中抜けとは? 勤怠管理における扱い方や就業規則の設定ポイント

業務時間中の中抜けは、勤怠管理において注意すべき点が多い項目です。曖昧なルール設定では企業と従業員の間にトラブルが起こる恐れもあります。
労働基準法との兼ね合いや就業規則での取り扱い方など、法律を意識した処理が求められます。本記事では、中抜けの定義や勤怠管理と中抜けの関係、適切な運用方法などについて詳しく解説します。

「中抜け」とは

中抜けとは、通常勤務時間中に一時的に業務を離れることです。
中抜けには主に私用による中抜けと、会社の都合による中抜けの2種類があります。
私用による中抜けは、主に個人的な用事や予定のために業務を離れることをいいます。私用の内容はさまざまで、通院や子どもの送り迎えの時間、区役所への公的な手続きの時間など、プライベートに関わる時間が該当します。

会社の都合による中抜けは、会社が指示した場合や業務の都合上、一時的に業務を中断することをいいます。1日の中で業務が重なる時間帯と比較的業務量が少ない時間帯がある業種、例えば医療業、飲食業、旅館業で採用されていることが多い方法です。業務が重なる時間帯以外は、中抜け時間として取り扱う傾向にあります。

本来、6時間を超える労働時間の場合、最低でも45分、8時間を超えれば最低でも60分の休憩時間が必要です。中抜けは休憩と似ていますが、厳密には休憩時間とは異なります。そのため、中抜けする場合は、休憩時間との兼ね合いを忘れないよう注意しましょう。

勤怠管理における中抜けの扱い方

勤怠管理において、

  • 休憩時間
  • 年次有給休暇
  • 1日2回勤務

の3種類の方法で中抜けを扱います。

休憩時間として扱う

中抜け時間は休憩時間とは異なる旨を説明しましたが、労働基準法34条では

使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)(e-Gov)

と定められています。
この規定が守られていれば、休憩として扱えます。

プライベートでの中抜けを想定する場合、この方法を採用する会社が多い傾向です。
休憩時間として中抜け時間を扱う場合は、始業時間や終業時間にも影響が出るため、注意しましょう。休憩時間として業務の間に中抜けを挟んだ場合、始業時間を早めるか、または終業時間を遅くします。
例えば始業時間が9時、終業時間が18時の会社の場合、12時~14時の2時間を通常の休憩時間に併せて中抜けとして扱ったと仮定します。その場合、休憩を除いた1時間を始業時間として早めるか、終業時間として遅くする必要があるため、業務時間は8時~18時か、9時~19時となります。

中抜け時間は就業規則の範囲内で従業員の都合で調整可能です。しかし、終業時間が遅くなりすぎる場合には社員のワークライフバランスに支障が出る可能性があるため、一定の上限時間を決めることが大切です。

年次有給休暇として扱う

年次有給休暇(年休)として処理できます。年休として処理する場合は、時間単位として取り扱います。年休として扱われるため、終業時間の後ろ倒しは不要です。
年休として処理するためには労使協定の締結が必要になります。そのうえで就業規則に詳細を明記していきます。
対象になる労働者の範囲や時間数、時間単位取得可能な有給休暇の日数、申請期限など、細かい部分まで取り決めを行いましょう。
労働者にとってフレキシブルな対応が可能な方法ですが、一方では管理が細かくなり、担当者のリソースが圧迫される一面があります。導入する際は、勤怠管理しやすいツールを併せて検討することをおすすめします。

1日2回勤務として扱う

1日に2回の勤務をする形で扱うことも可能です。例えば、朝と夜に1回ずつ合計2回出勤する形です。この方法は朝と夜にピークタイムが分散する医療、飲食、旅館などの業種でよく見られます。
ただしこの方法では、中抜けを休憩として取り扱えません。そのため、一定の時間を超えて労働するのであれば、法に基づいた休憩時間の確保が求められます。労働時間が6時間以上8時間以下なら最低45分、8時間を超えれば60分です。
朝だけで6時間働くのなら、朝の労働時間内で最低45分の休憩時間を設けなければなりません。

