010年4月、労働者の確保を目的に労働基準法が改正されました。2018年には、働き方改革の推進によりさらに大きく改正されています。

(1)割増賃金率の引き上げ

2023年4月1日から中小企業に対しても改正法が施行されました。これにより、時間外労働の割増賃金率が従来の25%から50%に変更されています。変更となる割増賃金率の対象は、月に60時間を超えた残業時間です。

また、22:00~5:00帯に時間外労働をした場合、時間外労働の割増賃金率50%に加えて深夜割増賃金率25%を加算しなければならないため、合計で75%の割増賃金を支払う必要があります。

(2)賃金のデジタル払いが可能に

改正法で注視すべき内容の一つに、賃金のデジタル払いが挙げられます。ただし、企業側が賃金をデジタル払いに統一したいと考えていても、労働者へ強制することは認められていません。労働者の希望があれば、デジタル払いへシフトすることが可能です。

なお、デジタル払いを適用するには、厚生労働省が指定した資金移動業者を介さなければならないと定められています。2023年7月現在、指定の資金移動業者はまだ公表されていません。導入を検討している企業は、最新情報を見逃さないようこまめにチェックしておきましょう。

割増賃金率の引き上げによって企業の負担はどれくらい増える?

60時間超えの割増賃金率が25%から50%に引き上げられたことにより、人件費削減を課題に掲げる企業も多いようです。企業と従業員の両者にとって、働き方改革をより有意義なものにするためには、業務効率化が不可欠です。

人的コストの負担低減を目指すなら、法改正によりどれだけのコストの負担増になるのかを正しく把握しなければなりません。計画的なコストの削減を目指し、具体的な条件を設定したうえで事前のシミュレーションを実施しましょう。

シミュレーションを実施するにあたり

[1カ月の起算日を毎月1日][1カ月の時間外労働時間が80時間][1時間あたりの賃金が1,000円]

と仮定します。法定割増賃金率は60時間以下が25%、60時間を超えると50%になるため、割増賃金率は80時間のうち60時間が25%、20時間は50%に該当します。

実際に計算すると

[60時間×1.25×1,000円=7万5,000円][20時間×1.50×1,000円=3万円]となり[7万5,000円+3万円=10万5,000円]

です。次に、同じ条件で改正前の割増賃金率25%で計算し、割増によるコストの負担がどれほどになるのか比較しましょう。

[80時間×1.25×1,000円=10万円]

となるため、改正前より1カ月当たり5,000円のコスト増加になることが分かります。
対象となる従業員が50人いる場合には

[5,000円×50人=25万円]
1年間で考えると[25万円×12カ月=300万円]

必要です。このように、企業の財務に大きな影響を及ぼす可能性も否定できないため、適切な対策が求められます。

労働基準法の改正に伴い中小企業がとるべき対応

割増賃金率の増加は従業員の労働に報いる正当な施策です。一方で、前述したように、企業にとっては大きな負担となるケースも想定されます。また、長時間労働が続く事は、従業員にとってもよいことではありません。そのため企業には、可能な範囲で業務効率化に向けた適切な対策を講じ、労働者の権利を守りながら経営を安定させる戦略が求められます。

従業員の労働時間を把握する

まず重視すべきは、従業員の時間外労働削減です。改正法では、労働時間の適正な把握が義務付けられています。厚生労働省では、従業員の労働時間を正しく管理するために「管理者の視認による確認・記録」「タイムカード・ICカードを使った打刻」「PCの使用時間を確認する」ことの必要性をガイドラインに記載しています。

労働時間の管理が曖昧になる事態を避けるには、客観的な情報を記録する体制が必要です。なお、例外として自己申告制が認められるケースもあります。厚生労働省が公表しているガイドラインを参照に、改正法に対する理解を十分に深めておきましょう。

業務の効率化を目指す

時間外労働を削減するために、業務効率化が不可欠です。業務効率化に向けた第一歩として、労働量が適正であるかどうかを判断します。特定の従業員に業務が偏っていないか、最適な業務フローが確立できているかといった見直しも大切です。

課題が明確化したら、改善策を講じます。業種によっては、外部委託やシステムの新規導入により大幅な効率化が期待できます。勤怠管理の業務効率化に課題があるのなら、勤怠管理システムの導入も視野に入れてみましょう。

既存のツールと連携できる勤怠管理システムを導入すれば、給与計算業務の手間を大幅に削減できます。労働時間と給与の一元管理が実現すれば、従業員の負担も軽減するはずです。勤怠管理システムを導入すれば、情報を確認するための手間や人的ミスの低減など、さまざまなメリットを享受できます。

就業規則の変更を行う

就業規則とは、企業と従業員がお互いの権利を守るために存在する約束です。これまでの就業規則で割増賃金率を50%未満としていた場合には、改正法に基づいた内容の変更が求められます。就業規則を変更する際は、所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。

必要な書類は、変更した部分の改正前と改正後の条文を記載した「就業規則変更届」と、労働組合あるいは労働者の過半数を代表する従業員の意見を聴取してまとめた「意見書」です。就業規則変更届の様式は特に定められていませんが、厚生労働省のホームページに専用のフォーマットが用意されています。

作成した書類は、労働基準監督署の窓口に提出するほか郵送でも受け付けてくれます。就業規則変更の周知は労働基準法で義務付けられているので、適切なタイミングで社内へ周知するようにしましょう。

代替休暇の導入を検討する

1カ月の時間外労働が60時間を超えた従業員に対して、割増賃金を支払う代わりに有給休暇を付与する「代替休暇」の制度を利用する方法もあります。ただし、60時間を超えない時間外労働は代替休暇の対象外となるため、通常の割増率25%を加算した賃金を支払わなければなりません。また、60時間を超えの代替休暇を付与した場合も、25%の割増は必要です。

代替休暇は、経営側の一方的な決定で行えるものではなく、導入するには労使協定を締結する必要があります。労使協定で決定する項目は「代替休暇にできる時間の算出方法」「代替休暇の単位」「代替休暇が取得できる期間」です。代替休暇の申出がない場合には給与支給日に全ての賃金を支払います。

労働基準法の改正内容を違反するとどうなる?

改正労働基準法に違反してしまった場合、さまざまなペナルティを覚悟しなくてはいけません。割増賃金の引き上げが行われていなかった場合、第37条に違反したと判断され、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられる可能性もあります。

ペナルティを受けたことによる企業のイメージダウンから、社会的損失を被らないためにも、改正労働基準法の内容をよく理解しておきましょう。

まとめ

中小企業に対する改正労働基準法の施行を受け、新しい体制の構築に取り組む企業が増えています。労働時間の客観的な把握と業務効率化を実現するには、勤怠管理システムの導入が有用です。就業管理システム「Universal 勤次郎」は、勤怠管理の自動化に有用なシステムです。

イレギュラーな就業時間にも対応できるため、幅広い業種で活用できます。給与計算システムと連携して情報を一元で管理すれば、大幅な業務効率化を図れるだけでなく、ヒューマンエラーも低減できます。この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

監修者:下川 めぐみ
社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ登録社労士。
医療機関、年金事務所等での勤務の後、現職にて、社会保険労務士業務に従事。

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