勤務間インターバル制度とは? 導入のメリットから注意点まで詳しく解説

近年、働き方改革が進む中で注目を集めているものが、「勤務間インターバル制度」です。この制度は、労働者の健康増進やワーク・ライフ・バランスの向上を目指すうえで、非常に重要な役割を果たします。本記事は、労働環境改善のために勤務間インターバル制度を導入したい企業に向けて、仕組みや休息時間の目安、導入するメリット・デメリット、そして定着を成功させるためのポイントなどについて、分かりやすく解説します。

2019年、「勤務間インターバル制度」の導入が努力義務化

「勤務間インターバル制度」とは、終業から翌日の始業までの間に、一定の休息時間を設ける制度です。この制度の目的は、過度の長時間労働による過労死などのリスクから労働者を保護することにあります。「働き方改革関連法」の成立および「労働時間等設定改善法」の改正に伴って、2019年4月1日より努力義務化されました。

国が導入を推奨。助成金も使える

厚生労働省は、長時間労働の改善および過労死などの発生防止を目的に、勤務間インターバル制度の普及を推進しています。「令和5年就労条件総合調査」によると、2023年時点で同制度の導入企業は全体の6%に過ぎませんが、厚生労働省はこの数字を2025年までに15%以上に増やすことを目標にしています。

参照元:令和5年就労条件総合調査概況(厚生労働省/PDF・p10)

参照元:第24回 過労死等防止対策推進協議会 議事次第(厚生労働省/PDF・p3)

この状況に鑑みて、厚生労働省は特に導入が遅れている中小企業を後押しするために、「勤務間インターバル導入コース」という助成金コースを「働き方改革支援助成金」の1コースとして設けています。この助成金を利用することで、制度導入に必要な費用負担をある程度軽くさせることができます。

現状、導入しなくても罰則はない

現在のところ、勤務間インターバル制度は努力義務であり、導入しなくても罰則を受けることはありません。

しかし、この制度はEUでは既に義務化しており、日本政府もこれに倣って、将来的にさらなる普及促進や本格的な罰則付きの義務化へ動いていくことが予想されます。また、今後もこの制度の導入を対象にした助成金(働き方改革支援助成金 勤務間インターバル導入コース)が継続するとは限らないため、後々導入しようとする際には、費用負担が高くなってしまう可能性も考慮すべきです。

何よりも従業員の健康を守るために、勤務間に十分な休息時間を確保することは、企業にとって重要な役割であることは否めません。労災認定の評価項目には、「勤務間の休息時間が約11時間未満」も含まれているため、たとえ制度を導入していなくても、それによって健康被害にあった従業員から訴えられれば、企業に賠償責任が生じるリスクがあります。

こうした点を考えると、現状では努力義務に過ぎないとしても、義務化に備えて前向きに導入を検討することをおすすめします。

必要な休息は何時間?勤務間インターバル制度の仕組み

インターバル時間の大まかな目安は、9~11時間前後です。先述した助成金制度の支給要件においても、対象となるのは9時間以上の休息時間を設けている企業とされています。

例えば、11時間の休息時間を設ける場合、残業が23時まで続いたとすると、翌日に出勤するのは早くとも10時からということになります。本来の始業時間が朝9時の場合、「単純に始業時間を繰り下げる扱いにする」または「1時間分働いたものと見なす」のどちらかの方法を採用する必要があり、決して「遅刻」とすることはできません。

ただし、休息時間を考えるうえで重要なのは、表面的な数字ではなく、「その長さで従業員が十分に休めるか」という観点です。従って、従業員が通勤や睡眠、食事、入浴などの業務以外にかける時間を考慮したうえで、必要な時間を検討しなければなりません。

休息時間の確保方法としては、「ある時刻以降の残業を制限する」「勤務終了後、一定時間内の業務を禁止する」などの措置が考えられます。また、「勤務形態や職種によって休息時間を区別する」「必須の休息時間と努力義務の休息時間の二つを設ける」という方法も挙げられます。

参照元:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)(厚生労働省Webサイト)

勤務間インターバル制度を導入する企業のメリット

勤務間インターバル制度を導入することで、「従業員の健康維持や増進」「時間外労働(残業)の削減」「優秀な人材の確保」が望めます。以下より、それぞれのメリットについて解説します。

従業員の健康維持や増進につながる

第一のメリットは、従業員の健康に好影響を与えることです。十分な休息時間を確保できないまま働き続ける環境は、従業員に疲労を蓄積させていきます。真っ先に懸念されるのは睡眠不足ですが、疲労が重なれば、病気や過労死などのリスクも高くなっていきます。