就業規則設定のポイント

中抜けの導入においては、会社側と従業員の間でトラブルが起きやすいのも注意点の一つです。トラブル防止のため、以下の二つの点に注意しましょう。

中抜けの時間は賃金が発生しないことを明記する

中抜け時間は賃金が発生しません。例外として、先述の年次有給休暇が該当します。年休として中抜け時間を処理するのであれば賃金が発生しますが、それ以外は一律で賃金計算の対象外になります。従業員に広く周知し、理解を求めるべき項目です。就業規則にも明記します。

賃金計算の基本は「ノーワーク・ノーペイ」です。従業員が労働していないのであれば、会社はその間の賃金を支払う必要はありません。
ただし、ここで注意しておきたいことは、従業員が中抜けした時間を会社が一方的に年次有給休暇として扱ってはならないという点です。
中抜けに限らず、有給休暇はあくまで従業員が自主的に選択する方法であり、会社側の都合を押し付けることは不適切です。こちらもトラブル防止のため、あらためて確認しておきましょう。

始業・終業時間の変更は従業員への周知が必要

労働基準法89条において以下の内容を就業規則として明記することが定められています。

「一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項」

引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第八十九条(e-Gov)

として明記されています。これは内容を変更した際も該当します。
そのため、始業時間や就業時間が変更となった場合は就業規則をもって従業員への周知が必要です。
就業規則には、始業、終業時間だけではなく、休憩時間や休憩についても明記する義務があります。他にもルールとして、明文化しておいた方がよいと考えられることがあれば就業規則に記載します。従業員が中抜けをはじめとした就労時間に関するさまざまな疑問を持った際、就業規則を読み返せば解決できるように整えておくのが理想的です。
また、「就業規則が変わったことを知らなかった」などということがないようにしましょう。

中抜けを取り扱う際の注意点

実際に中抜けを導入し、運用するにあたっては、移動時間や割増賃金についても理解を深めておきます。トラブルを未然に防ぎ、スムーズな運用につなげられます。

移動時間の取り扱いに関するルールを決める

中抜けを導入する場合は、「移動時間」の認識にも注意します。
移動が業務時間にあてはまるかどうかは、主にその移動が会社の指示によってされているものかどうかで決まります。
会社側の指示で移動しているのであれば、移動時間も就業時間として扱わなければなりません。中抜け時間はあくまで業務とは異なる時間として扱うため、会社の指示で移動している場合は業務時間と認識されます。

他にも、例えば私用で中抜けをしていた場合、移動中に会社から連絡を受け電話連絡や情報確認のような作業をしたり、業務に活用される買い出しに行ったりしたとします。このような時間は就業時間として取り扱います。
とはいえ、こういったケースは正確な時間の把握が難しいという問題があります。就業規則に詳細に記載しておくか、もしくは中抜けの間は業務に関わる連絡をしないなど、社内のルールや体制の整備を検討するのがよいでしょう。

割増賃金が必要になるケースも

中抜け時間を休憩時間とする場合、終業時間が遅くなることにより、労働時間が長くなることに注意します。中抜け時間によっては、終業時間が深夜帯(22時以降)に及ぶ可能性があります。
従業員が22時~5時まで労働した場合、会社は割増賃金を支払わなければならない義務があります。
そのため、中抜けによる労働時間の管理についても検討しましょう。

まとめ

中抜けの運用は休憩時間との違いや勤怠管理上の取り扱いなど、複雑な面が多くあります。労働基準法にも関わる点が多いため、注意しながら運用を進めましょう。同時に従業員への啓発も必要です。中抜けの導入に伴い、担当者の負担軽減を目的として勤怠管理システムを導入するのもよい選択になります。

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