労使協定とは? 労働協約との違いや届出が必要な種類、違反時の罰則

労使協定は労働組合などと事業主の間で締結する、労働条件などを決める協定です。法令で規定している範囲を超えて労働させたいケースなどで、条件を取り決めます。

労使協定に関る罰則は、必要な労使協定を締結せずに法令の範囲を超えた場合、労使協定の内容に違反した場合、義務違反の場合があります。事業主も両罰規定により罰金刑が科されるため、十分な注意が必要です。

労使協定とは

労使協定とは労使関係のルールを明確にするために、労働者の過半数を代表する者と事業主の間で書面契約した協定です。

労働者の過半数を代表する者が決まっていない場合は、選出しなくてはなりません。労働組合があって労働者の過半数が加入している場合は、労使協定の当事者は労働組合と事業主になります。

労使協定では労働基準法(以下、労基法と表記)の規定を超えて取り決めができます。例えば、労基法32条第2項では「1日について8時間を超えて、労働させてはならない」と規定しています。しかし、労使協定で特則(36協定)を決めた場合は、8時間を超えて労働させることが可能になります。つまり、繁忙期が決まっているような場合は、労使協定でその旨を定めておけば、労働させられるということです。

労働協約との違い

労働協約は、企業内の労働組合および企業の枠を超えた労働組合と、使用者および使用者団体との間で書面によって締結する約束事です。労使協定において必ずしも労働組合が組織されている必要がないのに対して、労働協約は組合と使用者との取り決めであり、その効力のおよぶ範囲も労働組合に加入している労働者に限られます。

労働協約では法令の範囲内で、労働者保護のための取り決めができます。例えば、1日の労働時間を7時間までとするようなことです。労基法では上記のように「8時間まで」と決められているため、労働協約で8時間を超える労働時間を定めることはできません。

参照:労働協約について(厚生労働省・PDF)

36協定との違い

36(サブロク)協定は労使協定の一種で、特に、労基法36条に関する事項を取り決める労使協定のことをいいます。

36協定は時間外労働や休日労働に関する事項の取り決めで、労働基準監督署に届け出る必要があります。

36協定を締結・届出済みであれば、法定の労働時間などを超えて労働させられますが、労働時間の上限を超えた場合は罰則が適用されます。特に、2019年の労基法改正により、時間外労働のルールは大きく変わったため、厚生労働省のホームページで確認しましょう。

36(サブロク)協定とは|確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト(厚生労働省)

就業規則との違い

就業規則は法令に基づいて定めた社内ルールです。賃金や労働時間など、労働者が守らなくてはならない事項を決めています。10名以上の労働者を使用する事業主は、就業規則を作成して届け出る義務があります。

労使協定との相違点としては、労使協定が事業主と労働者の間で合意した内容を定めるのに対し、就業規則は事業主側が一方的に作成・変更できます。また、就業規則は法令の範囲を超えてルールを決めることはできません。労働者は就業規則に従う義務があります。

労使協定の種類

労使協定には、大きく分けて「届出が必要な労使協定」と「届出が不要な労使協定」があります。

届出が必要な労使協定

届出が必要な労使協定は次の8種類です。

時間外及び休日労働に関する労使協定
(36協定)
法定の労働時間を超えて労働させるときに必要な労使協定です。
事業場外労働のみなし労働時間制に関する
労使協定(法定労働時間超)
法定の労働時間内であれば、届出不要です。
1年単位の変形労働時間制に関する労使協定1カ月を超える1年以内の期間で、法定労働時間を超えて労働させるために必要な労使協定です。
1カ月単位の変形労働時間制に関する労使協定1カ月以内の期間で、法定労働時間を超えて労働させるために必要な労使協定です。就業規則に規定がある場合は届出不要です。
1週間単位の非定形的変形労働時間制に関する
労使協定
30人未満の小規模事業において、1週間単位で労働時間を定められます。
裁量労働制に関する労使協定(専門業務型)業務遂行の手段・方法・時間等が労働者の裁量にゆだねられる業務に関する労使協定です。
裁量労働制に関する労使協定(企画業務型)労使委員会での決議を得て、一定範囲内の対象業務や職種に就く労働者(事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う者等)に対してみなし労働時間を適用する場合の労使協定です。
貯蓄金の管理に関する労使協定労働者の預貯金管理を行う際に必要な労使協定です。