労災認定の評価基準に、勤務間インターバルの長さが含まれていることがその証拠です。その点、勤務間インターバル制度の導入には、従業員の疲労蓄積を防ぎ、過労などによる健康問題のリスクを抑える効果が期待できます。

時間外労働(残業)の削減が見込める

時間外労働の削減が見込まれる点も大きなメリットです。というのも、勤務間インターバル制度を導入すると、おのずと1日に働ける時間は限られたものになるからです。

また、昨今では時間外労働時間の上限規制が施行され、これに違反すると罰則を受けるようになりました。それ故、従業員はタイムパフォーマンスを意識して働くようになるため、結果的に時間外労働が減少し、生産性が向上していく仕組みです。

優秀な人材を確保しやすくなる

勤務間インターバル制度の導入は、企業価値の向上にも寄与します。近年、働き方改革や健康経営などの取り組みが注目される中、従業員の健康やワーク・ライフ・バランスを重視する企業は、優秀な人材から高い評価を受ける傾向にあります。つまり、制度の導入は優秀な人材の確保や定着率向上などにも有効です。

デメリットはある?勤務間インターバル制度の注意点

勤務間インターバル制度の導入においては、「業務量や人員配置の見直し」「勤怠管理などの労務管理の煩雑化」が懸念されます。以下より、それぞれの注意点について解説します。

業務量や人員配置の見直しが必要になる

勤務間インターバル制度を導入しても、業務量や労働時間が適切に管理されなければ、かえって残業の悪循環に陥るリスクがあります。例えば、残業した分、翌日の始業時間を遅らせたことで業務に支障をきたし、結果的にさらに残業が発生してしまうといった場合です。

また、形だけ制度を守ろうとして、退勤打刻した後に行うサービス残業や持ち帰り残業が増えるケースも考えられます。その場合、本来の目的である労働者の健康増進は果たせなくなるため、本末転倒です。

このような状況を回避するためには、業務量の見直しや人員配置の調整、業務効率化に役立つITツールの導入などが求められます。しかし、人員補充の実施やツールの導入には、コストが発生する点がデメリットになります。

勤怠管理などの労務管理が煩雑化する

勤務間インターバル制度の導入により、各従業員の休息時間などを、従来よりも適正に管理するようになるため、勤怠管理などの日常業務が煩雑化しやすい点にも注意しなければなりません。「残業した翌日は何時に出勤するのか」など、本人やその上司がその都度、手作業で計算・確認すると手間がかかります。

こうした労務管理の手間を減らすには、勤怠管理システムの導入などを通した効率化や最適化が重要です。

“定着する勤務間インターバル制度”導入のために今できること

上記のようなデメリットを解決し、勤務間インターバル制度を定着させるには、万全な準備と計画が欠かせません。

はじめに取り組むべきは、労働実態の現状を正確に把握し、それを踏まえたうえで必要なインターバル時間を検討することです。次に就業規則にその時間や対応方法など、必要な項目について明記します。その際、業務上の事情や繁忙期などによって、インターバル時間の確保が難しい場合の対応策も併せて明記しておくことをおすすめします。また、本格導入する前に一定期間お試しで導入し、改善点などを洗い出すことも大切なことです。

そして、規定したインターバル時間を確保できるように、業務量や人員配置、業務工程の見直しも必須です。ITツールによる業務の効率化や自動化は、生産性向上にも有効なので、積極的に検討しましょう。煩雑化する勤怠管理に備えるために、細やかな管理が可能な勤怠管理システムの導入も検討する価値があります。

まとめ

勤務間インターバル制度は、従業員の健康増進や時間外労働の削減、優秀な人材の確保に大きく寄与します。しかし、導入には業務量の見直しや勤怠管理の煩雑化など、幾つかの課題に備えなければなりません。昨今では、フレックスタイム制やテレワークなど、柔軟な働き方を導入する企業が増えていますが、煩雑化する勤怠管理に対しては、勤怠管理システムの導入による効率化や自動化が有効です。ITツールの導入には、今後の施策も含めて自社の働き方やニーズをよく考慮したうえで、それに適した製品を選びましょう。

大塚商会では、勤怠管理を効率化するソリューションを取りそろえています。変化を重ねる制度への具体的な対応をご検討中の方はぜひご相談ください。

勤怠管理システム導入検討・ヒント集

この記事の監修者

監修者:山根 丈宗
社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。
複数の社会保険労務士法人にて職務に従事。社労士業務歴は約10年にわたる。

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