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Excel(エクセル)を活用した勤怠管理表の作り方! 注意点も解説
出退勤の打刻や勤務時間の自動計算を行ってくれる勤怠管理システムは、各社から多数提供されています。しかしコストを抑えたい場合や、一部のスタッフにだけ異なる勤務形態を適用したい場合には、Excel(エクセル)を使用した勤怠管理表の作成も選択肢に入ります。
Excel勤怠管理表のメリットは、コストをかけずに簡単に管理できることです。特に社員数が少なく残業も少ないなど、複雑な管理が必要ない場合にExcel勤怠管理表は手軽で便利です。ただし、勤怠管理システムと比較すると幾つかのデメリットも存在することに注意が必要です。
目次
Excelで勤怠管理表を作る方法
Excelで勤怠管理表を作る場合、勤務時間を自動計算できる表を作成すれば管理が楽になります。シートに必要な項目を入力した後、設定された計算式に従って数値を出力する表です。例えば、時給計算で勤務するアルバイトスタッフ用の勤怠管理表を作成する例を紹介します。
作成の手順としては、以下になります。実際にExcelを操作しながら確認してみてください。
A1セルに「勤怠管理表」とタイトルを入力します。2行目は空欄で、3行目には表頭となる以下の項目名を入力します。4行目から実際の時間を入力していきます。
- A3:日付
- B3:曜日(自動計算)
- C3:出勤時間(手入力)
- D3:退勤時間(手入力)
- E3:休憩時間(手入力または自動計算)
- F3:勤務時間(自動計算)
- F35:合計勤務時間(自動計算)
- 時給
- 給与(自動計算)
A4セルには、日付を入力します。セルに「7/1」と入力するとExcel側で自動的に日付だと判断して日付表示になります。「7月1日」など好みの日付に設定したい場合は、以下の変更を行います。
セルを選択した状態で右クリックし、「セルの書式設定」を選択
表示形式が「日付」になっていることを確認し、種類で「3月14日」を選択。サンプルで「7月1日」と表示されていることを確認して「OK」をクリックします。
B4セルには、曜日として、以下のような計算式を設定します。
=TEXT(A4,"aaa")
TEXT関数は、数値に書式設定を設定して表示方法を変更できます。曜日を1文字で表示できる書式記号の”aaa”を設定します。
C4、D4セルに、出勤時間、退勤時間を入力します。C4、D4セルは時間を表示させるためセルの書式設定で、表示形式が「時刻」、種類で「13:30」を選択。サンプルで「15:00」のように表示されていることを確認して「OK」をクリックします(セルが空欄の場合は、サンプルも空欄になります)。
F4セルには、勤務時間を自動計算するための数式を設定します。例えば、ExcelのC4セルに出勤時間、D4セルに退勤時間、E4セルに休憩時間が入力されている場合、F4に以下の数式を設定します。
=D4-C4-E4
Excelで時間の減算を行う場合は、数値の減算と同じ-(マイナス)を使用します。
E4セルの休憩時間は手入力でも問題ありませんが、一律で休憩時間が決まっている場合は自動計算にすると入力ミスを軽減できます。例えば、「6時間を超え8時間以下の場合は45分、8時間を超える場合は1時間、6時間以下は30分」と休憩時間が決まっている場合は、E4セルに以下のような数式を設定して勤務時間を算出します。
=IFS(AND(D5-C5>6/24,D5-C5<=8/24),0.75/24,D5-C5>8/24,1/24,1,0.5/24)
IFS 関数は、複数のIF文を指定できる便利な関数です。上から条件をチェックして、条件が満たされている場合は対応する値を返します。時刻の計算では、1日(=24時間)が1になるため、時間をシリアル値(Excel上で計算可能な数値)に直すため24で除算します。
なお、セルに設定した計算式は、コピーすればほかのセルにも同じように設定可能です。計算式を入力したE4およびF4セルを選択した状態でカーソルを右下に移動すると「+(プラス)」マークが表示されます。その状態でクリックして最後の日付が入力された行までドラッグすればコピーできます。
曜日が入力されているセルも同様にコピーしてください。
毎日の勤務時間が設定されている欄のいちばん下には、月の合計勤務時間を計算する数式を設定します。例えば、F34セルまで勤務時間が入力されている場合は、次のF35セルに以下の計算式を設定します。
=SUM(F4:F34)