届出が不要な労使協定

届出が不要な労使協定は次の7種類です。

フレックスタイム制に関する労使協定精算期間が1カ月を超えない場合に届出が不要になります。
年次有給休暇の計画的付与に関する
労使協定
「年次有給休暇の計画的付与」とは、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、時季を決めて付与する制度です。
年次有給休暇の時間単位での付与に関する
労使協定
年次有給休暇は原則1日単位で付与されますが、時間単位で付与する場合の労使協定です。
年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合の
労使協定
実際の賃金と標準報酬日額とは差があるため、労使協定が必要です。
育児休業、看護休暇及び介護休業ができない者の
範囲に関する労使協定
雇用期間が1年以内の労働者などを、「休業ができない者」と決められます。
休憩の一斉付与の例外に関する労使協定休憩時間は一斉に与えることが原則となっていますが、労使協定を結ぶことで適用除外となります。
賃金から法定控除以外の控除を行う場合の
労使協定
食費や寮にかかる費用、親睦会費などの、法定控除以外の控除を行う場合です。

労使協定の締結方法

労使協定に盛り込むべき項目は、労使協定の種類によって異なります。ここでは、36協定(時間外労働・休日労働など)について紹介します。

36協定では次の項目を策定する必要があります。

  • 時間外労働が必要な具体的な理由
  • 時間外労働が必要な業務の種類
  • 時間外労働させる労働者の数
  • 1日について延長できる時間
  • 1日を超える一定の期間について延長できる時間
  • 有効期間

各項目を作成できたら、労働基準監督署へ届け出ます。届出方法は窓口へ持参・郵送・電子申請の3種類です。また、36協定は事業所ごとに作成・届出する必要がある点も注意が必要です。

36協定の作成方法などについては、厚生労働省のホームページで確認するのをおすすめします。

参照:36協定の締結・届出のポイント(厚生労働省・PDF)

労使協定に違反した際の罰則

労使協定に関する罰則は、労使協定の締結を怠った場合、労使協定に違反した場合、届出義務・周知義務に違反した場合に適用されます。ここでは、労使協定に違反した場合と周知義務違反について解説します。

締結した労使協定に違反した場合の罰則

締結した労使協定の内容に違反した場合は、労基法119条により罰則が適用されます。

例えば、36条で定められた労働時間の上限を超えた場合は、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に当たります。

事業主以外の代理人や使用人が違反行為をした場合にも、両罰規定(労基法121条1項)により、事業主にも「30万円以下の罰金」が科されます。

参照:労働基準法(e-Gov)

周知義務に違反した場合の罰則

労使協定を作成したら、労働者に周知させる必要があります。周知義務に違反した事業主には「30万円以下の罰金」が科されます。

周知するには以下のような方法があります。

  • 作業場に常に掲示する、ファイルなどを備え付ける
  • 書面で配布する
  • パソコンなどを設置して見られるようにしておく

「作業場」とは、事業所内で密接な関連のある作業が行われている現場です。建物が分かれる場合は建物ごとに掲示・備え付けをする必要があります。

労使協定の違反を防ぐためには、労働時間を正確に管理できる「勤怠管理システム」がおすすめ

労使協定の違反を防ぐためには、勤怠管理をしっかり行うことが大切です。リモートワークへの対応も含めて、勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。勤怠管理システムとは、出勤・退勤の時間を管理するツールです。労働時間を管理することによって、給与計算などほかのシステムと連携して業務効率アップが可能になります。

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まとめ

労使協定は法令で規定されている労働条件を超えて、労働させる条件を取り決める協定です。半数以上の労働者を代表する者を選出して、事業主との間で締結します。労使協定を締結せずに法定労働時間を超えた場合や、労使協定を締結していても内容に違反した場合は、罰則が適用されます。また、周知を怠った場合にも罰則があります。

このような不測の事態を避けるためにも、日頃から勤怠管理をしっかり行う必要があります。そのためには勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。

この記事の監修者

監修者:奥 典久
奥典久税理士事務所 代表。
簿記専門学校で税理士講座講師として勤めたのち、会計事務所で勤務。その後独立し、奥税理士事務所を開業。相続(贈与)対策や事業承継コンサルティング経営、財務コンサルティングから各種セミナーなど、幅広く税理士業務に従事する。

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