SUM関数は、数値を合計する関数です。時刻表示が「##############」のような表示になる場合は、C4、D4セルと同様、時刻形式で書式設定を行います。
出退勤時間が入力された表の下には、給与計算を行うため、時給に合計勤務時間を乗算する数式を設定します。例えばB38セルに時給、B39セルに給与額を表示させるためには、以下の数式をB39セルに設定します。
=F35*B38*24
「*(アスタリスク)」は数値を乗算するための記号です。このままだとシリアル値のままですので、24を乗算します。B38およびB39セルは金額を表示するため「セルの書式設定」で通貨または数値で桁区切りの設定をします。
以上が、Excel上で作成する勤怠管理表の一例になります。
繰り返しになりますが、あくまで一例のため、実際に使用する場合には職場環境や勤怠の実態に合わせ、柔軟にアレンジを行うようにしてください。
Excelで勤怠管理する方法
Excelでの勤怠管理をさらに効率化するためには、前項で紹介した方法に加えて以下の方法を検討することをおすすめします。
プログラムを組む
Excelで勤怠管理を行う場合、Excelマクロ(以下マクロ)を使うことで作業をさらに効率化することも可能です。マクロとは、Excel上で行う作業を自動化するための機能であり、開発には高度な知識が必要になりますが、入力したデータの集計や書式を整えるといった単純作業を自動化することで、業務の効率化につなげることができます。
また、Excel上で行った作業を自動で記録してマクロ化してくれる「マクロの記録」という機能もあります。記録を開始してから終了するまでに行った作業をマクロ化して保存し、いつでも呼び出して実行できるようになる機能で、これを使えば知識のない人でも比較的簡単にマクロを利用できます。
テンプレートを活用する
一から作りこむのはハードルが高いと感じる場合は、公開されている便利なテンプレートを利用する方法がおすすめです。インターネットで検索すると無料のExcelテンプレートが数多く公開されているため、自社のニーズにマッチしたものを探してダウンロードすると時短になります。
Excelで勤怠管理する際の注意点
Excelでの勤怠管理は、コストをかけず簡単に行える一方で、デメリットも存在します。法改正などをきっかけに思わぬ手間が生じたり、入力ミスの発生や悪意を持った改ざんが行われたりするリスクがあります。それらデメリットについて、詳しく解説していきます。
作業の負担がかかる
通常の勤怠管理システムは自動で打刻されますが、Excel勤怠管理表の場合は、スタッフが毎日手作業で出退勤時刻を入力する必要があります。作業量としてはごくわずかですが、毎日2回、Excelを起動して入力するという作業が加わるのは年間でみると無視できない作業負担になります。
法律の改正に対応できない可能性がある
労働に関する法律が改正される都度、数式を変更するなどの修正が必要になります。また、Excelで勤怠管理表を作成した担当者が既に退職してしまっている場合などは、メンテナンスが難しく修正に時間がかかるケースや、最悪の場合には修正できずに作り直しになるケースもあります。
入力ミスや改ざんのリスクがある
Excelへの入力作業は、どうしても手作業での入力が多くなるため、人的なミスが発生するリスクが増大します。また場合によっては、悪意を持ったスタッフが勤務時間の水増しなどを目的として虚偽の情報を入力する可能性もあります。
勤怠管理をするなら専用システムがおすすめ
本記事では、Excelを使った勤怠管理表の作成方法を紹介しました。
しかし、先述したような課題やリスクが存在するため、Excel単体での管理に限界を感じる企業も少なくありません。勤怠管理システムを導入した方が時短・効率化ができると判断し、導入を検討するケースも多く見られます。
特に残業が多く発生する場合には、スタッフ本人が勤務時間を手入力する方式ではなく、勤怠管理システムによって管理するのが最適です。
まとめ
従業員規模が小さい企業や残業が少ない企業、時給制で働くスタッフが多い企業では、Excelで勤怠管理を行うことでコストをかけず、効率的な運用が行える可能性があります。しかし、毎日の入力作業でスタッフへの負担が増えるだけでなく、法律の改正に対応できないといった課題、入力ミスや改ざんのリスクなど、注意すべき点も複数あります。
長期的な視点で勤怠管理を考えた場合、勤怠管理システムを導入した方が効率的な管理が可能です。特に管理する人数や残業などが増えた場合には、専用システムに切り替えた方が、トラブルが生じにくく、スムーズな管理が行えます。
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